フジヤマ単独行敗退録

茨城には七つの富士があるとか

日本にはなんとか富士という山がたくさんある。たいていの場合、姿形が富士山に似ているとか、周辺でいちばん高いからというもっともらしい理由がある。有名どころでは蝦夷富士こと羊蹄山、津軽富士こと岩木山がある。

あまり高い山がない茨城県にもなんとか富士がある。常陸大宮市(旧緒川村)にある小舟富士、同じく常陸大宮市(旧山方町)の盛金富士、大子町の生瀬富士、等々。いずれも500mに満たない低山だが、なんとか富士である。

そんな中、豪快にもなんとか富士ではなく、そのものずばりの富士山もある。それもひとつではない。石岡市(旧八郷町)の富士山、笠間市(旧友部町)下加賀田の富士山、そして笠間市福原の富士山である。ほかにもあったような気がするが、ここでは割愛する。

今回はそんな富士山のひとつ、笠間市福原の富士山に登ってみることにした。

1日目 電車で行ってみた

2006年9月30日、午前9時過ぎ、福原駅に降り立つ。水戸線の踏切を渡ると富士山は目の前だ。こうしてみるとたしかに本物の富士山っぽく見えないこともない。

福原駅前から望む富士山
福原駅前から望む富士山

こんなの楽勝である。1時間もあれば登頂できるだろう。準備しておいた国土地理院刊行の2万5千分1地形図を見ながら、富士山の北側へ向かう。ここから富士山頂へと向かう道が延びているはずだ。

集落を抜けるといかにも登山道っぽい道になった。あとは30分も歩けば…あれ、道がない。行き止まりだ。それに、地図によると尾根伝いを歩くはずだのだが、そんな雰囲気ではないし。道を間違えたようだ。

富士山北側 その1
富士山北側 その1

いったん引き返してひとつ東側の道へと入る。よし、順調に登っているぞ。未舗装とはいえ道路が広いな。ガードレールもあるし。おや、なんか方角がずれてきたぞ。しかも下り始めたし。地図によると下りはほとんどないはず。これも道を間違えたようだ。どうやらさっき登った道との間の正解の道があるらしい。

富士山北側 その2
富士山北側 その2

ちょっと待て。いま歩いてきたふたつの道の間にもうひとつ別の道なんかなかったぞ。まあいい。富士山の登山ルートはひとつではない。別ルートから登ればよいのだ。そう思い直し、富士山の西側へ。地図によるとここから富士山へと登る道があるはずなのだが、それも見あたらない。いや、正確には道があるように見えなくもないが、無理に突入すると人家の中を横切るか畑のを踏み荒らすかの二択になりそうである。なんか近所の犬はキャンキャン吠えるし。残念ながら西側から無理っぽい。

しかし、登頂をまだあきらめたわけではない。南からのルートが残っている。だが…

北関東自動車道(建設中)
北関東自動車道(建設中)

なんと、南側は建設中の北関東自動車道に山肌が削られ、道を探すどころの話ではない。橋がものすごく怪しいのだが、工事中のため近寄ることもできない。ここもあきらめて、さらに山を一周するように歩く。もしかすると地図に載っていない道があるかもしれないというわずかな期待があったからだ。北関東自動車道の下をくぐって少し歩くと、山肌を登る道があった。意外に道は広く、一気に山頂まで行けそうな感じがする。ここぞとばかり突入。

富士山南側 その1
富士山南側 その1

しかし、この道も数十m進んだところで終わってしまう。この後、さらに山の周りを調べてみるが、登山口は見つからなかった。数時間前の元気はどこへやら、この日は負け犬のようにとぼとぼと帰途についたのであった。

2日目 車で行ってみた

翌日、再び富士山へとやってきた。正確な位置の把握にiPAQ h2210+CFGPS2を投入するべく、こんどは車である。昨日のチャレンジでだいたいのところはわかった。やはり登山口は地図に載っている北、西、南のいずれかしかない。まずは北側へ。登山口にあたる場所に車を止めてみるが、やっぱり道は見つからない。GPSをもってしても見つからないとは。

早々にあきらめ、西側へ。昨日の犬がまたもや吠えかかってきた。車に乗っていても容赦ないな。こちらも道は見つからない。ここも撤収し、最後の砦、南側を探す。

ほかに車がくることはなさそうなので、徐行しながらh2210と睨めっこ。え?こんなところに道が…あった。昨日歩いたときにはすっかり見落としていた。それにしても怪しい。

富士山南側 その2
富士山南側 その2

h2210を車から外し、手に持って進む。この道でよいらしい。いままでの道と違って途切れることなく続いている。そして目の前が開けたと思ったら、北関東自動車道に架かる橋へと出た。この橋を渡らないと富士山へは行けないようだ。昨日は工事中だったが、今日は休みっぽい。これ幸いと橋を渡る。

福原橋(建設中)
福原橋(建設中)

橋の先にも道は続いている。やはりこの道のようだ。地図によると、この先で西側からの道と富士山頂への道に分岐するはずだ。しかし、さっぱりわからない。h2210が分岐点と示している地点で立ち止まってみるが、分岐があるようには見えない。来た道がまっすぐ西側へと続いているように思える。

おかしいな。ふと振り返ってみると…あった。これが富士山頂へと続く道だ。

富士山頂への道
富士山頂への道

よし、後は山頂を目指すだけだ。だけなのだが…わずか数十m進んだ地点で、道はすっかり藪に覆われて消滅してしまった。これ以上は進む気にはなれない。というか、これ以上の前進は不可能である。

藪に覆われた登山道
藪に覆われた登山道

残念ながらここで撤退だ。無理に進めば迷いかねない。道の傍らには境界杭っぽいものが打ち込まれており、これを辿っていけばおそらく山頂に着くことができると思われるが、無事に戻れる保証はない。引き返せるうちに戻ることにした。

今回は完全敗北である。あそこまで道が消滅しているとは予想もしていなかった。現在では地元の人が登ることもほとんどないらしい。北関東道によって半身を失いながらも人の侵入を拒む富士山。どうせならこのまま永久に誰も寄せ付けず、ひっそりと山頂の三角点が朽ち果てる日を待つほうがよいのかもしれない。そんな複雑な気持ちを胸に山に別れを告げた。

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