未開通県道探索 茨城県道280号 南指原岩間停車場線

はじめに

2002年6月9日、私は国道355号を石岡から笠間方面へと自転車で北上していた。これといった目的地があったわけではなく、単にサイクリングを楽しんでいたのである。

岩間駅への入口を過ぎてしばらくすると、ある案内標識が私の目を引いた。

通行不能の案内標識
通行不能の案内標識

国道355号は幾度も車で通ったことがあり、このまま進んでも目新しい風景は期待できない。それならここで国道355号から離れ、未知の道路を走ったほうがおもしろそうである。しかも「通行止め」ではなく「通行不能」である。「あえて通行止めにはしないから、通れるもんなら通ってみろ」という挑戦状にも見える。

「せっかくだから、俺は通行不能を選ぶぜ!」

およそ1時間後、同じ道をすごすごと引き返す敗北者の姿があった。「通行不能」の案内標識に嘘偽りはなかったのである。

それから4か月が過ぎた。この間いたずらに時を過ごしたわけではない。情報を集め、装備も整えた。もう恐れることはなにもない。復讐の時はきたのだ。

「南指原岩間停車場線よ、私は帰ってきたぁぁぁっ!!」

残念ながら、核弾頭は装備していません。

茨城県道280号 南指原岩間停車場線

茨城県道280号 南指原岩間停車場線とは、茨城県道42号 つくば笠間線の道祖神峠を起点とし、笠間駅を終点とする県道である。国道355号の上郷入口交差点から岩間駅の間は、国道355号および茨城県道30号 水戸岩間線と重複する。

そのうち、岩間町長沢から道祖神峠までの約1kmが通行不能区間である。地図上はたいした距離ではなさそうだが、長沢側は直線距離約200mで標高差が100m以上もある急勾配になっている。

ちなみに、南指原とは道祖神峠から県道42号を笠間方面へ5kmほど向かったところで、終点の道祖神峠からはかなりの距離がある。

常井洋治 茨城県議会議員の公式ホームページによると、南指原岩間停車場線を開通させることが氏の悲願だそうである。平成13年2月には水戸土木事務所長を案内し、岩間町長らと山道を現地調査。後日、平成13年度に用地買収に入るとの報告を受けたとのこと。こりゃいかん、急がなければ復讐の機会を失ってしまう。

いざ!再挑戦

2002年10月18日、午前9時57分、岩間駅のホームに降り立つ。いよいよである。前回は自転車で失敗したので、今回は徒歩で挑むことにした。岩間駅から通行不能区間の開始地点までは勤務先の後輩に車で送ってもらった。

国道355号から分かれた南指原岩間停車場線はこのように立派な道路である。通行不能区間となる長沢地区までの約4kmは、ずっとこんな具合の道路が続く。

上郷入口
上郷入口

車なのであっという間に通行不能区間の開始地点に到着。手前にはこれでもかといわんばかりの表示がされているが、車が通行可能な幅が開けてある。

通行可能区間終点
通行可能区間終点

通行不能区間に入ったばかりの箇所は轍があるので車で通れそうな気がするが、とんでもない急勾配で普通の車での走行はまず無理だと思われる。軽トラックやジムニーでもたぶん無理であろう。


通行不能区間へ突入

50mほど進むと、道端に案内板が落ちている。普通こういうものは支柱にくくりつけられているものだと思うのだが、なぜかここでは地面の上に直に置かれている。埋もれていないところを見ると、誰かが時々手入れをしているらしい。

道案内
道案内

前日の雨のせいで路面がぬかるんでいて、とても歩きにくい。雨が降るとこの道は川になってしまうらしく、路面が深くえぐられてしまっている個所もある。

えぐれた路面
えぐられた路面

ひとつめの分岐に到着。しかし、どちらに進むべきかの案内はない。少し迷うが、地図を見て直進と判断、そのまま進む。念のため地形の簡単なスケッチとメモをとっておく。

分岐 その1
分岐 その1

岩が露出している。川底を歩いているみたいだ。

露出した岩
露出した岩

こんどは一変して雑草が行く手を阻む。頭の中を「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」がよぎる。だが、残念ながら先行するカメラマンも照明さんもここにはいない。ちなみに、前回はここで諦めて引き返した。ということで、ここから先が未知の領域だ。

雑草ラッシュ
雑草ラッシュ

雑草が増えてきた。さらにクモの巣が行く手を…っておい、最近ここを通った人間は誰もいないってこと?川口浩のテーマが消え、不安が頭をもたげてくる。拾った木の枝でクモの巣を払いのけながら進む。

さらなる雑草ラッシュ
さらなる雑草ラッシュ

それでもがむしゃらに進むと道が開けてきた。なんとかなりそうな雰囲気なので、そのまま先を急ぐ。すると再び分岐に出た。先ほどの分岐と同様、ここにも案内がない。しばし悩む。地図を見てもよくわからない。

分岐 その2
分岐 その2

というのも、分岐の具合が地図と一致しないのだ。地図によると、やってきた方向に対して直進が道祖神峠、右斜め前が笠間市古親田、右斜め後が金比羅山経由で笠間市南小泉となっている。しかし、現実の分岐は直進と左右のうえ、まともそうな道は直進だけだ。右は道に見えないこともないが、左はおそらく道ではない。

単純には、地図上の直進は現実の左、地図上の右斜め前は現実の直進、地図上の右斜め後は現実の右にそれぞれ対応すると考えられる。しかし、どうみても左は道ではない。現実的な選択肢は直進か右だ。

さらに考える。あやしげな右の道はどこに続くのか。もし金比羅山行きならここから上り坂の尾根道となるはずだ。だが、どちらかといえば下り坂に見える。それなら古親田行きか。いずれにせよ道祖神峠には向かわない。消去法的ではあるが、直進しかなさそうだ。

ここで頼みの綱、方位磁石を取り出して方向を確認する。直進の方角は西である。これで決まりだ。直進あるのみだ。

分岐からは猛烈な坂が続く。周囲の木々を手で掴みながら、強引に登っていく。

急勾配
急勾配

なんかおかしい。地図によれば、先程の分岐からはトラバース道のはずなのに、ひたすら急斜面を登り続けている。立ち止まって確かめたいが、あまりにも勾配がきつく、立ち止まることさえままならない。どうしようもないので行き着くところまで行ってみることにした。

すると突然目の前が開け、きちんと整備された道に出た。ハイキングコースのようだ。

ハイキングコース
ハイキングコース

道はまともだが、どこだここは?どっちに進めばいいんだ?地図を眺めながらこれまでの経緯を思い返してみる。ひたすら直線的に斜面を登ったこと、現在地は山の頂上らしいこと、ぶつかった道はハイキングコースらしいこと、これらを総合的に判断すると、いまいる場所は愛宕山ハイキングコースの難台山 - 道祖神峠間、428.5mピーク付近のようだ。

地図にない道を登ってきてしまったらしい。先程の分岐では右に進むのが正解だったのだ。斜面を泣きそうになりながら引き返す。当たり前だが、登るときよりも降りるときのほうが危険である。

やっとのことで分岐まで戻り、右に進む。たいして進まないうちに倒木に行く手を阻まれる。

倒木
倒木

一応道は続いているようだ。こんどは勾配もなく、山の斜面に沿って歩いていることが実感できる。こちらが正解だったらしい。

ふと足元を見ると自転車のタイヤの跡がある。比較的新しい。私以外にも物好きがいるようだ。

自転車の跡
自転車の跡

この道は山の北側斜面にあたり、日当たりがよくないせいか路面がぬかるんでいる個所が多い。生えている草の種類もこれまでとは違うようだ。気がつくとズボンの裾に植物の種がたくさん付着していた。

しばらく歩くとまたもや分岐に出た。案内板があるので見てみる。

分岐 その3
分岐 その3

案内板には表記されていないが、私がやってきた方向が長沢、左に曲がると難台山頂上であるから、直進が道祖神峠であることは間違いない。耳を澄ますと車やバイクの音が聞こえ、県道42号が近いことがわかる。道祖神峠まであと少しである。

道祖神峠の直前
道祖神峠の直前

目の前が明るくなってきた。あそこまでたどり着けば今回の目的は達成だ。出口にはゴールテープならぬ進入禁止のチェーンが張られている。ここで初めてようやく人とすれ違った。長沢からここまで、人の気配は全くなかった。

進入禁止のチェーン
進入禁止のチェーン

やっとのことで道祖神峠に到着。県道42号側から見るとこんな感じである。手前のセンターラインのある道路が県道42号。

茨城県道280号 南指原岩間停車場線 起点
茨城県道280号 南指原岩間停車場線 起点

長沢を出発したのが午前10時35分、道祖神峠に到着したのが午前11時45分である。1時間10分ほどかかったわけだが、途中で道を間違えなければ40分程度で済んだものと思われる。

帰途

道祖神峠から県道42号を八郷町方面へと下りていき、善光寺楼門の近くの公園で昼食とする。県道42号はよく車で通るが、このような文化財があることにまったく気がつかなかった。

そこから柿岡まで歩くこと2時間弱、午後2時過ぎに新宿バス停に到着。ちょうど2時17分発の石岡駅行きバスがあったので、それに乗り帰宅。ちょうどよい時間にバスがあって助かった。

おわりに

なにはともあれ、南指原岩間停車場線を踏破することができた。これでいつ舗装道路となっても心残りはない。できれば自転車で走破したかったが、素人には無理っぽい。それにしても、「通行止め」ではなく、「通行不能」という表現の理由がなんとなくわかったような気がする。

なお、2020(令和2年)1月現在、未開通区間は相変わらず未開通のままである。なんだかな。

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