令和元年台風第19号(以下、台風19号)は東日本の各地に甚大な被害をもたらした。当研究所が位置する茨城県水戸市もその例外ではない。那珂川、藤井川、西田川、田野川、涸沼川、石川川が越水または決壊し、その周辺で浸水被害が発生した。その中でも水戸市飯富町付近の浸水は広範囲にわたり、その衝撃的な映像はテレビ等で繰り返し報道された。
当研究所でも10月12日午前9時1分の避難準備・高齢者等避難開始準備情報、同午後4時1分の避難勧告(警戒レベル4)、翌13日午前3時27分と午前3時56分の避難指示(警戒レベル4)の緊急速報メールを受け取っていた。しかし、その後はなんの連絡もなく、台風一過の青空が広がっていたため、ここまでの被害が出ていたとは13日朝の時点では想像もしていなかった。
当研究所が事態を知ったのは10月13日の昼頃である。それまでは長野県での千曲川の氾濫の報道ばかりだったのだが、時間が経つにしたがってほかの被害もだんだん明らかになってきた。13日の午後には那珂川の被害も報道されるようになり、ようやくそのすさまじさを知ったのである。
2019年10月14日、被害状況をこの目で確認すべく現地を訪問してみた。
最初に訪問した場所は常磐自動車道が田野川を越えるあたりだ。ここは常磐自動車道に沿って国道50号と国道123号をつなぐ抜け道となっており、ふだんはそれなりに交通量が多い。
現地に到着してびっくり。なんと道が崩壊している。その先は浸水していて進めそうにもない。田野川の堤防は決壊しており、飯富町からあふれた水が流れ込んでいる。常磐自動車道の橋脚が露呈してしまっているが、損傷はなさそうだ。

浸水した道路

崩壊した道路

常磐自動車道の橋脚
あわよくばこのルートで飯富町に入れると思ったのだが、ちょっと甘かったようだ。無理に進むのも危険なので、ここはいったん引き返す。
田野町から歩いて次の場所へ。テレビ中継によく出てくるホームセンター山新 渡里店の近くだ。直線距離だと500mくらいしかないのだが、いったん浜見台通りの入口付近まで引き返さないとたどりけない。道のりにするとおよそ3kmだ。いっそのこと車を使おうかと思ったが、復旧作業の妨げになるといけないので、がんばって歩くことにした。
国道123号はビックマーチスロットクラブ 渡里店がある交差点から先が通行止めになっていたが、徒歩での通行は禁止されていなかった。明らかに野次馬な人々が次々に入っていくので、私もそれに続く。見た感じでは歩いてきた近所の方が多いようだ。思ったよりも若い人は少ない。上空をヘリコプターが飛び回っている。知人に確認したらちょうどNHKで中継中とのこと。
現場付近には日本テレビの取材陣がいた。幾度か録り直しをしていたので生中継ではないようだ。

国道123号

ホームセンター山新 渡里店

常磐自動車道 水戸北スマートインターチェンジ(上り)

日本テレビ取材陣
ホームセンター山新 渡里店はよく利用していたので残念だ。早く復旧してくれるといいのだが、この惨状を目にする限りなかなか難しそうだ。
渡里町から田野町へ歩いて戻り、そこから車で茨城県立水戸飯富特別支援学校を目指す。途中の田野市民運動場の自由広場には災害ごみが積まれていた。水戸飯富特別支援学校から少し離れたところに車を置き、水戸北スマートインターチェンジの下り線出入口を目指して歩く。
水戸飯富特別支援学校から坂を下ると、その先には驚くような光景が広がっていた。国道123号の旧道から先は完全に水没し、もはや海である。見た目だけではない。磯臭い匂いが鼻を衝く。これはたまったもんじゃない。フライングガーデン 水戸北IC店が屋根近くまで水没している。十字路の標識がかろうじて頭を出しているものの、もはやどこになにがあったのかさっぱりわからない。
遠くに目をやると水戸市消防本部 北消防署 飯富出張所と那珂川沿岸用水管理センターが見えた。写真ではかろうじて水没はしていないようだが、水位がもっと高かった時点では水没していたらしい。

常磐自動車道 水戸北スマートインターチェンジ(下り)

水戸市消防本部 北消防署 飯富出張所と那珂川沿岸用水管理センター
近くでは水が引いたあとの片づけをしていた。あまりにも気まずいのでこの場はすぐに引き上げた。
飯富町内を抜ける国道123号の旧道は通行できそうにないので、水戸飯富特別支援学校の前から高台を経由して水戸市立飯富小学校付近から国道123号に出る。城里町方面へは通行可能だったが、水戸市渡里町方面は通行止めだった。そこで、藤井川の堤防沿いに車を止め、周囲を歩いてみた。
第一揚水機場付近から集落を眺めてみる。国道123号と集落の間の田んぼは完全に水の下で、田んぼの中の建物は屋根しか見えない。そして、国道123号と旧道の交差点の近くにある第一揚水機場のあたりで水は止まっていた。

茨城交通 釜井戸バス停付近

第一揚水機場付近
上空を数多くの猛禽類が飛び交う。水没した田んぼから逃げ出した小動物を狙っているらしい。きっとそれが彼らの本能なのだろう。自然の営みに少しばかり感心しながらこの場を後にした。
浸水の状況を目にしてみて、あらためて災害の怖さを実感できた。特に常磐自動車道高架下の水の流れには恐怖を感じた。あれに飲み込まれたらたちまち流されてしまうだろう。そしてほぼ間違いなく助からない。ほかの現場は静水に見えただけに、激しい流れが印象に残った。
10月18日には国道123号の規制が解除され、交通量はほぼもとに戻った。しかしながら、水戸北スマートインターチェンジの閉鎖解除は12月2日までかかった。しかも暫定運用である。ホームセンター山新 渡里店の再開は2020年春の予定とのこと。フライングガーデン 水戸北IC店は閉店してしまった。車で通過するぶんには日常を取り戻したように見えるが、災害の爪痕はまだ深く残っている。
災害は身近で起こり得ることをあらためて認識させられた。当研究所でも他人事とは思わず、明日は我が身として備えておくようにしたい。