あずまんが大王3巻発売記念 目指せ!「美浜ちよ」

きっかけ

ある日のことである。

「どこか面白そうなドライブコースはないもんかなあ」

Mapionにアクセスしながら考える。

「そういや、究極超人あ〜るもようやくDVD化されたしなあ。ということで飯田線はどんなもんだか」

長野県、飯田市と順にクリックし、飯田線に沿って地図を眺めてみる。飯田線を南下して行くと天竜峡だ。

「天竜峡か。まあわるくないかもな」

そのとき、ひとつの駅名が目にとまった。千代駅である。

「千代、ちよといえばあずまんが大王のちよちゃんだなあ」

そもそも着想がダメである。

「そういや、ちよちゃんのフルネームって美浜ちよだっけ?」

あずまんが大王の1巻を取り出して確認する。

「おお、あってる。俺の記憶力もまずまずだな」

脳の記憶容量の無駄遣いともいう。

「美浜、美浜といえば原発があったよな」

唐突に原発を思い浮かべるのは、福島県浜通り地方で育った者の宿命として勘弁してほしい。

「確か美浜は敦賀から小浜線で…小浜線っと」

小学生のときは「鉄」の予備軍だったのだ。時刻表はトモダチ、怖くない。

「おおう、確かに美浜駅も存在する。ということは…」

両方そろえれば「美浜ちよ」の完成である。

「これは実行するしか!」

で、行ってきましたです。はい。

美浜ちよ
美浜ちよ

疲れました。

計画立案

この企画の実行にあたって、まず問題となるのは移動手段である。手っ取り早いのは素直にJRを使うことだ。途中に「経由:大阪」を入れるとさらにおいしい。しかし、予算的に鉄道は無理である。青春18きっぷが使える期間ならなんとかなるのだが、残念ながらまだしばらくは使えそうにもない。そうすると車を使うしかないが、やはり予算の都合上、高速道路の使用は控えざるを得ない。移動手段は「一般道を車で移動」で決まりだ。

次に決めるのは経路である。経路に関する問題をまとめるとこういうことである。

上記3地点を結ぶ最短ルートを求めよ。

高速道路が使えないので、できる限り最短距離となるようにしたい。解の求め方は簡単である。3地点をそれぞれ直線で結び、その直線になるべく近い道を通ればよいだけである。とはいえ、道がないところは通りようがないので、そのような場所は避けるしかない。地図を眺めること数分、答えが出た。

これは次のことを意味している。

名付けて、「アルプス三段越え」である。ちよちゃんへの道は、かくして厳しく壮大なものとなったのであった。

アルプス三段越え第一段 南アルプス(失敗)

2001年10月6日、午前0時に出発。国道16号で八王子へ、次いで国道20号で甲府へ向かう。南アルプスを越えるルートは、夜叉神峠と北沢峠を越える南アルプス林道しかない。甲府で給油と朝食を済ませ、山梨県道20号で南アルプス林道の入口がある芦安村に入る。県道20号沿いには「南アルプス街道」の案内が出ていて、迷うことなく着くことができた。

県道20号をそのまま進むと南アルプス林道になる。林道に入ったのはちょうど午前5時ごろ。この時間なら誰もいないだろうと思っていたら、あっという間にタクシーに追いつかれる。待避所でやり過ごしたときにタクシーの中を覗いてみると、乗客は登山客のようだ。朝早くから元気な人もいるものだと思って走り出すと、こんどは向こうからバス(マイクロバスではなく普通の路線バス)が続けて2台やってきた。不幸なことにすれ違い不可能な場所で出くわしたので、待避所まで下がって道を譲る。なぜこんなところにバスと疑問に思いながらしばらく走っていたが、夜叉神峠の駐車場に到着して納得した。もうかなりの数の車がおり、登山の準備をしている人たちがいる。もちろんバス停もある。登山というのはこんなに朝早くから始めるものだということを初めて知った。

駐車場を抜けるとすぐに夜叉神トンネルである。トンネル内は狭いが、一応途中に待避所がある。役に立つのかどうかは疑問だが。幸い、対向車もなくあっさりとトンネルを抜けた。

夜叉神トンネル
夜叉神トンネル

夜叉神トンネルから先は下り坂が増える。道はお世辞にも広いとはいえないが、普通の山道といったところである。しばらく走って下り勾配がきつくなったところで広河原に到着。さあ、いよいよ北沢峠越えだ、と思いきや、峠に抜ける道はゲートがしまっており、見張りまで立っている。広河原から先は徒歩でしか入れないようだ。

いきなり出足をくじかれてがっかりである。出発前に調べたマピオンにはなにも書いていなかったのだが。とはいえ、どうしようもないので広河原で休憩しつつ対策を考えることにした。広河原の駐車場は車と人で溢れかえっていて駐車できる場所がなかなか見つからなかったが、川を渡ったところでようやく場所を確保することができた。

広河原
広河原

いろいろ考えた挙げ句、いったん甲府方面へと引き返すことにした。ただし甲府までは戻らず、途中から山梨県道12号で北上し、韮崎で国道20号に出て茅野へ向かう。茅野から国道152号線を使えば南アルプス林道の長谷村側入口(広河原からみたら反対側)に到着できる。決まったところでさっそく出発。来た道を戻るというのは鳥坂センパイの教え「一度通った道を二度通るとは言語道断」に反するので避けたいのだが、ここに車を置いて徒歩で進むわけにもいかない。

来たときは気がつかなかったのだが、川の対岸を走る道路(早川に抜ける道路)との高度差がかなりある。よくこんなところに道路をつくったものだと感心しながら山を下りる。朝日に向かって走ることになるので、若干まぶしくて運転しにくかったが、夜叉神峠からは木々に覆われるのでそれほどでもなくなった。

南アルプス林道
南アルプス林道

芦安村を抜けるころにはすっかり太陽が高く昇っていた。予定通り県道12号で国道20号に復帰。途中、道の駅 はくしゅうで1時間半ほど休憩する。午前9時半、茅野方面へ出発。

茅野から飯田へ ビバ!土建王国長野

茅野から国道152号に入る。いきなりきつい上り坂が続く。枝突峠である。工事のため片側交互通行になっている箇所があったが、それ以外は特に狭い場所もなく快適に走ることができた。枝突峠を越えると高遠町である。茅野側で一気に稼いだ高度を徐々に吐き出してゆくような長い下り坂が高遠の市街地まで続く。高遠は城下町らしく少し道が入り組んではいるが、道案内がきちんとしているので迷うことなく街を抜けることができた。市街地から先の国道152号は工事中で、迂回路の長野県道211号に入る。美和ダムの手前で国道152号に復帰して長谷村に入り、しばらく美和湖沿いに走る。美和湖が途切れるあたりで南アルプス林道入口の看板があった。いまひとつ納得できないが、これをもってアルプス三段越えの第一段を終了したことにする。

美和湖を過ぎるとセンターラインが消え、道が狭くなる。このあたりでだんだん車のスピードが落ちてきたので慌てたが、単に坂道に差し掛かっていただけであった。いよいよ中沢峠、そして分杭峠である。道幅は狭いが対向車がこないのでそれほどに苦にはならない。長野県道49号との分岐点、中沢峠で休憩。高速道路の案内があまりにも不釣り合いである。

中沢峠
中沢峠

分杭峠を抜け、大鹿村へ。道幅は広くないが、対向車がないので運転は楽である。枝突峠と同様、分杭峠で稼いだ高度をゆっくり吐き出してゆくような長い下り坂が続く。途中、「中央構造線北川露頭」なる看板があった。さらに走ると人家が現れ、センターラインも復活。大鹿村の中心部に到着した。ここから長野県道22号へと入る。

数分走ったところで前方を走るダンプに追いつく。県道22号はところどころ拡幅工事中で片側交互通行となっているが、誰も信号を守らない。交通量が少なく地元の車ばかりなので、あうんの呼吸でなんとかなっているのだろうか。ダンプの後について走っていると、県道59号との分岐点に出た。どちらでも飯田方面に抜けられるのでどっちに進むか迷うが、ダンプが県道59号を行くようなので、別れられるならと県道22号に進む。しかしこれが罠だったのだ。

県道22号はすれ違い困難な狭い道で、見通しがよくないカーブが延々と続く。勾配もきつい。それでも、ここまで来たときの状況からどうせほとんど対向車なんかないだろうと考えていた。ところが、次から次にダンプがやってくるのである。カーブのたびにダンプに出会い、こちらが下がって道を譲る。せめて連続してやってきてくれればいいものの、数分おきに現れるので始末がわるい。松川町に入り生田地区付近まで抜けると、センターラインが現れまともな道路になった。ただし、次々にダンプがやってくることには変わりがない。

あくまで推測であるが、どうやらこういうことらしい。大鹿村でなんらかの工事をやっていてダンプが頻繁に出入りしている。で、県道22号、県道59号ともに道幅が狭くすれ違い困難なため、飯田方面から大鹿村に向かうダンプは県道22号、帰りのダンプは県道59号と使い分けている。それならば県道22号と県道59号が合流した後の部分から先に拡幅工事をしていたのも納得がゆく。もしそうだとするなら、道の入口にそのような表示をしておいてもらいたいものだ。

そんなことを考えているうちに、ようやく長野県道18号に出た。千代駅のある飯田方面へとハンドルを切る。県道18号に出ても、飯田市街に抜ける道と合流するまでダンプの嵐はひたすら続くのであった。

千代駅を探して 日本一小さな(推定)駅前広場

そのまま県道18号で飯田へ。目指す千代駅は飯田市の南の外れなので、飯田市街には入らずにひたすら南へと向かう。千代駅は天竜峡駅のひとつ隣の駅だということは事前に調べておいたので、とりあえず「天竜峡」の看板を目印に走る。やがて県道18号が終わり、国道256号を経て、千代駅のある飯田線と並走する長野県道1号に入る。並走といっても県道1号から飯田線はほとんど見えないのだが。

天竜峡のあたりから道がよくわからなくなってきた。天竜峡への道案内はいっぱいあるのだが、それ以外の案内がいまひとつのような気がする。それでもなんとか県道1号を外さずに走っていたが、いつの間にやらセンターラインが消えてしまった。それに距離的にもいいかげん天竜峡駅の次の駅があってもいいはずなのに、案内のひとつもない。おかしいなあと思いつつ進んでいるうちに、泰阜村に入ってしまった。千代駅は飯田市内のはずである。それでもあきらめずに進むと、「金野駅」の案内が出てきてしまった。金野駅は千代駅のさらに次の駅だから、明らかに行き過ぎである。

行き過ぎてしまったとはいえ、少なくとも天竜峡からここまでのどこかに駅への入口があるはずである。こんどは見落とすまいとスピードを落として引き返す。あれ、天竜峡駅まで戻ってしまった。こんなときは落ち着いて考えようと、いったん車を止めて地図を見る。最寄りの集落は下村というらしい。再び県道1号へ。さっき通ったときにほとんど交通量がないことがわかったので、さらにスピードを落として進む。すると「ちよふるさとマップ」なる観光案内板が目に入ったので、車を止めて見てみることにした。

ちよふるさとマップ
ちよふるさとマップ

近づいて見てみると「千代駅」の文字があった。ようやく手がかりを得た。

ちよふるさとマップ(拡大図)
ちよふるさとマップ(拡大図)

「ちよふるさとマップ」にしたがって細い道を入っていくと、道路沿いに「千代駅」の案内標識があった。さらに細い道を入っていくらしい。

千代駅入口
千代駅入口

案内標識
案内標識

千代駅の方はともかく、もう一方の行き先が泰阜(隣の村)ということは、この細い道は県道1号の旧道なのかもしれない。それなら新道をつくったときに案内標識を移せばよいのにと思ったが、地元の人しか利用しない駅なら不便はないのだろう。

さて、案内標識にしたがって千代駅に向かおうとしたが、舗装はされているものの道幅がとてつもなく狭い。対向車がきたらアウトである。進入をためらっていると、1台のジムニーがその道に入っていった。ということはなんとかなるに違いない。そう考えて後について行くことにした。道路沿いに家が見えたので、いざとなれば庭先を借りれば転回できるだろうとの甘い考えもあった。

千代駅への道
千代駅への道

しかし、少し進んで行くと人家がなくなってしまった。周囲は木々が生い茂っている。ジムニーの姿も見失い、不安になってきたところに「発破予告」なる物騒な看板が現われた。なんかヤバそうな雰囲気なので、少し道が広いところで無理矢理転回して引き返した。

発破予告
発破予告

転回した場所は川沿いの崖の上で、ガードレールもなにもない。失敗したら崖下へまっさかさまである。ところが、転回している最中にさっきのジムニーが戻ってきて、目の前に駐車されてしまった。このジムニーは発破作業の現場にやってきたらしい。泣く思いで転回を終え、来た道を引き返す。広い道路まで出たところに車を置き、徒歩で再挑戦することにした。すると、車では気がつかなかったが、途中にこんな分岐があった。

千代駅への分岐
千代駅への分岐

写真の左側の太い道路(あくまで相対的に)がついさっき車で進入して挫折した道である。ということは千代駅へ通じる道は右側の細い道しかない。本当にいいのだろうかと不安に思いながら急な坂道を下って行く。すると架線が見えた。確かに駅がある。その向こうには天竜川も見える。

天竜川と飯田線
天竜川と飯田線

こうして、やっとの思いで千代駅に到着。もちろん無人駅である。駅の中心付近に115kmのキロポストがあった。起点の豊橋から意外に近い。待合室の時刻表で列車がこないことを確認し、遠慮なく写真を撮る。

千代駅 駅名標
千代駅 駅名標

115kmのキロポスト
115kmのキロポスト

よく見ると、下りてきた道とは別な道路が駅に通じているようだ。こちらの道路の突き当たりは駅前広場となっている。自転車置き場もある。あとはバス乗り場とタクシー乗り場があれば完璧なのだが、そんなものありゃしない。

千代駅 駅前広場
千代駅 駅前広場

千代駅 自転車置き場
千代駅 自転車置き場

それにしても、この道路はいったいどこに通じているんだろう。こんどはこの道を上ってみる。かなりきつい上り坂である。坂道を歩くこと数分、さっきのジムニーがいた。なんのことはない。最初に車で進入した道路はきちんと千代駅に通じていて、ジムニーはここで転回して戻ってきたのである。この事実が判明したら急に気抜けしてしまい、車に戻るころにはへろへろになっていた。

アルプス三段越え 第二段 中央アルプス 大平街道

県道1号を飯田市街方面へと戻る。来た道をただ戻るのも芸がないので、天竜川を渡って国道151号に出る。次の目標はアルプス三段越えの第二段、中央アルプス越えである。このルートには有名な長野県道8号(大平街道)を選んだ。県道8号は飯田駅前の交差点からスタートするので、市内の案内を見ながらま飯田駅を目指す。

県道8号の入口はすぐに見つかった。飯田線の踏切を渡るあたりからひたすら上り坂である。人家がある間は比較的ゆるい坂道だったのだが、山に差し掛かると勾配がきつくなりカーブが連続するようなった。行楽シーズンということで多少混雑しているかもと考えていたのだが、予想に反してそれほど対向車はない。たまに対向車があるものの、すれ違い困難というわけではない。やや狭い場所もあるが、基本的にかなり先の方まで見通せるので、対向車が見えたら広い場所で待機してやり過ごせばよい。道路はきちんと整備されていて、途中にある滝には名前を書いた看板が立てられている。峠を登って行くにしたがって多少見通しがわるくなるが、それでもゆっくり走れば問題ない。飯田峠のトンネル前で車を止め、ちょっと休憩。

飯田峠
飯田峠

飯田峠を越えるとすぐに大平宿に到着。車が数台止まっていたが、それほど人の姿は見かけなかった。大平宿をひととおり散策し、南木曾方面へと走り出す。やはりそれほど交通量はない。大平峠を越えたところに茶屋があった。結構繁盛しているようだ。さらに進むと道路工事のため片側交互通行になっていた。周りの景色はよいがなんともさびしい工事現場である。南木曾側のほうがカーブがきついような気がするが、下り坂の方ほうが運転が難しいのでそう感じるだけかもしれない。ほどなく国道256号へと出た。

国道256号を西へ向かう。久々にまともな道路を走るような気がする。妻籠宿を抜けて国道19号へ。名古屋方面へとハンドルを切る。道の駅 きりら坂下で休憩。駐車場はほぼ満車だった。だいぶ走ったような気がしていたが、よくよく考えたらまだ名古屋の手前であることに気がついた。先は長い。

中津川から岐阜、米原を経て敦賀へ

国道20号を中津川方面へと向かう。もういい加減疲れてきた。このあたりのルートは事前に調べてこなかったので、どうしたもんだかと考えながら走る。だが、地名がさっぱりわからないので手の打ちようがない。ひとつだけいえるとすれば、間違ってもこのまま名古屋市内に突入するのだけは勘弁してほしいということである。というのも、名古屋は運転が荒くて怖そうだからだ。

国道20号と並走する中央本線を見ながら考える。このあたりは単線なんだとどうでもいいことに感心。そういや中央本線から高山本線に抜ける鉄路(このときは失念してたが太多線)があったようななかったような。ということはどこかに岐阜方面に抜ける道があるだろうと楽観的に考える。しかし、なかなかそれっぽい道路は見あたらない。名古屋は近づく一方だ。

土岐市内で国道19号と別れ、国道21号へ。これで岐阜方面に行けそうだ。すいていてなかなか快適である。御嵩町から鉄道と並走するようになったが、JRではなく名鉄っぽい(後で調べたら名鉄広美線とのこと)。まあ、結果オーライということで。木曽川を渡るあたりから急に混みだした。時間は午後5時をまわっている。周囲もだんだん暗くなってきた。

岐阜から先はあまり大きな街を通りそうにもないので、多少早いとは思ったが各務原で給油する。岐阜からは片側二車線の立派なバイパスとなる。岐阜の夜景がなかなかいい感じである。大垣を過ぎるとまた片側一車線の道路に戻り、関ヶ原付近からは上り坂になる。いつの間にか東海道本線やら名神高速道路が並走している。そうか、東海道本線から見える道路はこれだったんだ、と妙に感激する。やたら感情が高ぶるのは疲れている証拠でもあるのだが。

国道8号との交差点にぶつかったのは午後7時であった。ここから素直に敦賀方面へ向かえばいいものの、余計な考えが頭に浮かぶ。

「ここから国道1号との合流点まで走っておけば国道8号をコンプリートできる。いや、ここで走っておかないと絶対に後悔する」

というのも、新潟(起点) - 敦賀(国道161号との合流点)間は以前に走破済みだからだ。ここで敦賀方面に向かってしまうと、中途半端に未走破区間が残ってしまう。

こうして、敦賀方面に向かう右折レーンに入らず、大津方面に向かってしまったのである。いや、それはいい。問題はそこからである。いつまでたっても国道1号と合流しない。行けども行けども「大津○○km、京都××km」の案内ばかり。

彦根、安土、近江八幡…やばい、これは今日中に美浜に着かないぞ…野洲、守山…もういい、大津でも京都でも行ったれと思い始めたころ、ようやく国道1号と合流する栗東に到着。徹夜の疲れと相まってナチュラルハイ状態に陥っているのが自分でもわかる。栗東市内でUターン。例によって「一度通った道を二度通るなど言語道断」の精神に乗っ取り、守山から滋賀県道2号で米原方面へと戻る。彦根で国道8号へ復帰し、琵琶湖東岸に沿って北上開始。

長原、木之本と快調に飛ばす。もう夜も遅いせいか車の数は少ない。北陸自動車道の木之本ICを過ぎると街の灯りもだいぶ少なくなった。午後11時頃、国道161号との合流点へ到着。これで国道8号コンプリート!ナチュラルハイ状態ここに極まれりといった感じであるが、喜んでいるのもつかの間、すぐに敦賀市街へと入る。敦賀からは国道28号金山バイパスで美浜町へ。美浜到着が午前0時前。さっそく写真を撮ろうと思ったが、こんな時間にフラッシュを焚いているのを見つかったら面倒なことになりそうなので、撮影は朝まで待つことにした。

そういうわけで今夜の寝床を探す。寝床といっても車中泊なので、車を止める場所を探すだけだ。しばらく美浜の海岸沿いをうろつくが、なかなか適当な場所が見つからない。しかたがないのでいったん敦賀市内へと戻る。敦賀原発の方向に向かうと気比ヶ浜というところにちょうどよい駐車場が見つかった。後部のシートを倒して就寝スペースを確保し、毛布をかぶる。目覚ましをかけるのを忘れたがまあなんとかなるだろう。疲れが一気に吹き出し、すぐに大爆睡モードに突入してしまった。

美浜駅へ 完成!美浜ちよ

朝7時半に起床。思ったよりも早く起きることができた。海岸に出てみると釣りをしている人がいる。しばらく浜辺をぶらぶらし、目が覚めたところで出発。ちょっと遠回りになるが、敦賀半島を横断する福井県道33号で美浜に向かう。馬背峠を越えるとすぐに美浜側の海岸に出た。敦賀側の海はおだやかだったが、美浜側は少々波が荒い。海岸線に沿って15分ほど走り、美浜駅に到着。千代駅と違って有人駅なので勝手にホームに出るわけにはいかない。写真を撮ろうとするとちょうど列車がやってきたので、ついでに撮影。小浜線は電化工事の最中らしく、架線を支える柱が線路沿いに設置されていたが、まだ架線は張られておらず工事は完了していないようだ。

美浜駅 駅舎
美浜駅 駅舎

列車が過ぎ去ったところで、目的の駅名を撮影。これにて「美浜ちよ」の完成である。

美浜駅 駅名標
美浜駅 駅名標

さて、あとは帰るだけだ。北アルプスを越えて。

敦賀から大野へ 国道476号

無事に撮影を終えたので、敦賀市内へと引き返す。こんどは金山バイパスを通らず、関峠を越える丹後街道を通る。峠といってもそれほどきついわけではなく、峠付近までは小浜線と並走する。敦賀から国道8号で福井方面へ。目指すはアルプス三段越えの最終段、安房峠である。基本的には福井から国道158号を松本まで進めばよいことはわかっているのだが、それだけでは面白くないので武生から福井県道2号へで池田町へ入り、そこから国道476号で大野へと向かうことにした。大野市内で国道158号に合流できる。

県道2号は交通量もほとんどなく、快調に進む。今立町内ではわかりにくい交差点が数箇所あったが、落ち着いて道案内どおりに進めば問題ない。山が迫り人家が途切れると、坂道とカーブが連続する山道になる。坂を登りきって清水谷トンネルを越えると池田町に入った。そのまま道なりに進み、国道476号との交差点に出る。左へハンドルを切り大野方面へと向かう。少し走ると美山町に入り、再び県道2号と国道476号の分岐点に出た。直進が県道2号で、右折して橋を渡ると国道476号である。国道476号には大型車進入禁止の表示がある。直進するとすぐに国道158号に出ることは明らかなのだが、ここはあえて国道476号を進む。

橋を渡ってからしばらくは集落が続くが、またもや山に差し掛かると人家がなくなり、さらに「長さ8m以上の車両進入禁止」の表示がある。幅制限はよくあるが、長さ制限とは珍しいような気がする。まあ、普通の車なら問題ないはずなので遠慮なく進入する。すぐにセンターラインが消滅するが、それほど狭い道路ではない。と思っていたのも束の間、徐々に道が細くなって行く。それでも、普通車同士なら場所を選べばきちんとすれ違いはできる。途中で軽トラックとすれ違い、道を譲ってもらった。周りは木に囲まれており、それほど見通しはよくない。程なく峠の頂上へ。頂上にはトンネルがある。

丁トンネル(美山側)
丁トンネル(美山側)

美山市街
美山市街

トンネルを抜けると眼下に大野市街が一望できる。

丁トンネル(大野側)
丁トンネル(大野側)

大野市街
大野市街

付近の風景を堪能したあと、山を下り始める。美山側と同様、大野側の道も狭い。だが、美山側は道路の周囲を木々で囲まれていたのに対し、大野側は道路の端が切り立った崖になっており、一歩踏み出せば崖下に転落するような道である。しかもガードレールがない。まるで防波堤の上を走っているようだ。いや、防波堤には急傾斜やヘアピンカーブはないのでこっちのほう酷い。とはいえ、そのような区間は頂上付近のほんの一部で、少し下ると周囲が木に覆われるようになる。だいぶ下りてきたところでこんどは「大型車出入口あり」の表示が現れる。こんな狭いところでダンプがきたらたまらんと不安になるが、幸いなことに対向車が現れることもなく、麓まで下ることができた。

大野から高山へ 大渋滞の高山市街

国道158号に合流し大野市街へ。まだガソリンは半分ほど残っていたが、高山まで大きな街がなさそうなので大野で給油する。伝票によると午前11時23分。給油後、国道158号を九頭竜湖へと向かう。九頭竜湖へと通じる道はよく整備されており走りやすい。この日はツーリングのバイクがたくさんいたので、所々でバイクに道を譲りながら走った。

馬返トンネルを抜け、仏原ダムを過ぎると和泉村に入る。越美北線の終点、九頭竜湖駅の側を通過するとすぐに九頭竜ダムがあり、ここからは九頭竜湖の北岸に沿って走る。ダム湖が途切れると油坂峠に差し掛かる。峠には油坂峠道路という有料道路があるが、そんなお金はないので国道158号を進むことにする。将来的には油坂峠道路は中部縦貫自動車道の一部となるらしい。油坂峠道路との分岐点からはセンターラインがなくなる。しかし、道幅はそこそこ広く舗装もしっかりされているので走りやすい。途中からセンターラインが復活。峠の頂上にはトンネルがあった。

油坂トンネル
油坂トンネル

白鳥市街
白鳥市街

トンネルを抜けると岐阜県郡上郡白鳥町に入る。かなり強引に山の斜面を下って行き、最後は無理やりな感じの空中ループで麓に到着。下から見上げると、油坂峠道路の白鳥西ICと国道158号が空中回廊を形成している。さらに街を挟んで反対側には東海北陸自動車道の白鳥ICもあり、初めて見た私にはなにがなんだかよくわからない状態である。

白鳥町から荘川村までは国道156号との共用区間となる。並走する長良川鉄道のローカルぶりと周囲の立派な道路のコントラストがなんともやり切れない気分にさせてくれる。白鳥町から高鷲村に入り、蛭ヶ野高原へと上っていく途中で、前を走るダンプのおかげで渋滞気味となった。だが、ダンプはすぐに途中の工事現場へと入っていったので、そこから先は快適に走ることができた。荘川村で国道156号と別れ、高山方面へ。

東海北陸道の飛騨清見ICまでは順調だったが、ここで渋滞につかまった。現時点では東海北陸道はここで終点なのである。大型の観光バスがやたらと多いことから、観光客で混雑しているのであろう。渋滞はだんだんとひどくなり、高山の街が見えてきたあたりからさっぱり動かなくなった。しびれを切らし、よくわからない市道で高山市街に突入。そこまではよかったが道に迷ってしまい、結局高山市街を一周して国道41号との交差点から国道158号に復帰。しかし渋滞は相変わらずである。古い街並みはいいのだが、そのぶん道路が狭く、また迂回路もないのでいかんともし難い。2時間近くかかってようやく高山を抜けた。

これで一気に安房峠に突入と思いきや、丹生川村に入ってまたしても渋滞につかまる。反対側の車線はほとんど車が走っていないので工事か事故なんだろうと見当はつくが、まったく状況が掴めないのでだんだんいらいらしてくる。中にはUターンして戻っていく車もある。さらには無理やり反対車線の車を止め、状況を聞き出している人がいた。気晴らしにラジオをつけると地元のラジオ局の放送が入った。たまたま道路情報の時間になり、乗鞍スカイラインは濃い霧のため注意してくださいとのこと。だが、この渋滞に関しての情報はない。ますますいらいらが募る。すると遠くのほうから救急車のサイレンが聞こえてきた。どうやら事故だったらしい。

渋滞にはまること数十分、ようやく事故現場が見えてきた。現場は片側交互通行になっている。事故車両はまだそのまま残されており、一方はタクシー、もう一方はスポーツカーであった。スポーツカーがセンターラインをはみ出し、タクシーと正面衝突したようである。タクシーはボンネットがややへこんでいる程度であったが、スポーツカーは運転席のほうまで潰れている。事故現場を抜けるとこんどは反対車線が大渋滞を起こしている。

事故現場を抜けたのは午後4時10分頃だった。つけっぱなしだったラジオからまた道路情報が入る。こんどはこの事故についての情報があったが、もう遅いって。

アルプス三段越え最終段 北アルプス 安房峠

これまでの遅れを取り戻すかのように、皆かなりのスピードで走っている。あっという間に平湯峠へ。周囲はだいぶ暗くなってきた。本当はトンネルを使わずに峠を抜けたかったのだが、このままだと安房峠に着く頃には真っ暗になってしまいかねないので、しかたなく平湯トンネルを使う。トンネルを抜けて坂を下ると平湯温泉である。いよいよアルプス三段越え最終段、安房峠に入る。もちろん安房有料道路は使わず、旧道を行くことにする。

平湯温泉から急勾配を上っていく。道の周囲は木々に覆われていて遠くは見渡せない。道はそれほど狭くなく、すれ違いが困難になることもない。思っていたよりもに交通量が多い。物好きなのか、それとも安房有料道路にお金を出すのがいやなだけなのか。峠が近くなると周囲が開け、山の斜面に沿って走ることになる。はるか下に平湯温泉が見える。峠に近い駐車場には数台の車が止まっており、景色を楽しんでいる人達がいた。意外にあっさりと安房峠へ到着。

安房峠
安房峠

峠の茶屋跡に車を止め、記念撮影。しばらく観察していると、峠で車を止め景色を見てから立ち去る人が多い。やはりもの好きが多いということか。

岐阜県側
岐阜県側

安房峠
長野県側

午後5時を過ぎ、本格的に暗くなってきたので急いで出発。長い下り坂である。岐阜県側と同様、長野県側も峠付近は周囲がよく見えるが、下るにつれて周囲を木々に覆われるようになった。それと同時に折り返すようなきついカーブが連続するようになる。たまに人が歩いているので油断できない。それどころか、中ノ湯温泉付近までくると数台の車が止まっている。登山客なのか山菜取りにきた人なのかは知らないが、こんなところで路上駐車に出会うとは思いもしなかった。

さらに下ると上高地へ向かう長野県道24号との交差点へ。またもや大渋滞が始まった。ここからはトンネルやら洞門が連続するのでラジオも満足に聞けない。渋滞の列が動き出すたびに、頼むからトンネル内で止まらないでくれと祈りながら進む。少し道路の両側が開けたと思ったら沢渡に到着。ちょうど登山客が帰るピークの時間帯を迎えたのか、沢渡の駐車場から出る車で混雑している。

長野県道26号との合流点から島々までは流れがよくなったが、松本電鉄の新島々駅のあたりが再び混み出す。どうも松本市内まで延々と渋滞しているらしい。どこか迂回路はないものかと地図を見たところ、長野県道25号「日本アルプスサラダ街道」で塩尻方面へと抜けられそうである。サラダ街道は最初のほうこそ人家の間を縫うように走る狭い道であったが、人家が途切れると畑(だと思う。暗くてよくわからなかった)の中を直線的にぶち抜く道路に変貌した。そのため調子に乗って飛ばしすぎ、いつの間にやらサラダ街道を外れてしまった。完全に現在位置がわからなくなってしまい、途方に暮れながら走ってると、塩尻のだいぶ南のほうで国道19号へと復帰できた。

この後を考えなければならないので、とりあえずの座標原点とするべく塩尻駅を探す。20分ほど塩尻市内をさまよい、なんとか塩尻駅に到着。途中の渋滞やらですっかり忘れていたが、これにてアルプス三段越え完了である。

塩尻からの帰路 当初の予定はどこへやら

当初は松本から高崎方面へと抜けるつもりだったが、勢い余って塩尻に出てしまった。予定よりだいぶ南である。となると必ずしも高崎に抜ける必要もない。まずは長野県から関東平野に出るルートを列挙してみる。

まず中津川林道は夜間通行禁止なので却下である。国道254号は有料道路があるので却下。かといっていまさら国道143号を越える元気はない。十石峠、田口峠、ぶどう峠はいずれも夜中に一人で行くところではないので却下。だいたい、十石峠って通行可能なのかどうかもよくわからない。内山峠が一番現実的で早いのだが、内山峠は幾度も通ったし、それよりも走り屋がいて怖そうなので却下。全滅である。

冷静になってみると、塩尻まで来たからには山梨県を抜けるほうが素直である。この場合は国道20号で山梨入りとなるので、例の「一度通った道を二度通るとは言語道断」の教えに抵触してしまうがしかたがない。山梨県から関東平野入りできる道を並べてみると、

国道20号はなんとしても避けたい。雁坂峠は有料なので却下である。国道411号、すなわち青梅街道は間違いなく走り屋が結集しているので却下。国道139号も奥多摩町からは青梅街道を通るので同様に却下。残る選択肢は山梨県道33号と神奈川県道522号だが、神奈川県道522号はあまりにも怪しすぎるので山梨県道33号で帰ることにした。

決まったところで国道20号を甲府方面へ。塩尻峠を越え岡谷に入り、下諏訪、諏訪、茅野と国道20号を進んでゆく。上諏訪駅の前後で中央本線の踏切を渡る。こんなところで踏切とは意外である。しかもきっちり引っかかって長いこと待たされる。

第三甲州街道踏切
第三甲州街道踏切

茅野市内で1日半ぶりに国道152号との交差点に出て感慨にふける。同時にここから重複区間の始まりである。鳥坂センパイに心の中で謝る。道の駅 信州鳶木宿で休憩。そういえば大野を出てからほとんど休んでいない。ここには温泉が併設されており、夜10時まで入浴できる。時計を見ると9時を少しまわったところで、せっかくなので入っていくことにした。入浴料400円は安い。30分ほどお湯につかったらだいぶ疲れがとれたような気がする。午後10時前、甲府を目指して再び国道20号へ。

甲府バイパスを快調に飛ばす。甲府で再び給油。交通情報によると中央自動車道は混んでいるらしいのだが、国道20号を走る車は少ない。あっという間に勝沼を過ぎ、大月、上野原と進む。上野原町の中心部から山梨県道33号へと入る。山の斜面をうねうねと上ってゆく。思ったよりも人家が多い。気がつくと後ろからヤンキー仕様っぽい車がやってきた。なんとなく嫌なので大人しく道を譲る。人家が途切れるととたんに道が狭くなった。

午前0時ちょうどに山梨県と東京都の県境、甲武トンネルに到着。トンネルの入口付近にある駐車場には既に5、6台の走り屋っぽい車が待機しており、さっき道を譲った車もそこに合流している。連中が走り出したらたまらないのでさっさとその場を立ち去る。向こうも一般車がいなくなるのを待っているだろうし。

トンネルを抜けると東京都西多摩郡檜原村だ。急カーブが連続する坂を下ると交差点に出た。もうどこを走っているのかよくわからなくなってきたが、五日市方面へとハンドルを切り、秋川渓谷に沿って走る。途中2回ほどあっさりと後続車に追いつかれ、そのたびに道を譲る。村とはいえ東京都なのだからもう少し開けているかと予想していたのが、思っていたよりずっと山深い。やっとのこと人里までたどり着くと、ようやく一般車の姿も見えるようになった。そんなこんなで五日市駅前へ。五日市からはただひたすら青梅方面へ進む。ほかに走っている車はほとんどない。青梅までは簡単に出ることができた。青梅市内で青梅線の踏切に引っかかる。時計を見ると午前1時をまわっている。時間から考えると終電っぽい。

さて、青梅からどうするかである。このまま青梅線に沿って福生に向かえば国道16号に出るが、それではあまりにも面白くないし、できる限り往路との重複は避けたい。というわけで青梅から飯能へと抜けることにした。東京都道28号で飯能を目指す。だが、なにかおかしい。どんどん山奥に進んでいるようだ。さらに進むと、直進は名栗という案内…って、いくらこのあたりの地理に疎いとはいえ、名栗村はまったく方向が違うことくらいはわかる。慌てて適当な交差点で右折し、とにかく東と思われる方向に進む。しばらくしてようやく街が見えてきた。飯能である。飯能市内に入ったまではよかったものの、ぜんぜん街中にたどり着けない。かなり迷ったがなんとか国道299号を引き当てて入間まで進み、狭山で国道16号に復帰。ここから先は来たときと同じ道だがほかにどうしようもない。というか早く帰って寝たい。

研究所への帰還は午前3時過ぎ。かくして「美浜ちよ」+「アルプス三段越え」の旅は終わったのであった。

[先頭に戻る]

Copyright (C) 2001-2024 烏合総合研究所