再訪!道の駅 久米の里 ゼータの鼓動

Zガンダム再び

2004年9月。あれから1年以上経過した。その間に映画化は発表されるし、世の中わからないものである。というわけで、今度こそZガンダムの勇姿を拝むべく、再び道の駅 久米の里へと向かうことにした。

前回の失敗の原因はいきあたりばったりだったことである。そこで、今回はきちんと計画を立てることにした。あらかじめ宿を予約し、時刻表を睨め、そして傍らには青春18きっぷが…相変わらず進歩ないな、俺。

9月3日、午前4時。まだ薄暗い中、自宅を出発。歩いて最寄りの土浦駅へ向かう。

旅立ち 土浦→米原

今回は準備万端である。初日に久米町の隣、津山市まで移動し、そこで一泊。そして、2日目の午前中にZガンダムを拝み、午後は岡山県内ローカル線乗り潰しの旅。そして鳥取に宿泊。そして3日目は…なにも考えてないけど、まあいいか。着いてから考えよう。

そんなこんなで午前5時過ぎ、土浦駅に到着。いつの間にかすっかり明るい。こんな朝早くにもかかわらず、ホームにはスーツ姿のサラリーマンが多い。そういや今日は平日だ。そんな中、ジーンズにザックというラフな格好でいると、ちょっぴり優越感が味わえる。もっとも、それは自分もサラリーマンだからなのだが。

5:14、勝田発の始発列車が到着。土浦で増結作業があるため、しばらく停車する。列車に乗り込み、今回の旅の相棒、iPAQ h2210とAirH"でメールと朝のニュースをチェック。5:20、列車は定刻に土浦を出発。発車と同時に、まずは寝る。常磐線沿線の景色は見慣れているので、じっくり見てもしょうがないし。松戸あたりで目が覚める。日暮里で山手線に乗り換え、東京へ向かう。まだ6時半にもなっていないのに、かなりの乗車率である。日本の皆さんは働き者だ。まあ、朝帰り組も相当混じっているようだが。

東京で6:39発 東海道本線 小田原行きへ乗り換え。東京を出たときはすいていたが、川崎で乗客が増えた。高校生も多い。多くの乗客が横浜で降りるのかと思いきや、それ以上に乗ってくる。終点の小田原まで行こうかどうか悩むが、次の列車が平塚発なので、平塚で下車。平塚7:56発 熱海行きに乗り換える。この電車もかなり混雑するが、小田原を過ぎると空席がちらほら目につくようになった。8:46、熱海到着。急いで向かいのホームの8:48発 島田行きに乗車。落ち着く暇がない。

10:00ちょうどに静岡到着。切り離し作業のため5分ほど停車。乗ってきた電車の前3両はそのまま島田行きで、後ろ3両が10:15発 浜松行きとなる。いったん降りて浜松行きへ乗り換える。車両そのものは乗り換えたわけではないのだが、列車番号上は乗り換えていることになる。なんだかな。島名まで行ってもよかったのだが、確実に座れるように、と判断したらこうなった。乗り換えついでに、ホームの売店で新聞を買う。

11:26、浜松到着。またまた向かいのホームの11:27発 豊橋行きに乗り換える。忙しい。なんか客層のガラが悪くなってきたような…そうか、競艇か。隣の隣に座った爺さんがとにかく語る。で、私の隣の爺さんはひたすら相づちを打つ。勘弁してくれ。案の定、それっぽい客はみな新居町で降りた。しばらくして豊橋に到着。

豊橋で12:07発 快速 大垣行きへ乗り換え。蒲郡近辺の景色が懐かしい。そういやここのコンビニの駐車場で寝たっけな、と1年前を思い出す。出発時、車内はそれほど混んでいなかったが、名古屋が近づくにつれて混んでくる。頭の中で「名古屋はええよ!やっとかめ」が流れ出した。しかし、ここまでの疲れが出たのか、大府からの記憶がない。気がついたら岐阜だった。

終点の大垣が近づく。車内の雰囲気からすると、大垣で乗り継ぐ客が多そうだ。次の列車は座席の奪い合いになると判断し、早めに席を立ってドア近辺へ。大垣到着と同時に次の列車へ突撃…って実際には走っていません。もうそんなに子供じゃないし。でも、早めに降りたのが功を奏して、なんとか次の列車も座席を確保。

そんなこんなで大垣13:36発 米原行きが発車。案の定混んでいる。そういや、ここまで在来線で来るのは何年ぶりだろう、と並行する新幹線を見ながら考える。学生のころは、新幹線よりも在来線で関西入りしたことのほうが多いのが自慢だったのに、最近はそんな気力がわかない。金で時間を買うことを覚えてしまった。これが大人になったということなのか。「そんな大人、修正してやる!」…いやまあ、Zガンダムつながりで。

14:10、米原到着。相変わらず駅はでかいが、周囲にはなにもない。そんな中、新幹線も含め次々に列車がやってきては去っていく。重要な乗換駅という意味では東京駅や上野駅と同じなのだろうが、そういった都会の駅とは違う独特の雰囲気がある。ここを越えると、そこから先は別世界、という感じ。そう思うのは私だけかもしれないが、とか考えているうちに新快速が入線。とっとと乗り込む。

関西圏へ 米原→津山

14:16、米原を発車。姫路に到着するまで約2時間半。それにしても新快速は速い。さっきまで琵琶湖が見えていたと思ったら、あっという間に大阪を過ぎ、淡路島が見えてきた。そういえば、初めて山陽本線に乗ったときは、明石海峡大橋はまだ橋脚しかなかった。つい先日のことのように思い出したが、10年前の話である。

16:42、姫路到着。新快速を降り、姫新線のホームへと向かう。ここからは初めて乗車する区間である。ちょっぴりどきどきしながらホームで列車を待つ。17:05発の佐用行きに乗車。キハ47の2両編成だ。車内は高校生が多く、それなりに混んでいる。そうか、もうそんな時間か。列車は駅で止まるたびに高校生をはき出し、のんびり進む。

播磨新田まではAirH"が入ったが、そこから先は圏外となった。周囲は少々山がちになってきて、なかなかいい感じである。姫路に着いたときにはまだお日さまが眩しいくらいだったのだが、急速に暗くなってゆく。佐用に到着したときは、すっかり日が落ちていた。

列車を降りるとすぐに、上郡方面に向かうスーパーはくとと、大原行き普通列車が到着。次の津山行きが出るまで少々時間があるので、せっかくだから写真でも撮ろうと思い、持参のデジカメを取り出す。しかし、なかなか電源が入らない。おかしいと思ったら電池が切れていた。そこで、電池を調達しようといったん駅から出るが、ぱっと見た目でそれらしい店はない。少し歩けばよかったのかもしれないが、あきらめて駅に戻る。

佐用駅のホームで列車を待つ。折り返しの姫路行きには、10人ほど高校生が乗り込んでいた。私は18:41発の津山行きに乗車。こちらに乗車する高校生は少ない。次の次の駅はもう岡山県だからか。列車はキハ120の1両編成。キハ120に乗るのはこれで3度目。関東在住のくせにキハ110よりも乗車した回数が多いかも。我ながら皮肉れ者である。

1年前の旅行記を見ると上月駅前18:09とある。だいたい同じような時間か。ただし、前回はまだ完全に暗くならないうちに津山市内に入れたけど、今回はさすがにもう真っ暗である。それでも、勝間田を過ぎたあたりから周囲が開けてきたのがわかる。もうすぐ津山だ。19:42、津山に到着。

初めて降りる駅というのはなんとなくわくわくするものだ。改札を出て、まずは向かいのバスターミナルへ。というのも、明日はバスで道の駅 久米の里へ向かうつもりだからだ。ターミナルは寂れてはいるものの、まだきちんと機能はしているようで、待合室も開いていた。待合室にかかっている時刻表を確認。どうやら8:45の勝山行きに乗ればよいらしい。これにて初日は終了。予約していた宿に向かい、ゆっくりと休むことにする。

…はずだったのだが、世の中そんなに甘くなかったのだ。

h2210が落ちる日

宿に着くと早速、2日目の予定を確認。次いで3日目、まだ決めていなかった鳥取からの帰路を時刻表片手に考える。できれば播但線に乗りたい。でもそうすると帰りは東海道本線しか選択肢がない。「一度通った道を二度通るなど言語道断」という鳥坂センパイの教えに反するし、どうしたもんだか。いっそのこと北陸に出てもう一泊するか、などと思いを巡らしているそのとき、それは起きた。

インターネットで調べ物をしていたら、h2210のメモリがいっぱいになってしまったのである。固まってしまったので、リセットスイッチを押して再起動…しない!再起動画面の途中でまた再起動を始める無限ループに陥ってしまったのだ。PCのようにフロッピーディスクから起動するわけにもいかず、完全にお手上げである。執るべき手段はただひとつ、フルリセット!こうして、我がh2210はすべての設定を忘れてしまったのだ。

とはいえ、私の環境はほとんどフリーソフトで構築されているので、インターネットにさえ繋がれば環境の再構築は容易である。少なくとも、メールとWebの閲覧環境は整う。プロバイダのログイン名とパスワードは覚えているので、さっそくアカウントの作成作業にとりかかる。しかし、ここで問題発生。ダイヤルアップ接続の電話番号を忘れてしまっていたのだ。うろ覚えの番号をいくつか試すが、すべてアウト。そこで、PC関係に詳しく、かついちばん暇そうな知り合いに電話し、電話番号を調べてくれるように頼んだ。

幸いにも、たまたま彼は家の近くにいたとのことで、数分後には電話番号が連絡されてきた。これでインターネットに接続可能となり、h2210の環境も半分くらい復活した。とりあえず今回はこれでよしとする。早速調べてくれた知り合いに礼をいい、これまでの経緯を説明する。実は、旅に出ることは誰にも告げていなかったのだ。「お土産を買って帰るから期待して待て」と伝えたところ、「面白いものでなければいりません」といわれてしまった。うーん、困った。2日目はほとんど列車内で過ごす予定だしなあ。しゃあない、3日目に調達するか。

時刻表を眺めながら、お土産調達のルートを選定。こうして3日目の予定も決まった。普通列車以外も使うことになってしまうが、まあいいか。

寝坊の危機 津山→道の駅 久米の里

午前8時、起床。って、8:45のバスに乗るはずだったのに、かけたはずの目覚ましがいつの間にかオフになっている。昨晩のh2210のトラブルで、寝るのが遅くなったのが敗因らしい。急げば間に合わないこともないが、まだ疲れが抜けきっていない。おとなしくあきらめて、タクシーで道の駅に向かうことにする。

9時過ぎ、宿を出て津山駅へ。翌日乗車する予定のはまかぜ2号の切符を購入。せっかくなので指定席をとってみる。鳥取→大阪で7,130円。続いてタクシー乗り場へ。運転手に「ロボットのある道の駅」と告げる。「ああ、ガンダムのある所ね」…そんなに有名なのか。というか、「ガンダム」なんて単語が聞けると思わなかった。あえて「ロボット」という表現でごまかしたというのに。

タクシーの運転手さんとの会話。

運転手「どちらからおいでに?」

私「茨城からですよ」

運転手「どうやって来たんですか?新幹線?」

私「いや、青春18きっぷなんで…まあ電車ですよ」

運転手「そうですか、やっぱり関東から車では無理ですよねえ」

私「あはははは…そうですね」

途中、だんだんと雨脚が強まってきた。津山駅を出たときには降っていなかったのだが、久米町に入る頃にはそれなりの雨となっていた。午前10時前、久米の里に到着。向かいのコンビニで降ろしてもらう。さあ、今度こそZガンダムにご対面。

感動の対面
Zガンダム

うわっ、でかい!初めて見たとき、まずそう思った。こんなものよく個人でつくったよなあ、とつくづく関心。近づいてみると、その重量感に圧倒される。この模型は全高7mで、アニメの設定である頭頂高19.8m(*1)のおよそ3分の1しかないのだが、それでも十分大きく感じられる。それどころか、昨日乗車したキハ120(全長16.3m)よりも大きく見える。

私以外にも見物客がいるかと思ったが、ほかに人影はない。おかげで遠慮なく写真を撮りまくることができた。しかし、そうこうしているうちにますます雨が強くなってきたので、休憩室に待避。

これで目的は達した。はるばる茨城から見物にくるだけの価値はあった。休憩室でお茶を飲みながら、満足感に浸る。

岡山を駆ける 道の駅 久米の里→新見

これで旅の目的は達成した。しかし、今回はこれだけではない。岡山県内ローカル線乗り潰しというもうひとつの目的があるのだ。子供の頃、私にとっては時刻表上の存在でしかなかったローカル線の数々。そのいくつか、特に北海道の路線は、私が大人になるのを待ってくれず廃線となった。もうそんな悔しい思いはしたくない。自分で稼いだ金で好きなように乗り回ってくれるわ。そのわりに18きっぷとはせこいですか、そうですか。

まず津山駅に戻る。最寄りの日南口バス停へ。津山行きのバスは午後2時すぎまでないので、津山発勝山行きのバスで美作千代駅に向かい、そこから姫新線で津山に戻ることにした。津山発のバスは10:51発なので、このほうが早い。津山駅前で買い物もできるし。

日南口バス停 時刻表
日南口バス停 時刻表

残念ながら、日南口バス停には待合室もなければ大トトロもいない。雨に打たれながらバスを待つ。少し遅れてバスがやってきた。どうせ誰も乗っていないんだろう、という予想に反して、数人の乗客がいた。バスが到着する直前、雨が上がる。私がZガンダムを見ている間だけ雨が降っていたというわけだ。まあ、そんなこともある。

千代駅前で降車。乗っていたのはたった2区間だった。これなら歩いてもよかったかも。地元の人からすると怪しい客だったかもしれない。さて、バス停に立って周囲を見渡すが、ぱっと見で駅らしいものは見あたらない。道路を渡ったところに、千代駅との案内が出ていたのでそれに従って歩く。あれ、踏切に出てしまったぞ。どうやら道を一本間違えたようだ。踏切から駅が見える。気を取り直して駅へ向かう。

美作千代駅
美作千代駅

美作千代11:21発の津山行きに乗車。10分ほどで津山へ。美作千代駅は無人駅なので、津山駅で18きっぷに鋏を入れてもらう…って表現でいいのか?とにかく乗車日の印をもらう。次の乗車する予定の列車は12:43発 新見行きである。しばらく時間があるので、その間に津山市内を散策。昨日、駅前に着いたときは何もないと思ったが、それもそのはず、市街地は吉井川を隔てた向こう側にあるのだ。今津屋橋を渡って市街地へ。商店街らしきところをうろうろするが、人影は少ない。やがて列車の出発時刻が近づいたので、駅に戻る。駅の売店でおみやげを購入し、ホームへ出る。

列車が車庫から出てきた。いったん東津山方面へと向かった列車は、院庄方面へと折り返し、さらに方向転換して入線。こんなややこしい入線作業が見たのは初めてで、ちょっぴり嬉しかったり。

津山駅
津山駅

列車は定刻どおり出発。どこかの旅行会の人たちが乗車してきたため、座席はいっぱいである。それとは別に、カメラを手にした人たちもいる。そういや、今日明日は18きっぷが使える最後の週末だもんな。院庄→美作千代間で再びZガンダムにご対面。隣のボックス席に陣取った学生風の一団がカメラを構える。この様子からすると、Zガンダムの存在は最初から知っていたようだ。

美作落合までは中国自動車道と並んで走る。当たり前だが車のほうが速い。しかし、交通量が極端に少ないせいか、あまり気にならない。意外なことに、中国勝山まではAirH"が入る。これは、どうやら国道181号沿いにアンテナが立っているせいらしい。

中国勝山を過ぎるとトンネルが連続する。あきらかに勾配がきつくなっていくのがわかる。乗客は津山からほとんど減っていない。列車はゆっくり進む。ただし、パワー不足というわけではなく、安全のために徐行しているという感じ、たぶん。空は曇っているものの、だいぶ明るくなってきた。雨に濡れた木々の緑がより濃く見える。

刑部から下り勾配に転じる。再び中国自動車道が現れた。そんなこんなで新見に到着。新見で14:20発 岡山行きへ乗り換え。さきほどの旅行会一行はスーパーやくも13号で米子方面へと向かった。岡山行きの車内はすいている。そういや昨日の夕方からずっと気動車ずくめだった。久しぶりの電車である。

津山再び 新見→鳥取

新見からはひたすら下り坂。高梁川に沿って進む。井倉峡の眺めが素晴らしい。何も考えずに進行方向左側の席に座ったのだが、景色を見るにはちょうどよかった。備中高梁で少し平地らしくなるが、すぐにまた両側から山が迫る。総社まで出るとようやく平地らしい平地に出た。次の清音駅を見て、天地無用!の登場人物の名前は岡山の地名からとられていたことを思い出した。

倉敷から山陽本線に入り、岡山へ。岡山ではいったん駅の外へ出て、遅い昼食をとる。そしておみやげを購入。岡山といえばきびだんご、ということできびだんごをごっそり購入。なんかえらく荷物が増えたが気にしない。駅に戻り、16:30発の津山線 津山行きに乗車。

今度は旭川に沿って上ってゆく。伯備線に比べると勾配はゆるいようだが、周囲はそれなりに山がちである。箕地トンネルを過ぎると、それまでの上り勾配から下りに転じた。その後、福渡までゆっくりと下ってゆく。福渡からは誕生時川に沿って津山を目指す。

午後6時過ぎ、津山に到着。これで3回目の津山入り。周囲はだいぶ暗くなっている。18:12発の因美線 智頭行きに乗り換え。乗客はほとんど高校生。みな部活動からの帰りらしい。東津山からは乗車する人がいたが、それ以降は降りるだけ。車内の乗客はだんだんと減ってゆく。AirH"も圏外となった。

美作加茂でかなりの乗客が降りる。周囲も真っ暗だ。美作河井を過ぎると、乗客は私を含め3人にまで減っていた。物見トンネルを抜けると雨が降っている。乗客がだいぶ減ったので、運転台の斜め後の席に移動する。雨のせいで見通しが悪い上に、左右から木々が迫り、どちらにカーブしているのかもよくわからない。運転は相当大変だろう。那岐までかなりゆっくり進む。雨のせいで徐行運転なのかも。

気がつくと国道53号が併走している。今までどこに消えていやがった。そのせいか、AirH"が入るようになる。少し平地になったと思ったら、智頭に到着。時刻は午後7時20分。次は20:50発 鳥取行きに乗車する予定なので、夕飯でも食べようと駅を出る。でもなんかいやな予感がする。というのも、駅周辺が真っ暗なのだ。

幸いなことに雨が上がっている。駅を出てすぐ目の前の橋を渡り、あたりを見回してみるが、それっぽいお店は見あたらない。いや、ファミレスとかで十分なのだが、そういう雰囲気ではない。それどころかコンビニすらない。駅に戻り、缶コーヒーを飲みながら列車を待つ。待っている間、19:38発のスーパーはくとと、20:31発のスーパーいなばが出ていった。これに乗ろうかとも思ったが、別に急ぐ理由もないので、おとなしく待合室で列車を待つ。

列車が入線したので、ホームへ出て乗車。キハ47の2両編成。乗客は3、4名というところか。列車がゆっくりと勾配を下ってゆく。国道53号を走る車もまばらで、あたりは真っ暗である。国英を過ぎると国道53号と別れる。暗いながらも、周りから山が消え、平野部に出たことがわかる。鳥取は近い。郡家からは高校生が乗車。こんな遅くまで部活動とはご苦労様である。

21:32、鳥取に到着。再び雨が降り出していた。ちょっと迷ったが、なんとか宿に到着。明日の朝は早い。今朝の寝坊を反省し、ありったけの目覚ましをかけて寝る。

さよなら西日本 鳥取→塩尻

午前5時起床。軽く朝食を済ませ、鳥取駅へ。雨がぱらぱらと降っている。6:13発 大阪行きの特急はまかぜ2号に乗車。乗客は数人いたが、指定席をとった1号車の乗客は私だけ。まさに貸し切り状態。いい感じ。常磐線以外の特急にのるのは初めてだ。そのくせ「さんべ」や「だいせん」といった山陰本線の急行には乗ったことがあったりして、やはり我ながらひねくれ者だ。いや、ただの貧乏性かも。

鳥取駅
鳥取駅

浜坂で数人乗車。そして餘部鉄橋へ。前回はだいせんで通過したので、どこが鉄橋だかさっぱりわからなかったのだが、今回はばっちりである。香住、城崎と乗客が増え、車内はだんだんにぎやかになってくる。豊岡で車内はほぼ満席に。こんなに混むとは予想しておらず、意外だった。

車内でかにずし弁当を購入。ベタな選択だと思ったが、まあよしとする。和田山からいよいよ播但線へ。生野までは上り勾配が続く。山陰本線でも速度はそれほど出ていないみたいだったが、播但線ではますますゆっくりになった気がする。まあ、急ぐよりも景色を楽しみたいので、このほうが好都合なのだが。

生野を出るといよいよ下りである。線路のすぐ下を流れる市川は連日の雨で増水しており、迫力がある。昨日の伯備線と同様、今回も川が見える側に座れたのは幸運であった。列車はひたすら坂を下り、福崎へ。聞いたことがある地名だと思ったら、去年ここを通っていたのだった。去年は東から西へ、今年は北から南への違いはあるが。

福崎から姫路まではすぐである。駅の数は多いものの、平地に出たせいか駅と駅の間が短く、次々に駅を通過してゆく。これはこれで特急の醍醐味だろう。姫路で進行方向が変わるので、椅子の向きを変える。ほとんどの乗客が降りたのをいいことに、残った乗客は空いた席を適当に占拠してくつろぎ始める。

姫路を出ると加古川、明石、神戸と進んでゆく。2日前にもここを通ったはずなのだが、だいぶ前のできごとのような気がする。まあ、この2日間いろいろあったし。三ノ宮でさらに乗客が減り、再び貸し切り状態に近くなる。10:27、定刻どおりに大阪に到着。よくよく考えたら4時間以上も乗車していたわけで、よく飽きなかったもんだと感心する。

大阪で新快速に乗り換え、米原へ向かう。はまかぜの中ではずっと起きていた反動が出たのか、爆睡モードに突入。途中、京都で目が覚めた以外の記憶がない。米原で新幹線に乗り換え。本当は使いたくなかったのだが、初日に世話になった知り合いへのお土産を買うには新幹線を使わなければ間に合わないのだ。窓口で鳥取→大阪ははまかぜ、大阪→米原は18きっぷを使ったことを説明し、新幹線の切符を購入。

新幹線は冗談みたいに速い。米原を出たのが12:05、名古屋到着は12:31。新幹線ホームできしめんを食べ、ついでに売店でお土産を購入。またまたベタだと思ったが、ういろうにしてみた。そして中央本線ホームへ。そう、中央本線経由で帰ることにしたので、新幹線を使わないと間に合わなかったのだ。

13:03発 中津川行きに乗車。出発直前に雨が降り出し、鶴間付近で大雨に。この先大丈夫かな、と少し心配になったが、雨はすぐにやんだ。中津川到着は14:13。14:23発 松本行きに乗り換え。座席はほぼすべて埋まり、立っている人もいる。ここから先、松本行きの普通列車はだいたい2時間に1本しかないので、それなりに混むのかもしれない。

なんか景色に見覚えがあると思ったら、去年も同じルートで帰っているではないか。本当に進歩していないな、俺。線路は木曽川沿いに上ってゆく。単線だったり複線だったり、場所によってまちまちである。乗客は減る気配がない。会話から推測すると、どうやらほとんどの人が松本まで行くようだ。

15:48、奈良井到着。そういや去年はこのへんから権兵衛峠に向かったっけな。去年の記録では、「15:38 新鳥居トンネル」とあるから、ほぼ同時刻である。「はじめてのおるすばん」の主題歌をBGMに峠を越えたのも今となってはいい思い出だ。今回は中央本線なので、そのまま国道19号沿いに塩尻を目指す。洗馬でようやく平地になったと思ったら、次はもう塩尻だ。

16:13、塩尻到着。いよいよ本命のお土産を調達するべく、改札口を出て街の中へ。

虫・アタック 塩尻→土浦

さて、なぜ塩尻までやってきたのか。それは食用昆虫を入手するためである。昆虫食といえば長野。少なからず反論があるとは思うのだが、いろいろあって私の頭の中ではそうなのだ。私が育った茨城、福島でもイナゴは食べるが(私は嫌いだ)、ゲンゴロウだのざざ虫だのセミだの、守備範囲が広いのは長野である。

食用昆虫にこだわるのには理由がある。およそ1か月前、今回世話になった知り合いを含め、数人で台湾を旅行した。そのとき、広東料理の店でコースを頼んだのだが、その中にゆでエビの盛り合わせがあったのだ。私はギョッとした。それはもちろん、私はエビが嫌いだからである。

エビのどこが嫌いかって、それは外見である。だって、どう見たって虫、いや蟲ではないですか。あの触角だって気持ち悪いし、目がもげたらそこから触角が生えてきたりするし(再生失敗)、気持ち悪いったらありゃしない。どうして世間はあんなにエビをありがたがるのか、私にはさっぱり理解できない。そのエビが姿形そのままに、山盛りになってでてきたのである。んなもん食えるか!ということで、私はエビに手をつけなかった。

当然ながら、その後なぜエビが嫌いか、という話になった。私は虫っぽい外見がいやなのだ、と説明した。しかし、それだけでは負たような気がするので、あらかじめ理論武装しておいた。

昆虫食の紹介では「エビのような味がして旨い」という例が多い。逆にいえばエビは昆虫の味なのでは。

エビ、カニが属する甲殻綱(Crustacea)と昆虫綱(Insecta)はどちらも 節足動物門(Arthropoda)大顎亜門(Mandibulata)に属しており、分類学上近縁である。姿形がだけでなく味まで似ていて当たり前である。

これをさらに展開し、エビだのカニはゴキブリ味かもしれない、とまで話を広げてみた。ところが、彼らはそれには動ぜず、それでもエビを食い続けると主張した。そうか、それならばこっちにも意地がある。そこまでいうのなら虫が食えないとはいわせんぞ、覚悟しておけい。

このようないきさつにより、わざわざ虫を買うためだけに中央本線経由にしたのである。本当は数ある食用昆虫のなかでも悪名高い有名なざざ虫が欲しかったのだが、ざざ虫→伊那谷→飯田線→時間が足りない、ということで、中央本線経由で塩尻にやってきたのだ。

塩尻駅前の店で虫を探す。虫、虫、虫…虫なら種類は問わない、でもできればざざ虫がいいなあ。邪なオーラを漲らせて店内を物色。私の他にも数人の買い物客がいたのだが、虫だけが目的の客はたぶん私だけだろう。最初入った店には残念ながら虫は置いていなかったが、次に入った店で虫を発見!蜂の子である。

蜂の子を握りしめてレジへ。店の主人もこちらの魂胆を見抜いているのか、妙にニヤニヤしている。蜂の子しか買わない客なんて、そうそういるもんじゃないだろうし。まっとうなお土産も買おうと思ったが、鞄の中はきびだんごとういろうでいっぱいだったので止めておいた。

塩尻駅で夕飯代わりの岩魚ずしを購入。そういや朝も似たようなものを食べたような気がするが、まあいいか。16:54発 大月行きに乗車。車内は結構混雑している。しかも途中で降りる客が少ない。甲府まで乗車してゆく人も少なくない。ええい、どいつもこいつもケチりやがって、特急を使え特急を!って私は文句をいえる立場ではないですか、そうですか。

19:46、大月に到着。19:52発の東京行きに乗り換え。車内は登山からの帰りと思われる人が多い。ええい、車内で酒を飲むな。打ち上げは家に着いてからにしろっつーの。酒くさいのは常磐線だけで十分だ。ああっ、こぼすな。だからいわんこっちゃない。揮発したアルコールを吸ったせいか、急速に眠くなり、新宿あたりまで爆睡。

あとは素直にお茶の水、秋葉原、上野と乗り換え、常磐線で帰宅。日曜の夜遅くということもあってか、常磐線が思ったよりもすいていたのが救いだった。例によって、家に着くなり大爆睡。

そして1週間後、蜂の子を手に知り合いの家へと押しかけた。蜂の子を見たときの彼の一言。

「これ、寮のごはんに混ぜちゃっていいですかね」

よし、勝った。

こうして、貴重な連休は、Zガンダムとローカル線と虫に費やされて終わった。いや、私としては大満足なのですよ、たぶん。

参考文献

*1 『機動戦士ガンダムMS大全集98-MS ENCYCLOPEDIA』(メディアワークス、1998年)

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