秋である。紅葉である。
「山へ行くぞ!」
どこの山?
「八溝山!」
なんで?
「茨城県でいちばん高い山だからだ!!」
なんとかとはさみは使いよ…いや、なんとかと煙は高いところが好きともいう。
八溝山は茨城、福島、栃木の3県にまたがる山である。標高1022mで八溝山系の最高峰だ。かつ茨城県の最高峰でもある。山頂には八溝嶺神社があり、古くから山岳信仰の対象とされてきた。日本百名水のひとつ、八溝五水の湧き出る地としても知られる。
山頂には3県のいずれからも車で上ることができる。茨城県側から上るには、大子町から茨城県道28号 大子那須線で麓まで行き、そこから八溝林道または茨城県道248号 八溝山公園線(腐沢林道)で上ることになる。県道248号は走ったことがないので詳細は不明。八溝林道は全線舗装されており、やや狭いところや見通しがよいくないカーブがあるものの、それほど苦労することなく山頂まで行くことができる。この道はいちばん走りやすく、それなりに交通量が多い。車だけではなく自転車を見かけることもある。
栃木県側から上る場合は、黒羽町から国道461号を大子方面に向かい、途中から栃木県道13号 大子黒羽線に入る(こちらが道なりに直進)。すぐに栃木県道321号 南方須佐木線の分岐点があるのでそちらに折れ、そのまま北上すると上記の県道28号(ここでは栃木県道)と合流する。合流点からそのまま道なりに直進すると八溝山へと通じる道になる。ちなみに県道28号はここから先、那須町へと車で抜けることはできない。この道路も全線舗装されてはいるが、茨城県側に比べると若干路面の状態が悪い。特に路肩が弱い部分が目立つ。数年前に来たときは落石もあった。基本的には山の尾根を縫うように頂上まで進む。
福島県側から上る道は2本ある。ひとつは林道真名畑八溝線、もうひとつは福島県道377号 八溝山線である。真名畑八溝線の入り口は福島県道196号 石井大子線沿い、塙町真名畑付近にある。一方、県道377号の入口は、福島県道60号 黒磯棚倉線を黒磯方面に向かう途中、棚倉町大梅付近にある。真名畑八溝線は走ったことがないので詳しいことはわからないが、いずれにせよどちらのルートも八溝山系の林の中を川に沿って抜けていく未舗装路である。茨城県および栃木県側の道が尾根づたいの道だったのに比べるとかなり雰囲気が異なる。
で、どっちから上るご予定で?
「当然、福島県側からである」
まあ、あえて苦労するのもまた一興かと。というわけで福島県道377号 八溝山線にチャレンジである。
棚倉町に向かうべく、水戸から国道118号を北上する。那珂川に架かる千歳橋を渡ったのが午後1時半頃。水戸から棚倉まで約90km。日が沈む前に八溝山に着けるかどうかかなり怪しいが、まあなるようになるだろう。交通量はそこそこ多いが快調に進む。行楽シーズンのせいかすれ違う観光バスが多い。空は晴れ渡り絶好のドライブ日和である。
那珂町、瓜連町と進む。田んぼが広がるのどかな風景が続く中、突然大きな看板が目に留まった。

那珂瓜連地区消防事務組合消防本部 西消防署
「商魂」ならぬ「消魂」である。もしかしたらアントニオ猪木の「闘魂」を意識しているのかもしれない。とにかく絵から気合いが伝わってくる。その心意気やよしといいたいところだが、普通の消防署なら「マッチ1本火事のもと」等の火災予防スローガンを掲げるところであろう。火災が起きた後に気合いを入れられてもなあ。なんとなく太田巡査を思い出してみたりする。
ところがこの看板はまだ序の口で、大宮町に入るとさらに上手が現れた。

大宮地方広域組合消防本部 東消防署
「21世紀の消防」ってモビルスーツ型の消防車(もはや車ではないけど)でも開発中なんだろうか。火災現場に駆けつけるモビルスーツというのは見てみたい気がする。それにしても、このあたりでは各消防署ごとに手製の看板を掲げよという指令でも下っているのだろうか?
このあたりから少し混んできたようだ。この先は奥久慈、袋田の滝とさらなる混雑が予想される。よく考えたら棚倉町に入るのに国道118号を使う必要はないので、ここで国道349号に抜けることにした。国道349号は国道118号から東に山をふたつばかり越えたところを走る道路で、棚倉町の少し南、福島県東白川郡矢祭町で国道118号と合流する。国道349号沿いはそれほど有名な観光地もないし、すいているだろうとの判断である。
久慈川を渡り、金砂郷町を経て水府村に入る。このとき使った道は広域農道らしい。いったん茨城県道29号 常陸太田烏山線に出た後、水府村を縦貫する茨城県道33号 常陸太田大子線へ。しばらく北上し、水府村役場を過ぎたところで茨城県道36号 日立山方線へと折れる。そのまま走ると里美村に入り、国道349号へと出る。

里美大橋
国道349号を北上開始。予想外に車が多い。里美村の中心部まで来るとちょっとした渋滞に捕まった。「里見かかし祭り」なるイベントで混雑しているようだ。面白そうなので少し覗いていくことにした。会場には大小30体ほどのかかしが並べられ、自由に見ることができる。目についたかかしを並べてみた。
グランプリは小泉総理のかかしである。少し下ぶくれのような気がするが、確かに出来はよい。でも、あまりにもベタ過ぎて個人的にはいまいち。

かかしグランプリ 小泉総理
異彩を放っていたのが須藤建設の「親子」。先行者チックな顔つきがよい。これが田んぼの中を闊歩している姿を想像してみる。やはり目からレーザーを出して侵入者を追い払うのだろうか。

親子
ハム太郎とキティちゃん。婦女子対策か?ちなみにキティちゃんは豊作の女神らしい。

ハム太郎

キティちゃん
藤原紀香も登場。隣に添えられた「農作業も明るく楽しく元気よく」というコピーが泣かせる。

紀香ちゃん
問題作「テロ対策」。写真ではわかりにくいのだが、飛行機に突っ込まれて炎があがっているビルからかかしが首を出して助けを求めている様子が表現されている。これではテロ「対策」じゃなくて単なるテロなのでは(勝手ながら製作者の名前は伏せました)。

テロ対策
ついつい見入ってしまったが、気がつくと午後3時をまわっている。このペースでは八溝山に着く前に真っ暗になってしまう。急いでかかし祭り会場を離れ、再び国道349号へ。福島県まであと少しである。
ようやく矢祭町に入る。国道349号は福島県側に入るとセンターラインが消滅する。とはいえ県境近くは拡幅工事中で、片側交互通行の箇所があった。そこを抜けるとセンターラインがない状態がしばらく続く。矢祭工業団地の入り口からは再び二車線となり、すぐに国道118号と合流する。少し国道118号を走ったが、幾度も走ったことがありおもしろくないので、すぐ左手を走る水郡線を渡って福島県道230号 矢祭山八槻線で北上する。こちらは交通量がほとんどなく、信号もないので快適である。
棚倉町入るとまたもや国道118号と合流する。さらに北上を続け、国道289号との交差点から棚倉バイパスに入る。5km弱で福島県道60号 黒磯棚倉線の交差点があるので、ここを右折して黒磯方面へ。さらに5kmほど進むと福島県道377号 八溝山線の分岐がある。こちらが起点のような気がするが、実は終点らしい。

福島県道377号 八溝山線 終点
県道60号分岐からの3kmは普通の3桁県道だ。おおよそ1kmおきに路線番号標識があるが、最初の2つは蔦が絡まっていて見えなかった。入梅平というところまで来ると集落があり、センターラインが現れる。

棚倉町大梅入梅平
が、すぐにセンターライン消滅。ここから先に人家はない。

センターライン消滅
ここから先は雨量150mmに達すると交通止めになるそうだ。この先を考えると150mmでは手遅れだと思うのだが。

交通規制案内
しばらくはこんな具合の舗装道路が続く。すれ違いはやや困難。路肩に寄せると発進時に落ち葉を踏んでスリップするので注意。橋のたもとに自転車が止まっていたが、釣りにでも来ているのだろうか。

大沢橋
八溝山まで約10kmを残したところで、舗装がなくなりダートに突入。

未舗装開始地点
昨日の雨のせいか路面は水浸しで滑りやすい。轍がほとんどないので車の底をぶつける心配をしなくてよいのだが、その代わりスリップしたら引っ掛かりがないので久慈川へ転落である。
土嚢が積んである箇所もあった。しかし本当に崩れてきたらこんなもの役には立たないだろう。それ以前に土嚢そのものが倒れそうなのが気になる。

土嚢
日が差す場所は多少路面が乾いているようだ。だからといって飛ばすと対向車と出くわしたときに危険なので慎重に進む。そういやここまでで4、5台の車とすれ違った。待避所が多めなのはありがたいが、落ち葉が腐葉土となってぬかるむところもあるので要注意。
さらに進むと林道との分岐点がある。看板がなければ間違いなく迷うだろう。ここでランクルとすれ違った。

林道鹿ノ又線 分岐
この後もこの調子でダートが延々と続く。八溝山の北側のためあまり日が差さず、路面はいつもこんな調子なのだろう。この時点で時刻は午後4時半。まだやや薄暗いという程度だが、ここから先はライトをつけて進むことにした。
またもや林道との分岐がある。案内によると黒磯に抜けられるそうだ。県道60号沿いの栃木県境に近いあたりに戸中という地名があるので、県道60号に出ることができるらしい。

大森林道 分岐
しかし、いざ曲がろうとするとこれである。

一般通行禁止
肝心の文面は残っているものの、そのほかの文面と責任者名が故意に消されているのがとても気になる。なぜか「署長」の文字だけは残しているし、なにがあったのやら。責任者は棚倉警察署長?それとも営林署長?とにかく責任の所在をはっきりして欲しいものだ。
八溝山まであと数km。これまで比較的平坦だった道が上り坂に差し掛かると、突然舗装路となる。

舗装復活
しかし、あっという間にダートに逆戻り。とはいえこの辺は舗装工事をする予定らしく、路肩に排水溝を設置している箇所があった。ここは唯一つづら折りが連続する地点である。

未舗装に逆戻り
終点まで後わずかというところで再び舗装路になる。いまさらどうでもよい。

二度目の舗装復活
ようやく終点に到着。ここから見る限りだとこの先で未舗装になる気配を感じさせないし、その表記もない。雨量150mmで交通止めの表記はあるが、150mmでは未舗装区間があるとは思わないだろう。

福島県道377号 八溝山線 起点
それよりも入口から見えるところだけ舗装しておくのはどうかと思う。知っている人はともかく、初めて茨城県側から来た人はここで栃木県側に進もうか福島県側に進もうか悩んだ挙げ句、騙されて福島県側に入ってしまうことが少なからずあるのではないだろうか。
さて、右に進むと栃木県側、左に進むと茨城県側に下りられる。どちらに進んでもよかったのだが、栃木県側に出てしまうと帰りが遅くなりそうなので、茨城県側に出ることにした。ここから先、八溝山頂付近までは尾根伝いの道だ。「路肩弱し」の看板が何回か出てくるが、これは脅しではなく、本当に路肩が崩落していたり、ガードレールが崩れかかって用をなしていない箇所がある。
途中の待避所で一休み。時刻は午後4時50分、もう真っ暗だ。でもそのおかげではるか彼方に栃木県の街々の灯りが見える。確証はないが、方向から考えてたぶん大田原市と黒磯市だろう。

大田原市

黒磯市
撮影が可能だったのはここまで。これ以降はデジタルカメラの露出不足の警告が出るようになり、三脚もレリーズも持たない身では撮影不可能となった。とはいえせっかくここまで来たので八溝山頂へ。到着は午後5時10分。頂上には2台の車いたが、1台は私と入れ違いに山頂の駐車場を出ていった。車を降りてみても真っ暗でなにも見えないので早々に退却。駐車場を出るとき家族連れとすれ違った。残っていた車の持ち主らしい。彼らももう帰るのだろう。
八溝林道で山を下りる。それほど狭い道ではないのだが、麓まで急な坂とカーブが連続する上に、真っ暗だとどっちに曲がっているのかさっぱりわからない。頼むからガードレールに反射テープを貼ってください。途中一回だけ車とすれ違った。こんな時分にどこに行くのやら。麓まで下り、八溝林道の入口の鳥居をくぐって茨城県道28号 大子那須線へ。この道路は基本的に二車線なのだが、ところどころ集落を通過するときに一車線の隘路となるときがある。しかし、もう対向車はまったくなく、すぐに大子の街まで出ることができた。
国道118号を南下する。このまま水戸まで出ようと思ったのだが、大子町西金あたりから渋滞に捕まった。山方町に入り、茨城県道29号 常陸太田烏山線との交差点を過ぎたところでいったん渋滞が解消したのだが、またすぐにのろのろ運転になった。どこで渋滞から抜け出せるのか皆目見当がつかないので、大宮町から広域農道ビーフラインで桂村へと向かった。桂村からは国道123号で常北町に出て、茨城県道61号 日立笠間線で笠間に出た。遠回りのような気がしたが、1時間の渋滞よりも2時間の快走のほうがずっと楽なのでこれでよしとする。
家に着いたのは午後8時半過ぎ。まあこんなものだろう。当然ながら車は泥だらけ。疲れたので早く風呂に入って寝ることにしたが、寝る直前に前に大事なことを思い出した。紅葉を見てねえ!
思い付きでの行動とはこういうものである。まあ夜景がきれいだったのでよしとしよう。