2003年4月19日。諸般の都合により茨城県日立市へとやってきた。それにともない国道6号を車で通勤することになったのだが、ある日、通勤途中にある案内標識の路線番号に気がついた。
県道61号。はてどこかで聞いたような。ああそうだ、笠間から常陸太田に抜ける道としてよく利用している茨城県道61号 日立笠間線ではないか。いつも笠間 - 常陸太田間しか利用していなかったので知らなかったが、こんなところに出るんだ。そのときはそう思っただけだった。
だが、それからしばらくして、あることに気がついた。河原子方面への交差点には県道61号の案内があるのに、なぜか常陸太田方面への案内はない。さては国道6号との重複区間でもあるだろうと思い、国道6号を南下してもそれらしいものは見当たらない。石名坂を下り、国道293号の交差点を越え、久慈川を渡ると東海村である。あれ?
おかしい、どこか見落としたかなと思い、Mapionで調べてみた。そして、いまさらであるが茨城県道61号 日立笠間線は、日立市 - 常陸太田市間がいまだに開通していないことを知ったのであった。
これは興味深い。というわけで、県道61号の未開通区間をこの目で確かめるべく、現地へ向かった。もはや旅ではないというツッコミはなしで。
2003年6月14日。土曜日である。前日までの雨が上がり、ときどき晴れ間がのぞく。私の県道61号に対する情熱が雨雲を追い払ってくれたに違いない。そう思い込みつつ、常陸多賀駅から塙山団地行きのバスへと乗り込む。バスは定刻通り8:35に発車。10分後には終点の塙山団地に到着。例によって乗客は私だけ。

常陸多賀駅
常陸多賀駅から歩いたところでたいした距離でもないのだが、せっかくなのでバスを利用してみた。ついでにいえば、終点まで行かずに途中で下りたほうが県道61号へのアプローチは楽なのだが、これもせっかくなので行ってみただけだったりする。塙山団地から歩いて戻り、県道61号へと向かう。

日立市大久保町
9:00頃、塙山団地を下りて県道61号に到着。ここから未開通区間を目指して出発である。思ったほど道幅は狭くない。主要地方道としてはお世辞にも広くないが、ダメ県道としては普通のレベル。背が高い杉林の中を進むので薄暗い。花粉症の人にはお勧めできない。この先に病院があるせいか、途中で数台の車に追い抜かれる。
病院へ向かう道との分岐を過ぎて間もなく、路面に砂利が増えた思ったら建設中の橋が現れた。片側交互通行ということで信号がある。残念ながら歩行者用通路はなさそうなので、青になるのを待って進む。もっとも、車の気配などまったくないのだが。

塙山橋(建設中)
建設中の橋をくぐると常磐自動車道が現れる。ちょうど日立トンネルと大久保第一トンネルの間をくぐり抜けることになる。

常磐自動車道
県道61号から常磐自動車道までは意外に近い。その気になれば歩いて登れそうだったが、通報されたら洒落にならないのでやめておく。
常磐自動車道を過ぎると比較的急な坂が続く。気がつくと道沿いの電線がなくなっていた。その代わりに森林管理所の看板が出現。もはやほとんど林道である。
そしてついに未舗装になる。心なしか路面の石が白い。

未舗装路開始地点
未舗装になっても勾配は続く。まだ歩き始めて15分くらいしか経っていないのだが、かなり体力を消耗したような気がする。しかし、しばらく歩くと、そんな気分を一発で吹き飛ばす代物が目の前に立ちはだかった。

ゲート(日立側)
ちょっと待て、ここは県道ではないのでスか?Mapion、MapFan Webのどちらもそうなっていたような気がするのだが、私有地につき立ち入り禁止にしか見えない。この先、進んでよろしいのでしょうか?もしかしたら見てはいけないなにかが行われているのか?引き返すかどうか2秒ほど悩むが、そのまま突入。
ゲートを過ぎると物置小屋がある。その横に地図があるので現在位置を確認すると、林道という扱いになっているようだ。でもなあ、ここはまだ県道61号だよなあ。疑問を抱きながら歩く。すると、再び分岐に出た。

未開通区間への分岐
前述のMapionにしろMapFan Webにしろ、ここまでが県道61号のはずである。そして、左の怪しげな道が県道61号未開通区間のはずだ。だが本当か?またもや悩んでいると、右側の道からカブが現れた。ドライバーは立ち乗り状態である。思わず目が点になってしまった。
カブの親父に元気づけられたわけではないのだが、意を決して未開通区間へ。

未開通区間
うーん、本当にこれでいいのだろうか。不安だが前進あるのみ。ところが、周囲から人の声がする。え?私以外もこんなところに人がいるのか?山菜採りシーズンはとっくに過ぎているし、一体なにをしに?自分のことを棚に上げて不審に思ったりしたが、この声の主の正体はすぐにわかった。なんのことはない、彼らは風神山と真弓神社を結ぶハイキングコースを歩いているだけなのであった。そう、県道61号の未開通区間は、このハイキングコースと重なる区間があるのだ。
こうして、私が彼らに先行する形になったが、それはほんのわずかの間だった。突然、目の前で道がなくなってしまった。

行き止まり
いや、よく見ると数m下方に道が見える。ということは、ここを下りろということか?

急斜面
意を決して斜面を下り始める。周囲の木を掴みながら一歩ずつ確実に進むが、首から下げたデジカメカメラが邪魔でしょうがない。そうこうしているうちに先ほどの声の主たちに追いつかれた。彼らの会話が耳に入る。
「いやあ、ここもだいぶ固まって下りやすくなりましたなあ」
そうか、そうなのか?私にはとてもそうは思えないのだが。まあ、彼らも下りてきたということは、ここを下りるという選択は正しいようだ。追いつかれたところで軽く挨拶を交わす。そこで、彼らのひとりがなにげなく問い掛けてきた。
「今日はどちらからおいでになったのですか?」
さっきゲートを無理矢理越えてきたことが頭の片隅をよぎる。そこで、来た方向とは逆方向を答えておくことにした。
「真弓神社のほうから…」
「それにしては、ぜんぜんお会いしませんでしたな」
適当にごまかすが、まったく信用されていなかったような気がする。ちょっと気まずかったので、休憩ということにして彼らをやり過ごした。姿が見えなくなったところで出発。
私を追い抜いた人たちは風神山へと向かったが、私が向かう先は県道61号の常陸太田側である。先ほど下りたところから間もなく、常陸太田方面へと向かう道が分岐する。で、風神山へと向かう道はそれなりに整備されているのだが、常陸太田方面への道は草ぼうぼうのうえ、至る所にクモの巣が張り巡らされている。

雑草ラッシュ
拾った木の枝でクモの巣を払い除けながら進むが、油断した隙にクモの巣を顔一面に張り付けてしまった。
この道を通る者はほとんどいないらしく、クモの巣に加えてシダの葉が左右から迫る。倒木も多い。
それでも強引に進むと、ようやく車が通行可能な道路が見えてきた。未開通区間は抜けたらしい。

未開通区間の出口
あとはこの道を下りていけばいいだけだ。もはや迷子になることもあるまい。あっさりと未開通区間を抜けることができたので、やや拍子抜け。

未舗装路
太い道に出てから歩くこと5分、常陸太田市側にも立入禁止の文字がある。そのうえ、構内制限速度20km/hの標識まである。構内っていうからにはどこかの企業の私有地と思えるのだが、その一方で高鈴県立自然公園との表記もある。いったいどっちなの?

立入禁止の看板

県立自然公園の案内
この看板を過ぎるとすぐに石切場に出る。重機の類がなかったし、草が生え始めているので、現在は稼働していないのかも。ちょうどこのあたりで、初老の男性と行き違う。今回はよく人に会うなあ。

石切場
この石切場のところにもゲートがある。日立側が鉄骨のごついゲートだったのに対し、こちらはチェーンである。車両進入禁止とはなっているものの、明らかにゲートを越えて轍が続いている。頻繁な車の往来があるようだ。

ゲート(常陸太田側)
ここを過ぎると両側から山が迫る。昨日の雨で路面がぬかるみ、路肩のオオバコに泥が跳ねている。その様子から察するに、少なくとも数時間前に車が通ったようだ。
再び目の前が開けたと思ったら、道が分岐している。人里に出るならこちらのほうが近そうなのだが、「発破注意」とか物騒な看板がでているのでやめておく。そもそも、こちらは県道61号じゃないし。

発破注意
このすぐ先に、整備された石造りの階段がある。入り口には「真弓山登口」と刻まれた石が置いてある。明治廿一年と刻まれているようだが、風化が激しくはっきりとは読み取れない。
これでもうすぐ人里かと思いきや、未舗装道路は延々と続く。いい加減に飽きてきたのだが、まだ人家が現れる気配はない。ようやく電柱やガードレールが現れたものの、道はかえってぬかるみが酷く、とても歩きにくい。あまり日当たりがよくないうえに、車が泥をかき混ぜてくれているようだ。
未開通区間を抜けてから歩くこと約30分、ようやく舗装道路が現れた。途中、養鶏場らしき建物があり、そこの番犬に吠えられたりしてちょっとびっくり。

未舗装路終了地点
舗装区間に入ってからさらに10分ほど歩くと、ようやく平地に出た。田畑の中にぽつぽつと家が建ち並ぶ、茨城らしい風景にほっと一息。ここでようやく県道61号の路線番号標識が登場。

路線番号標識
そういや、どんな腐れ県道にでも路線番号標識が設置されている茨城県において、この県道は珍しくここまで路線番号標識がなかった。特に、日立市内の国道6号以西は、舗装区間にも路線番号標識がない。
ここから先、県道61号は亀作町内をくねくねと縫うように続いて行く。ところどころ車がすれ違い困難な区間も存在する。昔の街道にアスファルトをかぶせただけという感じである。

常陸太田市亀作町
塙山団地から歩くこと約1時間半、ようやく茨城県道156号 亀作石名坂線との交差点に到着。この交差点近くにある亀作神社前バス停からバスで帰宅しようと思ったが、15分ほどの差で大みか駅行きのバスを逃してしまった。次のバスは2時間以上待たねばならない。
反対方向の馬場八幡行きのバスに乗り、常陸太田駅に向かうことも考えたのだが、やはり待ち時間は30分以上ある。というわけで、真弓ヶ丘まで歩き、そこから大みか駅行きのバスで帰宅。
私が知る限り、県道61号の笠間 - 常陸太田間は、水郡線と交差する付近に狭隘区間を残すものの、ほぼ全線がセンターライン付きの立派な道路である。数年前までは、国道50号との交差点付近が狭かったが、ここも現在は改良されている。
それに比べて常陸太田市街 - 亀作間は極端に狭い箇所こそないものの、主要地方道としてはお世辞にも立派とはいえない。「ワンマンバスは後退できないのですれ違うときはそっちでなんとかせい」という趣旨の看板まで出る始末。山間部を抜ける道ならいざ知らず、ほとんど平地を走る道としては珍しい。
調べてみたら、県道61号の整備は緊急地方道路整備事業として数年前から進められているとのこと。現県道とは無関係に、日立市側からほぼ直線的にぶち抜いてしまうつもりらしい。そのため、現県道は改良せずそのままになっているのだろう。
だが、お約束の財政難でこの事業はちっとも進展していないようだ。トンネルが約半分を占めるとはいえ、5,540mで100億円って高速道路じゃあるまいし。しかも、トンネル部分は有料化って案があるようだが、そうなったら茨城県道156号 亀作石名坂線が大渋滞という結果に終わるような気がする。
とかなんとか偉そうなことをほざきつつ、亀作という地名を目にした瞬間、遺とか臭とか鬼とかを思い浮かべてしまった私は立派なダメ人間だということを白状して、本旅行のオチとしたいと思います。