伊豆編に引き続き、OVA 究極超人あ〜るの後編に相当する飯田線について、劇中に登場する場所を訪問してみた。飯田線は聖地としてレポートも多いのでいまさらなのだが、まあ一応。
先に究極超人あ〜るの旅 伊豆編を読まないと訳がわからないと思うので、前もって読んでおいた方が吉。
「いよいよ決戦であ〜る!」鳥坂の台詞とともに飯田線の旅が始まる。なぜ決戦かといえば、この日の午後6時までに伊那市に到着しなければならないのだ。さらに、途中で21駅(スタートの飯田とゴールの伊那市も含む)ものスタンプを集めねばならない。椎子が心配するのも当然である。
ではさっそく、現在の豊橋駅の様子を見てみよう。


豊橋駅
当時と雰囲気が全く異なる。豊橋駅が1996(平成8)年に橋上化されたためだ。光画部が一夜を明かしたベンチは残念ながらもう存在しない。さんごと椎子が炊飯器の電気を借りた交番も変わってしまったらしい。
写真を撮る前に大雨が降ったため路面がずぶ濡れだ。できれば晴れた日に撮影したかった。
飯田線に入って最初の駅、船町駅だ。劇中ではさんごと椎子がダッシュでこちらに向かってくる場面になる。


船町駅
船町駅は当時から変わっていないようだ。小夜子が「えーなに、あれでも駅?」とか文句を垂れているが、都内にだってどっこいどっこいの駅はいくらでもある。東急大井町線の戸越公園駅とか。
三河一宮では小夜子、茶臼山では信がスタンプを押す。ここまでは停車時間内にスタンプを押し、豊橋から同じ列車で移動しているようだ。その次の鳥居駅でトイレ休憩のため下車。鳥坂が「なぜ前もって対処しておかん」と小夜子を叱責する。珍しく鳥坂の主張が真っ当なシーンである。
そんな光画部を林の中から監視するまりい。そして運転手役の鰯水。彼らが出発したのを見届け、次の監視ポイント(大嵐駅)へと向かう。鰯水の車が去ってゆくシーンがこんな感じである。


鳥居駅近くの坂
劇中では踏切の先にまっすぐ道が続いているが、実際には狭くて複雑である。踏切を渡って左に曲がるとすぐに国道151号へ出る。この後、鰯水達は国道151号を北上していったのだろう。
鳥居駅を出てからしばらく平穏が続くが、成原博士の登場で状況が一変する。カメラとは名ばかりの光線兵器らしきものに狙われる光画部一行。
あわやというところで、成原博士はトンネル入口に乗ってきた気球ごと衝突、爆発して退場する。しかし、そのとき車内に投げ入れられた自爆装置付きテープレコーダが爆発してしまい、その衝撃であ〜るが車外に放り出されてしまう。
あ〜るがいなくなった一行は、次のチェックポイントの出馬で降りて対策を考える。もっとも、考えるまでもなく豊橋方面の列車に乗って戻るしか方法はないのだが。


出馬駅
劇中では駅名表示板のすぐ横に待合室があったが、この写真にはない。待合室はあるのだが、駅名表示板からは離れたところにある。当時は位置が違ったのかどうかまではわからない。また、劇中ではホームの後ろを道路が通っている描写が明確であるが、この写真ではわかりにくい。
全体的にいえることだが、劇中の背景は広角気味で同じような写真を撮るのが難しい。この写真もぎりぎりまで下がって撮ったのだが、劇中のように遠くの山々と空を撮すことはできなかった。
あ〜るを探すため豊橋方面へと戻る光画部一行。途中、列車がトンネルと鉄橋を通過する場面がある。このうち、鉄橋は三河川合 - 池場間の国道152号とクロスする橋がモデルになっている。


鉄橋
鉄橋を渡ってからしばらくして、線路から川を挟んだ反対側の道路にいるあ〜るが発見される。ここで鳥坂が非常ブレーキを引いて列車を止めてしまう。よい子は絶対マネしちゃダメだよ!
列車から放り出される光画部一行。曲垣「前の駅までそんなに距離なかったですよね」、鳥坂「このすぐ先が駅である」で指している方向が逆であることから、駅間が近いところで降ろされたに違いない。背景を考えると三河大野 - 三河川合のどこかだと思われる。
飯田線の中では比較的大きい駅である中部天竜。ここではむしろそれが災いしてか、鍵のかかった土産物の陳列棚に置かれスタンプを押すのに手間取ってしまい、あ〜るとさんご、あさのが乗り遅れてしまう。


中部天竜駅
劇中では駅に大きく「歓迎 緑と清流の里佐久間」の看板がかかっているが、現在はない。それどころか今や浜松市天竜区である。さすがの光画部の面々も、将来ここが行政区になるとは思いもしなかっただろう。私だって納得いかない。
ホームで途方に暮れる三人。椎子達が次の駅で待っているということで、あ〜るが隣の駅まで歩くことを提案する。あさのが「歩くったって距離あるぜ」って抗議するが、「線路を歩いていけばすぐに次の駅です」というあ〜るに納得して、天竜川橋りょうを渡り始める。で、途中で次の列車に追いかけられてさんざんな目に遭うというオチ。
ちなみに、線路ではなく国道473号経由で歩いても佐久間駅まで2kmもないぞ、あさの。
一瞬だけ登場する大嵐駅。ここで久々にまりいが登場し、光画部の様子をうかがう。まりいたちが隠れていた車と同じような位置に私も車を止めてみた。


大嵐駅
まりいと鰯水は愛知・静岡・長野県道1号で佐久間ダムの西岸を延々と走ってきたのだと思われる。あのオープンカーで佐久間ダムから延々と続くトンネル群を抜けてきたのだとしたらさぞかし大変だっただろう。新豊根発電所まではダンプカーも多いので泥だらけになることは間違いない。
有名な「下山ダッシュ」のスタート、下山村駅。下山ダッシュのメンバーはあさの、きしだ、あ〜るの三人。きしだ曰く「俺なんか二度目だよ」。ご苦労様です。


下山村駅
三人が立っていたホームはほぼそのまま。待合室だけでなく、切符の回収ボックスや照明の位置まで同じだ。三人のコスプレをしてホームに立てばそっくりそのままの場面が再現できる。
鳥坂の手にしていたノートによると、対戦成績は光画部の25勝32負(1不戦勝:台風による停電不通のため)らしい。いったいいつからやっているんだろう。
飯田駅ではえりかがスタンプを押し、鳥坂がジュースを調達してくる。このジュースが次の伊那上郷駅の場面での伏線になっている。


飯田駅
飯田駅は1992(平成4)年に現在の駅舎に改築され、当時の面影はない。変わらないのは背後の山々だけである。
「下山ダッシュ」のゴール、伊那上郷駅。発車ぎりぎりに何とか間に合う三人組。鳥坂が飯田駅で調達してきたジュースがあさの、きしだに手渡されるが、どうみてもタヒボベビーダである。毒飲料とかゲゲボドリンクとして世間にその名をとどろかせた伝説のジュースだ。
飯田駅で鳥坂が手にしていたジュースの中に2本、きっちりとタヒボベビーダが含まれていることがわかる。鳥坂は最初からあさの、きしだにタヒボベビーダを飲ませる気だったようだ。


伊那上郷駅
伊那上郷駅はほぼ当時のまま。列車が入ってきた場面と同じ角度で撮影してみた。
あ〜るファンにとって聖地中の聖地、田切駅。一行は今回の目的地が伊那市ということを忘れ、行きつけの山田さん温泉の最寄りであるここで降りてしまう。椎子が時刻表を調べるところ、乗ってきた電車がタイムリミットに間に合う最後の列車であることが判明し、皆その場にへたり込む。
そんな中、鳥坂とあ〜るが轟天号を十人乗りに改造(?)し、これで伊那市へと向かうことになる。クライマックスの始まりだ。
自転車が国道153号へと飛び出してきた場面を撮影してみた。


田切駅から国道153号へ
ここの交差点はものすごく見通しが悪い。あんなふうに飛び出すと危ないぞ。
スタンプツアーのゴール、伊那市駅前の西園寺ツーリスト伊那市支店。その前から伊那市駅の方向を窺うまりいと鰯水。二人の視点からみた現在の伊那市駅である。


伊那市駅
駅の雰囲気はほぼそのまま。劇中では駅の向こうに建物がないが、これは当時なかったのかどうかはわからない。轟天号が突入してくる場面のパチンコ屋の建物は未だ健在である。
この場面ではあ〜る達が高遠方面から来たことがわかる。ということは飯田線の踏切を止まらずに突っ切ってきたことになる。だからそういうのは危ないってば。
タイムリミットぎりぎりに最後のスタンプをもらい、悔しがるまりいを後に西園寺ツーリストを去る鳥坂とさんご、あ〜る。他のメンバーは途中で振り落とされてしまい、ここまでたどり着けなかった。
日没後、彼らを回収するため大八車を引いたあ〜るが登場する。方向から考えておそらく長野県道18号 伊那生田飯田線か国道361号のいずれかだろう。国道361号にはあんなにきついカーブはないので、長野県道18号のような気がする。
最後はさんごの中の人、笠原弘子の「くちびるにメモリー」で終わる。「久しぶりに降りた駅は いつの間にか建て変えられて」とははたしてどの駅のことなのか。
伊豆編と同様、当時のダイヤをもとに光画部の旅を検証してみよう。
劇中の飯田線のダイヤは1990年のものと1991年のもの混在していることは前に述べたが、ここでは船町駅の時刻表を優先して90年のダイヤに基づいて検証する。ちなみに、91年のダイヤでも列車番号は異なるものの、時刻はほとんど同じだ。
まず、光画部が下車した駅を確認してみる。明確な描写がある駅は、鳥居、出馬、田切である。また、直接の描写はないものの、中部天竜で置き去りにされたさんご達を次の佐久間で待っていたことは間違いない。さらに、出馬からいったん豊橋方面へ引き返している。どこから再び乗車したのか不明だが、とりあえず三河大野で乗車したと仮定する。もっとも、この付近ならどこからでも同じ列車に乗ることになるだが。
それでは、田切から豊橋へと遡る形で考えてみよう。田切において「さっきのが田切発16時47分、伊那市に6時前に着ける電車は…あれが最後だったんだ!」という椎子の台詞があるが、残念ながら田切16:47発の列車はない。実際に該当するのは田切17:14発の251Mで、伊那市に17:44に到着する。16:47はひとつ前のチェックポイント、上片桐の発車時刻だ。
台詞の時刻は違うものの、時刻表で椎子が指さしているのはまさしく251Mだ。椎子が上片桐と田切を勘違いしているだけで、実際に乗ってきたのは251Mと考えてよいだろう。
251Mは天竜峡が始発で、15:49の発車だ。田切までの間に下山ダッシュがあるが、乗り遅れてはいないので田切まで順調に251Mで来たと考えてよい。251Mに天竜峡で接続する列車は佐久間14:24発の629Mである。
佐久間にその前に到着する列車は12:20着の1221M。中部天竜着は12:14である。中部天竜を出てすぐ、間垣の「そういえばもうお昼ですね」という発言とも合致する。次の629Mまで2時間あることから、椎子の「次の電車までだいぶ時間があるわ」という台詞もまた然りである。ただし、劇中では方向幕が「天竜峡」となっているが、1221Mは上諏訪行きである。
中部天竜でのトラブルの前のイベントは、成原博士の登場、そしてあ〜るの車外放出である。あ〜るが消えたことに気がついた一行は出馬で下車し、豊橋方面へと戻る。そしてあ〜るを発見した鳥坂が非常ブレーキで列車停止、怒った車掌に列車から放り出される。
この後、再び乗車したのは、最初に仮定したように三河大野からだとする。前述の1221Mは11:33の発車だ。あ〜るが合流した出馬は12:02発となる。
これから逆算すると、鳥坂達が放り出された豊橋行きは628M、出馬10:40発だ。三河大野が11:09で、この付近は駅間が2km程度しかないので、1221Mにはなんとか間に合うだろう。
628Mからさらに逆算すると、最初の出馬下車は9:21の627M、中部天竜行きになる。トンネル内で成原博士のテープが爆発したとき、方向幕は「中部天竜」となっており、一致している。
しかし、ここで矛盾が生じる。豊橋駅前で朝食をとっているとき、小夜子が「遅いわね、もう10時よ」というシーンがある。つまり、10:00にはまだ豊橋駅にいたのだ。
とりあえず、このシーンを見なかったことにしてさらに遡ってみよう。出馬の前には鳥居でトイレ休憩のため降りている。627Mは鳥居8:24発であり、その前に鳥居に到着する列車は7:49の625M、中部天竜行きだ。625Mは豊橋6:54発だ。したがって、劇中のすべてのイベントを成立させるには、3時間は早く出発しなければならないことになる。
逆に、豊橋を10時過ぎに出て伊那市に18:00前に到着する最後の列車に乗るには、豊橋10:25発の1221Mか、12:25発の629Mに乗るしかない。1221Mなら途中で列車を1本先送りすることができるが、629Mではその余裕すらない。
飯田線の道中を完全に再現するのは難しい。しかし、時間をずらせば不可能ではない。もっとも、本当に非常ブレーキを引いた日には列車から降ろされる程度で済むわけがなく、たぶんそのまま警察署に直行、旅は中止だろう。
漫画の連載終了から20年以上経ち、OVAの発売からも17年近くが経過した。今回の旅を終えて、思ったよりも当時の風景が変わっていないことに驚いた。大きく変わったのは伊豆急下田駅、豊橋駅、飯田駅、そして振り出しの東京駅である。東京駅の場合、東海道線のホームそのものはそれほど変わっていないが、その他はだいぶ変わった。そして駅だけでなく、発着する列車もまた変わった。
このように主要駅が変わる一方で、それ以外のローカルな風景はほとんどそのままだ。バブル崩壊後の日本が歩んできた道をなんとなく示唆しているような気がする。
また、劇中に直接出てくるわけではないが、もうひとつ大きく変わったのはジャングルパークだろう。閉園に伴い、石廊崎バスターミナルもなくなり、まりいと鰯水が立っていたバス案内所は廃墟と化した。
まりいと鰯水といえば、伊那市駅前の西園寺ツーリスト伊那市支店も場所が変わったようだ。


西園寺ツーリスト伊那市支店
そして、だいぶ前になるがあ〜るの中の人が亡くなり、つい先日は鰯水の中の人も亡くなった。嫌でも月日は流れる。憧れだった存在はいつしか過去のものに。これから次の20年、世の中はどう変わってゆくのやら。
それにしても、息抜きの間に人生やっていたらいつの間にか行き着くところまで来てしまったような。深く考えるほど嫌になるので、これ以上考えないで終わる。