最初に断っておくが、私はバスファンというわけではない。鉄道、バスを含めた公共交通機関が好きなことは認めるが、深い知識があるわけではない。難しい話をされてもさっぱりわからないのであしからず。
私が小学生の頃、車よりも鉄道、バスといった公共交通機関を利用する機会が多かった。買い物、病院、はては友人の家に遊びに行くまで、自分の家の車よりもバスを使うほうが多かった。家が駅から近く、鉄道、バスともに利用しやすかったからである。そのため、母が免許を取ることもなかった。ただひとり運転免許を持っている父は日曜日しか家におらず、車を利用する機会を著しく減らしていたことも大きかった。このような環境で育ったため、小さい頃からバスに慣れ親しんできたのである。
中学生、高校生となるにつれてバスに乗ることはほとんどなくなったが、大学への進学をきっかけに東京へと出てきて、またバスを利用する機会が増えた。そんなある日、面白そうなネタを思いついた。
このままバスだけで帰省できないか?
もちろん、ここでいうバスとは高速バスのことではなく、いわゆる一般道を走る普通のバスのことである。東京から実家まで200km弱、自転車で帰省した猛者の話はちらほら聞くが、これはまだ前人未踏の偉業に違いない。それだけにやる価値はある。
だが、このネタが実行されることはなかった。当時はまだインターネットで情報収集というわけにはいかず、地方のバス路線を調べるには現地に赴くよりほかに方法はなかった。これは時間と金の問題で当時の私にはほとんど不可能といってよく、ルートを確立することができなかったのである。いきあたりばったりで挑戦することも考えたのだが、それはさすがに無謀と思われた。
そうこうしているうちに大学を卒業し、社会人となった。金と引き換えに自由な時間を失ったが、逆に時間ができたときにこのネタ旅行は実現させようと思っていた。だが、現実はそれを許さなかった。気がつくと、実家の周囲のバス路線はほとんど廃止、残された路線も実用的とは思えないほど減便されていたのである。日祝日は運行なしという路線まである始末。市内の隅々まで網羅していた路線図はだいぶすっきりし、かつて30分に1本程度運行していた市内縦断路線もなくなっていた。
それだけではない。私が住んでいる茨城県南部、関東鉄道のエリアでも確実にバスの本数が減りつつある。よく考えれば、筑波鉄道が廃止に追い込まれるほどマイカー依存が進んだ地域なのだ。まだ数多くの路線が生き残っているほうが不思議といってもよい。そして茨城県ばかりではない。日本中のバス路線が縮小傾向にある。
今後、バスだけによる旅行はますます難しくなってゆくだろう。やるなら今しかない。そして、どうせやるならなるべく盛大にやりたい。そこで企画したのが今回の旅である。小さい頃世話になったバス会社には、残念ながら一銭も入らないのだけど。
というわけで、路線バスだけを乗り継いで本州を横断しようというのが今回の旅である。本当は本州縦断ができると面白いのだが、さすがにそこまでの時間は取れないし、多分無理ということで本州横断に落ち着いた。本州横断といってもいろいろあるが、ここでは、自宅からなるべく近い茨城県の太平洋岸からスタートし、新潟県の日本海沿岸でゴールとした。
鉄道だったら、大型の時刻表さえあれば半日も経たないうちに計画ができあがるだろう。だが、今回はバスである。そんなにお手軽にはいかない。まずはじっくりと情報収集を行い、実現可能な計画を立てる必要がある。
その前に、大雑把ではあるが、いわゆる高速バスの利用は不可ということと、ある程度の徒歩移動は認めるということを基本的なルールとして定めた。
前者の高速バス利用不可は大前提である。そうしないと、東京から新潟行きの高速バスに乗るだけで終わってしまう。高速バスをどう定義するかは悩ましいところではあるが、ここではいわゆる「高速道路」(東名高速道路や首都高速道路だけでなく、名阪国道のような自動車専用道路も含めた総称)を路線の全部または一部として含めるバスとしておく。後者の徒歩はアバウトな概念なのだが、これは「バスだけ」というのを厳密にすると旅行そのものが不可能になってしまうのを避けるためである。例えばA駅南口で下車してA駅北口で乗車する場合、これらは厳密には違うバス停かもしれないが、この程度を歩いて移動するのは認めるというわけである。
さて、計画立案前からひとつの懸念があった。越後山脈をいかにして越えるか、すなわちどうやって新潟県と隣県との県境を越えるかである。新幹線やら高速道路が張り巡らされた現在ではピンとこないかもしれないが、一般道、それもバスが通行できそうな道路は、実のところわずかしかない。群馬県からは事実上国道17号のみ、長野県からは国道18号、国道117号、国道148号、国道292号、福島県からは国道49号、国道252号、国道352号、だいたいこれですべてだろう。
案の定、県境越えのバス路線は見つからず、ここは徒歩で妥協することにした。徒歩区間が最も短そうなのは法師温泉(群馬県利根郡新治村) - 浅貝上(新潟県南魚沼郡湯沢町)の約5kmである。これなら2時間くらいで歩けそうだし、気分的にも許せる範囲内である。上信越自然歩道と三国路自然歩道が整備されているので、狭い三国トンネルを徒歩で抜けるという荒業に出なくてもすむ。実は、この選択が後に一歩間違えば大惨事という結果を招くことになるのだが、このときはまったく想像もしていなかった。
この区間以外は、だいぶ苦労したもののなんとかバス路線をつなぐことができた。大竹海岸(茨城県鹿島郡鉾田町)を出発し、出雲崎(新潟県三島郡出雲崎町)に到着するルートである。所要時間は3日。ただし平日のみ。土日祝日はバスの本数が激減するので使えない。
実行日は11月19日(火)から11月21日(木)とした。徒歩での三国峠越えを考えると本当はもっと早く実行したかったのだが、仕事の都合上この日程となった。まあ、まだ11月だし雪が積もるということもあるまい。えっ、前橋でもう初雪?水上で積雪が48cm?なんで今年はこんなに雪が早いの?
不安を抱えつつ、11月19日早朝、予定通りに出発。実際にどういうルートをたどったかは、以降のお楽しみ。
11月19日、午前6時を少し過ぎた頃、私は石岡駅の待合室で寒さに震えていた。待合室といっても、改札口の外にあるわけではない。ホームに設けられた木造の古びた待合室である。ここから鹿島鉄道 鹿島鉄道線に乗り、出発地の大竹海岸がある鉾田町へと向かうのだ。それにしても寒い。昭和中期からタイムスリップしてきたような鹿島鉄道のホームと、隣に見える常磐線のホームとのコントラストが、さらに寒さを強調しているかのように思える。
6:23、定刻に発車。石岡駅を出ると四箇村までひたすら直線である。北海道かここは。初め乗客は少なかったものの、榎本から高校生でいっぱいになった。7:20、鉾田駅に到着。タクシーで大竹海岸へと向かう。
タクシーの運転手に行き先を告げる。
「大竹海岸までお願いします」
運転手が怪訝そうな顔をする。
「お客さん、まさかこの時期にはまぐり拾いってわけじゃないですよね」
しまった、「大竹」って言えばよかった。海岸は余計だったか。
「え、その、ちょっと写真を撮りに…」
一応、嘘ではない。信用されていないようだが。

大竹海岸
初っ端から不審者扱いを受け、旅が始まった。
関鉄メロンバス
鹿島バスターミナル発 鉾田駅行(新鉾田駅経由)
7:58(7:49)発 以下( )内は運行予定時刻
8:20(??:??)着
¥450

大竹海岸/鉾田駅
大竹海岸から徒歩で大竹バス停へ。バス停では先客がふたり待っていた。いよいよ旅の始まりだというのに、なかなかバスがこない。しかし、先客は特に慌てている様子でもないので、普段からこんなものなのだろう。到着予定時刻を過ぎてから約10分、ようやくバスがやってきた。客は10名ほど。鹿島臨海鉄道 新鉾田駅を経由するが、乗降客はおらず、駅前のロータリーをぐるりと回って鉾田市街へと向かう。市街地に入るとぽつぽつと人が降りる。終点の鉾田駅で下車。
関鉄メロンバス
鉾田駅発 石岡車庫行き(上山経由)
8:47(8:45)発
9:44(9:41)着
¥1,020

鉾田駅/国府六丁目
鉾田駅での乗客は私ひとり。いくら平日とはいえ、これはあんまりだ。もっとも、鉾田から石岡方面に向かうには鹿島鉄道があるのでこんなものかもしれない。バスは茨城県道8号 小川鉾田線を小川町方面へと進む。百里基地の側を通るらしいが、車中からそれらしいものは見あたらなかった。途中、東陣屋、下与沢、上与沢、幡谷のバス停でそれぞれひとりずつ乗車。小川市街に入ったところで3人が下車。
小川駅を出たバスは、茨城県道144号 紅葉石岡線、茨城県道118号 石岡田伏土浦線で高浜駅へと向かう。高浜市街の道は狭いが、難なく抜けて高浜駅に到着。高浜公民館前でひとり乗車。高浜駅前でふたり下車、新たにふたり乗車。高浜駅の脇の狭い踏切を渡って石岡駅を目指す。気がつくと国道6号を越えて石岡市街へと入っていた。国府六丁目で下車。千円札を運賃箱に入れるのは初めての経験で、少し緊張する。
関鉄グリーンバス
石岡車庫発 土浦駅行き
10:32(10:22)発
11:09(10:50)着
¥620

国府六丁目/亀城公園
計画段階でバスの遅れが最も危惧されていた区間である。このバスは、よく渋滞するので有名な国道6号の恋瀬橋と中貫交差点を通過するため、到着が10分以上遅れるのが普通なのだ。運行予定時刻では乗り換えまで約20分あるが、あまりあてにはできない。次の乗車予定である水海道行きのバスは本数が多くないため、これを逃すとすべて水泡に帰してしまう。
しかし、国道6号の渋滞以前に、バスがなかなかこない。到着予定時刻から刻々と時間が過ぎてゆく、3分…5分…うわっ、滅茶苦茶やばい。それにものすごく寒い。明後日の三国峠越えも気にかかり、不安が募ってくる。
10分後、ようやくバスがきた。急いで乗り込む。乗客は私ひとり。国府六丁目を出てすぐ、国道6号との交差点を経て恋瀬橋…渋滞である。信号を4回ほど経て、ようやく恋瀬橋を渡る。バスは遅れを取り戻す気配を見せない。千代田町を抜け、中貫交差点に突入。幸いこちらはそれほど混んではいなかったが、時計を見ると11:00を過ぎようとしている。
板谷でようやくふたり目の客が乗車。頼む、もう乗ってくるなという思いを余所に、その後も客が乗ってくる。そのうえ土浦市の中心に向かうにつれて信号が増え、いよいよ駄目かと思わせたが、11:09、亀城公園に到着。なんとか間に合ったようだ。
関東鉄道
土浦駅発 水海道駅行き
11:15(11:13)発
12:09(12:09)着
¥920

亀城公園/市役所前
バスは少し遅れてやってきた。先客は5人。亀城公園を出るとすぐに国道354号を牛久方面へと向かう。途中、天川団地入口で3人、広岡でひとりが降りる。バスは永国でいったん国道354号から離れるが、その後また国道354号へと戻る。常磐道の桜土浦ICを過ぎると茨城県道201号 藤沢荒川沖線へと入る。このあたりからつくば市内だ。並木団地の中をぐるぐると回って、並木中央でいったん停車。ただし乗降客はない。その後再び国道354号を西へと向かう。基本的には国道354号で水海道へと向かうのだが、ときどき国道を外れて民家が建ち並ぶ狭い道へと入ってゆく。道の雰囲気から察するに、こちらが本来の街道筋なのであろう。萱丸付近では常磐新線が建設中である。小貝川を渡り、国道294号を越えると水海道の中心部へと入ってゆく。市役所前には定刻に到着。途中、国道354号が渋滞すると思っていたのだが、それほど混まなかったのが幸いしたようだ。
関東鉄道
水海道駅発 岩井西高行き
12:43(12:42)発
12:58(13:00)着
¥510

市役所前/辺田香取神社前
バスを待つこと約30分。とにかく寒い。なんなんだ今年の天気は。目の前の市役所のトイレを借りて用を足す。鉄道と違い、手軽にトイレに行くことができないのがこの旅の困ったところだ。それにしても、こんなに冷えるとはまったく予想していなかった。
先客はひとり。またもや国道354号を西へと向かう。細野で先客が降りてしまい、私ひとりとなる。道路は混む様子もなく、順調にバスは進む。それにしても岩井というのは私にとって不思議な街である。市内に駅がないので、どこが街の中心部なのか未だによくわからないのだ。おそらくこのバスで終点まで乗車していればそれも明らかになるのだろうが、岩井市の中心街からはやや外れているだろう辺田香取神社前で下車。ここでバスの乗客はゼロとなった。この先乗客はいるのであろうか。
茨城急行
岩井車庫発 野田市駅行き
13:12(13:10)発
13:35(13:31)着
¥530

辺田香取神社前/愛宕駅
いよいよ関鉄グループのエリアを離れ、東武系バス会社のエリアへと入る。茨城県道20号 結城岩井線から茨城県道3号 つくば野田線に入り、芽吹大橋で利根川を渡って千葉県へ。この路線も渋滞に捕まることはなく、東武野田線の踏切で足踏みしただけである。愛宕駅までで私以外の乗客は3人であった。この路線は、だいたい30分に1本の割合でバスが走っているが、これで採算が合うのかどうか心配になる。
茨城急行
野田市駅発 北越谷駅駅行き(下町経由)
13:45(13:42)発
14:00(13:58)着
¥300

愛宕駅/松伏役場前
引き続き茨城急行で、千葉県を離れ埼玉県へと向かう。この時間になってようやくバス停で待つのが寒くなくなってきた。到着したバスは春日部ナンバーである。春日部ナンバーのバスに乗るなんて初めてだ。まあ、埼玉県内でバスに乗ることが初めてなので当たり前か。でも運行会社は「茨城」急行だよなあ。謎。なにげに運転席に目をやるとオートマである。オートマのバスに乗るのも初めてだ。さすが茨城より都会というべきなのか。千葉県にいたのはわずか1時間にも満たない。野田橋で江戸川を越え埼玉県へ。ここから長い埼玉県縦断の旅が始まる。
茨城急行
ゆめみ野東発 吉川駅北口行き
14:29(14:25)発
14:43(14:43)着
¥310

松伏役場前/中野尻
もはや埼玉県内しか走らないのに茨城急行とはこれいかに。それはさておき、計画段階において初日ふたつめの難所としていた路線である。運行予定では、中野尻での乗り換え時間はわずか3分しかない。少しでも遅れたら終わりである。だが、このバスが遅れるときは反対側から来る乗り換え予定のバスも遅れるだろうし、ここから先は極端に本数の少ない路線はないので、乗り遅れたとしても建て直しは図れるはず、という甘い期待を抱いて計画を立てていた。
が、国府六丁目に引き続きまたもやバスがなかなか来ない。許容範囲の3分を過ぎても来ない。ここまで道路が混んでいた様子もないし、出発地のゆめみ野東はここからさほど遠くないはずだ。…予定時刻から4分後、ようやくバスが来た。頼むからこの先渋滞しないでくれ、と祈りつつ乗り込む。運行会社にとっては不幸であろうが、私にとっては幸運なことに、川藤と法務局以外での乗降はなし。渋滞もなく、定刻に中野尻に到着。まだ次のバスの姿は見えない。急いで道路を渡り、反対側のバス停へと向かう。
朝日バス
吉川駅北口発 越谷駅行き
14:49(14:46)発
15:08(15:03)着
¥310

中野尻/新石一丁目
予定のバスにはなんとか間に合ったようだ。バスに乗り込んでようやく落ち着く…はずだったのだが、次の野尻バス停で停車したときの周りの景色を見てみると、あれ、さっき通ったところだ。野尻で降りてもよかったのか。そうすればこんなに慌てる必要もなかったのに、失敗である。まあ、結果的に問題がなかったので良しとしよう。
だが、運転席の後ろに貼ってあるお知らせが、またもや私を不安に陥れた。
ダイヤ改正のお知らせ
ちょ、ちょっと待て。まだ先の話だよな。
11/14付で時刻変更
え、5日前?そんなの聞いてないぞ。とはいえ、全路線が改訂ってわけでもないだろう。対象路線が書いてあるようだから見てみるか。
越谷駅 - 岩槻駅
もしかして、次の路線?まさか減便で乗り換え予定のバスが消滅とかはないよな。頼む、それだけは勘弁してくれ!
そんな私の不安には構うことなく、バスは埼玉県道52号を西へと進み、越谷駅を目指す。客の乗降はたびたびあるが、それでもお客は10人にも満たない。越谷市内での渋滞を心配していたのだが、幸いにもそのようなことはなく、バスは予定時刻から5分程度遅れただけで新石一丁目へと到着した。
朝日バス
越谷駅発 水上公園行き
15:17(15:16)発
記録なし(??:??)着
¥280

新石一丁目/水上公園
大急ぎで新石一丁目バス停の時刻表を確認する。時刻表には「平成14年11月14日実施」とあり、確かに時刻変更があったようだが、とりあえず予定していたバスの時刻は変わっていなかった。念のため時刻表をデジカメで撮影しておく。バスはほぼ予定時刻通りに到着。時刻変更のお知らせがよく読めるように、運転席のすぐ後ろの席に陣取る。どれどれ、さっきのバスでは席が遠くてよく読めなかったからな、こんどはじっくりと読んでやる。
越谷駅 - 末田 - 岩槻駅線 回数変更 バス停新設
なんだ、この路線じゃないのか、心配して損しちゃった。ようやく落ち着く。バスは元荒川に沿って進む。先客がひとりいたが、神明下で下車。この後、終点まで乗降客はなく、客は私だけであった。
朝日バス
水上公園発 岩槻駅行き
15:43(15:43)発
16:04(16:00)着
¥310

水上公園/駅通り
このバスも時刻の変更はなかったようだ。朝日バスはここまでで、次からは東武バスになる。東武バスは先日のダイヤ改正を確認しているので、問題はないはずだ。ほっと安心する。水上公園からの乗客は私だけであったが、次のバス停から高校生が数名乗車。もうそんな時間か。気が緩んだせいか途中で寝てしまったため、車内の様子はほとんど覚えていない。気がつくと国道16号を越え、岩槻市街へと入っていた。周囲はだんだんと暗くなってきた。せっかく暖かくなってきたと思ったら、あっというまに日が暮れかかっている。だが、本日の行程はまだ半分程度。先は長い。
東武バスウエスト
岩槻駅発 大宮駅東口行き
16:20(16:20)発
16:51(??:??)着
¥340

駅通り/大宮駅東口
次のバスまでの時間が15分程度と中途半端なので、おとなしくバス停で待つことにした。バス停には楽器(ドラム?)を持った若者が3人いたが、すぐに私が乗る予定のバスとは別のバスに乗っていった。こうしてバス停でひとりきりになったとたん、明らか日本人離れした彫りの深い男が近寄ってきた。
「What time the next bus for Koshigaya station ?」(推定)
ガイジンキタ────(°∀°)────!!
いま通ってきたルートの逆を説明すればいいだけなのだが、よりによって乗り換えが必要になるかもしれない路線とは…次のバスが水上公園止まりでなく、越谷駅直通であらんことを願いつつ時刻表を見る。だめだ、このあとしばらくは水上公園行きばかりである。困った。
「You take the bus for Suijokoen, and change the bus for Koshigaya station. Next bus is…」
面倒なので時刻表を指差す。彼は休日のほうの時刻を読み上げた。
「No, it's holiday time.」
納得したのか、彼はしばらく時刻表を見つめてから立ち去っていった。だが、水上公園で乗り換えるという一番肝心の部分がどうも伝わっていないような気がする。
まもなくバスが到着。この場を急いで立ち去るべくいそいそとバスに乗り込む。周囲にはライトを点灯している車が目立ち始めた。頻繁に乗降があるが、車内の客は5、6人から増えることはない。突然、都会になったと思ったら大宮駅に到着。バスを降り、徒歩で西口へと向かう。
西武バス
大宮駅西口発 川越グリーンパーク行き
17:30(17:30)発
18:03(17:48)着
¥340

大宮駅西口/川越聖地霊園入口
大宮駅を抜けて西口のバスターミナルに着くと、どの乗り場も行列ができている。ぎりぎりに乗車したら座れないと判断し、前のバスが出発する直前に列に並んでバスを待つ。列のだいぶ前のほうに並べたので、私はなんとか座ることができたが、通路いっぱいに乗客が立っている。こんなに混むバスに乗るのはこの日初めてである。
しばらくの間、車内は混雑していたが、新屋敷と赤羽根でほとんどの乗客が下車。それと同時に道路もすいてきた。周囲は真っ暗でどこを走っているのかよくわからない。いつの間にか国道16号に入り、荒川を渡っているようだ。渡り終えて少し走ると、国道16号から離れ、川越グリーンパークへ向かう道へと入る。入ってすぐに川越聖地霊園入口に到着。
西武バス
川越グリーンパーク発 本川越駅行き
18:20(18:18)発
18:37(18:35)着
¥240

川越聖地霊園入口/川越駅
降りたバス停の向かいにある川越方面行きのバス停に向かおうと振り向くと、国道16号へと出る右折レーンに本川越行きのバスが止まっている。これが次に乗車する予定のバスだったのでは、と慌てて予定表を見る。やられた。18:03発のバスに乗る予定だったのに、時計は既に18:03を過ぎている。いくらなんでも前のバスということはありえない。だが、悩んでも仕方がないので、とりあえずバス停に向かい次のバスの時刻を確かめる。18:18だ。15分の遅れならなんとかなるかもしれない。そう思いつつバスを待つ。
乗車するとすぐに時刻表を取り出し、この後どうなるかを確かめる。どうやら予定していたバスには乗れないものの、今日の目的地である深谷まではたどり着けそうだ。ただし、予約していたホテルへのチェックインが遅れるのは確実なので、川越駅に着いたら連絡しなければ。いろいろ考えているうちにバスは国道16号を離れ、川越の市街地へと入ってゆく。乗客数は座席の半分程度。川越駅は終点ではないので、うっかり乗り過ごしそうになった。
東武バスウエスト
川越駅発 東松山駅行き
19:12(19:12)発
20:02(??:??)着
¥610

川越駅/東松山駅
川越駅前は帰宅する会社員やら高校生で混雑していた。駅前はバスターミナルになっており、バスの発着本数はそれなりに多いようだ。次のバスまで30分以上あるので、まずは宿泊予定だったホテルに遅れる旨の電話を入れる。その後、駅前をぶらぶらして過ごすが、どのバスも長い列ができているのを見て、早めにバスターミナルへと移動する。
案の定、座席はすべて埋まり、10人くらいが立席の状態でバスは発車。本川越駅でさらに乗客は増え、ぎゅうぎゅう詰めに近い状態となった。本川越駅から少し走ると道路の両側に灯が並んでいた。なにかのお祭りかもしれないが、私以外で気にしている人はいないようだ。福田付近で片側2車線の立派な道路へと出る。国道254号らしい。落合橋を渡るとまたもや細い道へ。落合橋、井草学校前、井草坂下でほとんどの乗客が下車し、急に車内が寂しくなる。
戸守を過ぎるとバスは急にスピードを上げ始めた。気づくと車内の客は私を含めてふたりだけである。今泉の手前から再び国道254号に入る。20:00過ぎに東松山駅に到着。東武東上線があるにも関わらず、ずっとバスに乗りっぱなしの客は私だけであった。運転手の怪訝な表情を後に、そそくさとバスを降りる。
国際ハイヤー
東松山駅発 熊谷駅行き
20:13(20:13)発
20:50(??:??)着
¥550

東松山駅/熊谷駅
東松山駅前のバスターミナルにもバス待ちの行列ができていた。だが、川越駅とは違い、高校生の姿はだいぶ減り、会社員のほうが目立つ。バスは定刻に発車。列ができているだけあって、座席が全部埋まるくらいの乗車率である。さっきやってきた道を戻るように走る。しまった。ひとつ手前の駅入口バス停で乗り換えてもよかったかもしれない。でもまあ、東松山駅から乗らなければ座れなかっただろうと思い、これでよかったことにする。
この辺の土地勘がまったくない私には、バスがいったい東西南北のどちらに向かって走っているのかさえも見当がつかない。立派な道路に出たと思ったら大きな橋を渡り、熊谷市街へと入ってゆく。なんだか大宮駅からこのパターンが続いているような気がする。熊谷市内の道路は立派で交通量も少なく、おそらく定刻どおりに熊谷駅前に到着。この区間には鉄道がなく、最初から最後までバスに乗っていても不自然ではないはず、と思いながら堂々とバスを降りる。それでも、東松山駅から熊谷駅までバスに乗っていたのは私だけだったが。
国際ハイヤー
熊谷駅発 深谷駅行き
21:00(21:00)発
記録なし(??:??)着
¥340

熊谷駅/深谷駅
ようやく初日の最終区間である。17本目のバス。多いんだか少ないんだか自分でもよくわからない。それはさておき、熊谷駅前にてバスを待つ。駅舎と駅前のロータリーはだいぶ立派だが、バス乗り場は少し寂しい。バスは座席数の半分くらいの客を乗せて発車。深谷行き最終バスとのアナウンスが流れる。最終バス、いい響きだ。あまり根拠はないけど。
バスはまたもやさっききた道を戻り出す。…うーむ、やたら重複区間が長いような…げ、運賃表が変わった。結局、熊谷寺で乗り換えても大丈夫だったことが判明。運賃もちょっぴり安くて済んだようだ。バスは国道17号を深谷方面へと進む。なんか運転が荒いような気がするが、スピードが出ているせいなのか路面の状態がよくないのか、原因はわからない。乗り心地は今ひとつだが、ここまできてようやく足下のヒータが入っているバスに出会ったような気がする。ありがたい。
バスは国道17号を外れ、あまり広くない道を進む。乗客は私を含めふたりまで減っている。もうどこをどう走っているのか皆目見当もつかない。やたら交差点を直角に曲がっているような気がする。いくつか交差点を経たところで籠原駅に到着。籠原駅でひとり降り、3人乗車。再び市街地をぐるぐる回って国道17号へ。幡羅中学校前でついに乗客は私ひとりになる。ようやく深谷の市街地に入ったと思ったら、こんどは渋滞に捕まる。工事のため片側交互通行になっているようだ。正確な時間は記録し忘れたので不明だが、21:50頃深谷駅前に到着。コンビニで買い物を済ませ、宿泊予定のホテルへと向かう。22:00前にチェックイン。
こうして、やや波乱含みの初日が終わった。とはいえ、本格的なトラブルは川越聖地霊園入口での乗り遅れだけで、それ以外はやばそうな雰囲気にはなったけれども結果オーライだったのでよしとしよう。今日は知らない街の雰囲気を触れることができただけでなく、知っている街でもこんな道があったのか、という発見があった。明日以降が楽しみである。明日は最初に乗車を予定しているバスを逃すとそれだけでゲームオーバーなので、寝坊しないように早めに寝ることにした。
武蔵観光バス
深谷駅発 寄居車庫行き
7:59(7:55)発
8:37(8:33)着
¥420

深谷駅/桜沢
朝7時半、深谷駅前へとやってきた。駅に向かう通勤、通学客は意外と少ない。ましてやバスを待つ人は皆無である。夕べは気がつかなかったが、バス停もちょっと控えがちである。念のため確認しておこうと時刻表を見ると、乗車予定の7:55のバスだけテプラである。不安だ。しかもバスはおろか客も姿を見せない。
7:48になってバスがやってきた。側面にでかでかと書かれた「代替バス」の文字が痛々しい。7:59に発車…って出発からして遅れている。車内には私を含め5人の乗客がいるが、誰も遅れを気にしている様子はない。普段からこういう感じなのかもしれない。バスはまず深谷市内を巡回して客を集めるが、高校生が数人乗ってきただけである。
深谷市郊外からは、埼玉県道62号 深谷寄居線を寄居方面へと走る。北柏谷付近で上越新幹線の下をくぐる。そのまま寄居まで直通なのかと思いきや、突然右折し農道のような畑の中の細い道を走り出す。どうやらグリーンパークとかいう施設に寄るためらしい。グリーンパークから埼玉県道75号 熊谷児玉線を経て再び埼玉県道62号へ。三軒屋の近くで今度は関越自動車道の下をくぐる。
高校生が乗った自転車を次々に追い越してゆく。寄居高校前で車内の高校生は全員下車、バスに抜かれた自転車も次々に学校へと入っていく。近くの秩父鉄道 桜沢駅から歩いてくる高校生もいて、付近は少し混雑している。
桜沢で下車。どうやら次に乗車予定の本庄駅行きバスの桜沢バス停はこことは違うようだ。だが、バス停の場所を私は知らない。乗り換えまで約50分ある。急いで探さねば。
武蔵観光バス
寄居車庫発 本庄駅南口行き
9:30(9:24)発
9:56(9:53)着
¥460

桜沢/本庄駅南口
バス停を探すべく適当に歩く。八高線の踏切を渡ると国道254号に出た。たぶんこの辺にバス停があるだろうと思い、国道を横断する歩道橋に登ってみる…あった。歩道橋から北へ100m程度の所にバス停を発見。時刻表を確認する。間違いない。いきあたりばったりでもなんとかなるものである。
時間があるので周囲を探索してみるが、特にこれといったものは見あたらない。寄居市街まではかなり距離があるようで、徒歩で往復するのは無理っぽい。9:00過ぎにはバス停に戻り、ひたすらバスを待つ。今日も昨日に引き続き冷え込み、吐く息が白い。
運行予定より6分ほど遅れてバスが姿を見せた。え、これって観光バスじゃないの?バスを正面から見るだけではそうとしか思えない。だが、側面には大きく「代替バス」の文字がある。これがなければ路線バスとは誰も思うまい。
車体は観光バスなので、当然前乗り前降りである。運転線の脇にはやや強引に運賃箱が備え付けられている。運賃表は通常のバスのような次々に表示が変わるタイプではなく、でかい一覧表が貼ってあるだけである。座席は観光バスそのものだから乗り心地がよい。国道254号の路面状態もよいので、実に快適だ。これで通常のバス料金と同じなら大変お得である。
バスには先客がふたり。ところどころのバス停で乗客が増え、最終的には15人くらいになった。ほとんどがお年寄りで、お客同士も運転手も知り合いという雰囲気である。こんどは関越自動車道、上越新幹線の順に下をくぐり、本庄市内へと入ってゆく。
病院前のバス停でお年寄りの多くが降りる。観光バスでの運行は年配者にはありがたいのかと思ったが、一概にそうともいえないらしい。観光バスならではの高いステップが乗降車時の障害となるようだ。本来ならノンステップバスを導入すべきなのだろうが、代替バス路線には無理な話である。皆が快適に利用でき、かつ低コストな公共交通機関の実現は難しいのかもしれない。
十王バス
本庄駅発 伊勢崎駅行き(上武大〜茂呂島経由)
10:10(10:10)発
10:47(10:43)着
¥500

本庄駅前/伊勢崎駅
本庄駅を歩いて渡り、北口のバス乗り場へ。すでにバスは到着していた。座席がすべて埋まるくらいの乗客がいる。平日の午前中にこれだけの乗車率があるのなら、そこそこ利益の出る路線なのかもしれない。上武大経由のためか、大学生らしき乗客がちらほら見える。バスは定刻に発車。国道17号を横切り、伊勢崎へと向かう。まっすぐな道の割には車内はものすごく揺れているように感じる。路面の状態がよくないのか、さっきの観光バスに慣れてしまったせいなのか。おそらく両方だろう。
板東大橋で利根川を渡り、群馬県に入る。長かった埼玉県ともようやくお別れだ。橋を渡るとすぐに、お世辞にも広いとはいえない道に入ってゆく。特に東京福祉大を過ぎてからは、道は狭いわ、車内は揺れるわで大変である。少なくとも、ここまででこれほど路面状態が悪い道はなかった。
それでも伊勢崎の街が近づくにつれて道は立派になってくる。途中、渋滞することもなく、予定時刻をやや過ぎて伊勢崎駅に到着。駅は街から少し外れたところにあるようで、周囲の人影はまばらである。伊勢崎駅のホームには多くの人影が見えたが、よく見るとひとりの男が警察官に取り押さえられ、しょっ引かれてゆくところだった。酔っぱらいかなにかだと思うが、困ったものである。
次のバスまで2時間半もある。今日は落ち着いて昼食をとれることを期待しつつ、街中をうろついてみることにした。
群馬中央バス
伊勢崎駅発 新前橋駅東口行き
13:05(13:05)発
13:54(13:45)着
¥660

伊勢崎駅前/本町
伊勢崎の街を適当にうろつく。ファミレスにでも居座ろうかと思ったのだが、残念ながら見つからなかった。探し方が悪かったのだろうか。だいぶ歩いたと思ったら、新伊勢崎の駅前まできていた。しょうがないので近くのデパートに入っているマクドナルドに赴き、ハンバーガーをかじりながらここまでの経過をまとめたり、今後の予定を確認したりする。伊勢崎駅まで歩いて戻るのは面倒なので、新伊勢崎駅から電車で伊勢崎駅へ。
13:00前にバス停へ。まだバスの姿は見えない。バス停はだいぶくたびれている。本当にバスがくるのかどうか不安だ。かつて営業所だったと思われる建物は、待合室として利用することはできるものの、明らかに閉鎖しましたという雰囲気を漂わせていて、中にいるとますます不安になってくる。バス停の前には、送り迎えの一般車両が遠慮なく駐車し、バスの存在そのものを地元の人たちも忘れているかのようだ。
私がどのくらい不安な気持ちでバスを待っていたかは、下の写真を見れば納得できると思う。

時刻表が落ている(反対側も同じ)
これが、JRと大手私鉄が接続する駅前のバス停の実態なのである。時刻表はこの有様、運行系統図は最初から存在しない。バス停そのものも変色してしまってとても見にくい。不安を通り越してもの悲しくなってきた。
13:03、バスがやってきた。バス停の前に止まっていた車は、バスの姿を見て慌てて去っていった。バスは定刻通り13:05に発車。先客がひとりいたが、このバスは伊勢崎駅が始発のはず。どこから乗ってきたのだろう。営業所からか?バスはまず伊勢崎の街へと向かう。しまった、ここでも重複区間がある。本町二番あたりで乗り換えればよかった。伊勢崎の街で乗ってきたのはひとりだけ。そのお客もすぐに降りてしまい、駒形十字路で先客も下車。久々に乗客が私だけになる。
どこをどう走っているのかよくわからないが、昔の街道っぽい雰囲気の道を進んでゆく。下大島と上毛病院前でひとりずつ乗車する。前橋大島駅前のロータリーは回るだけである。昨日の朝、新鉾田駅前でも同じようなことがあったが、ずっと前の出来事のように思い出される。バスは朝日町付近で国道17号へと出る。前橋市内のメインストリートなだけに交通量はそこそこ多い。これだけ車が走っている道路に出たのは、今日はここが初めてだ。バスは少し遅れて本町へと到着。次のバスまでの時間があまりないので、急いで下車する。
関越交通
前橋駅発 渋川駅行き(群大荒牧経由)
14:00(13:59)発
14:30(14:35)着
¥610

本町/渋川駅
本町バス停は、群馬中央バスだけでなく、群馬バス、関越交通、日本中央バス、上信バス、永井バスと多くのバス会社が乗り入れている。おかげでどれがどの時刻表なのか把握しにくい。同じ渋川駅行きでも、前橋駅〜群大荒牧〜渋川温泉〜渋川駅〜渋川市内循環線と前橋駅〜荒牧〜田中〜渋川駅線の2系統があり、混乱に拍車をかける。もっとも、次の渋川駅ではかなりの待ち時間があるはずなので、とりあえずきたバスに適当に乗ればいいやと、あまりなにも考えずにバスを待つ。
14:00ぴったりに群大荒牧経由のバスがやってきた。先客はふたり。私のほかに初老の男性が乗車。4人の乗客を乗せてバスは走る。国道17号線を新潟方面へと右折。この道は幾度か車で走ったことがあるので、だいたいどこをどう走っているのかの見当がつく。群大荒牧を過ぎると、周囲は閑散としてくる。気のせいかバスはかなりのスピードを出しているようだ。
板東橋で利根川を渡る。数時間前に似たような名前の橋で同じことをしたような気がする。方向は逆だったが。再び関越自動車道の下をくぐる。本日3回目。14:30、バスは渋川駅へと到着。なんと5分も早着である。バスがスピードを出していたのは気のせいではなかったのだ。
関越交通
渋川駅発 桜の木行き
16:45(16:45)発
17:12(17:15)着
¥620

渋川駅/桜の木
次の乗車予定のバスは16:45。またもや2時間以上の待ち時間がある。その間、周辺を適当に歩いてみるが、街全体が坂になっていて、徒歩でうろついていると疲れてくる。そういうわけで、近くのデパートの中の書店で本を買い、渋川駅の待合室で読むことにした。待つこと2時間、あらかじめセットしておいたPHSの目覚ましが鳴ったので、駅舎の外に出てバス停へと並ぶ。
バスは定刻に発車。乗客は私を含めて2名。あれだけ駅前にたむろしていた高校生はひとりも乗らない。既に日は沈み、道行く車もライトを点灯している。渋川新町でふたり乗車してきたが、こちらも高校生ではない。あたりが急速に暗くなる中、バスはひたすら坂を上り続ける。子持入口から乗客は私ひとりになる。ほかに客が乗ってくる気配はない。
17:10、桜の木の手前でようやく上り坂から下り坂に転じる。17:12、桜の木に到着。またもや早着であるが、乗降がなく、国道17号を道なりに走ってきたらこんなものだろう。桜の木では沼田三軒屋行きのバスが待っていた。
関越交通
桜の木発 沼田三軒屋行き
17:25(17:25)発
17:50(17:50)着
¥630

桜の木/中央病院前
桜の木はまさしく折り返し所という雰囲気がぴったりの場所である。見た目は砂利敷きの空き地にしか見えないが、バス停の存在が折り返し所であることをひっそりと主張している。待っていたバスは最近よく見かけるようになった、ひとまわり小型のバスである。乗客はまたしても私ひとりだけ。
バスは沼田に向けて下ってゆく。綾戸橋を通過するころ、月が山の稜線に見え隠れしていることに気がついた。ちょうど今日は満月。なんとも幻想的な光景だ。自分で運転していてはこの光景は楽しめないだろう。なんとなく得をしたような気分になる。
バスは関水で停車。とはいっても乗降客がいるわけではなく、後続の車をやり過ごすためである。時間調整もあるのかもしれない。車の列が途切れたところで再び発車。戸鹿野橋を渡って国道17号から離れる。橋には制限14tの標識がかかっている。道はお世辞にも広いとはいえず、おそらくこの道が国道17号の旧道なのだろうと容易に想像がつく。この後、さらに新橋と東電前で後続の車をやり過ごす。やがてバスは沼田市街へと入ってゆく。
沼田は私が思っていたよりもずっと大きな街である。今までいつも国道17号で通過するだけで、市街地に入ったことがないのでわからなかっただけなのだが。これなら落ち着いて夕飯が食べられそうだと思ったとたん、材木町を過ぎたあたりから街の灯が急に減ってきた。中央病院前で降りると、もう完全に街外れである。食事どころではない。その上、当たり前だがバス停は寒い。暖かいコーヒーでも飲みたいところだが、ここで飲むとバスの車内で尿意を催しそうなので我慢する。とりあえず、持参のマフラーと手袋を装備し、渋川で購入した本の続きを読む。が、手袋をしているので読みにくい。頼む、バスよ早く来てくれ。
関越交通
沼田市保健福祉センター前発 猿ヶ京行き
18:42(18:41)発
19:32(19:31)着
¥1,300

中央病院前/関所跡
猛烈に冷え込むバス停で待つこと50分。待ち望んだバスが姿を見せた。先客は3人。市役所前でふたり下車、沼田局前でひとり乗車、沼田駅でひとり下車。バスは沼田駅からの狭い道を抜けて、葛折りになった坂道を降ってゆく。冬、雪が積もったら運転はさぞかし大変だろうと思う。硯田下でひとり下車し、乗客は私だけになる。バスは国道291号を経て群馬県道61号 沼田水上線へ。その間、乗車客はゼロ。18:00前に後閑駅に到着。駅前で転回する。
後閑駅からは高校生を中心に10人ほど乗車。とたんに車内がにぎやかになる。月夜野橋を渡ると猿ヶ京まで14kmの表示が見える。月夜野郵便局前からさらに数名乗車。対向車はまばらで、バスはライトをハイビームに切り替えて進む。国道17号に出ると、猿ヶ京まで11kmの看板がある。本日の目的地まであと少しだ。ここから先は幾度も通ったことがある道なので、あとどのくらいで到着するのかおおよその見当はつく。
19:32、宿泊先の最寄りとなる関所跡に到着。運賃¥1,300はこの旅行で最も高いが、走行距離を考えると妥当な運賃だろう。本日の宿泊先は温泉旅館である。バスに乗っている時間はそれほど長くはなかったものの、そのぶん街の中を歩き回ったのでだいぶ疲れた。温泉でゆっくりと疲れを取り、最終日の明日に備えたい。
新治村営バス
小学校下発 法師行き
8:54(8:52)発
9:10(9:10)着
¥530

関所跡/法師
朝8時半過ぎ、旅館を後にして関所跡バス停へとやってきた。猿ヶ京は晴れているが、山は雲がかかり、山肌には白い部分もちらほら見える。朝の天気予報では、新潟は強い雪を伴う雨とのことであった。そのうえ、六日町と小出には雪注意報まで出ていた。三国峠を無事越えられるかどうか不安になる。
バスはほぼ定刻に到着。本旅行で2台目となる小型のバスである。乗客は終点の法師まで私だけであった。猿ヶ京を出ると、バスは国道17号を進む。途中、現在の気温が9℃との表示があり、意外に暖かいのでほっとする。これならなんとかなりそうだ。
やがてバスは国道17号を離れ、群馬県道261号へ。県道に入ってすぐの所には数軒の家があり、その付近は道もしっかりしているが、人家が途切れると曲がりくねった隘路となった。雪が積もったら運転はさぞ大変だろう。そんな中でもアナウンスのテープはなにごともなかったかのように平然と案内を続ける。永井郷土館入口から再び道が広くなった。
赤沢スキー場の案内が流れると、運転手は誰もいないのに、と笑い、私に話しかけてきた。
「お客さん、三国にでも登るんですか?」
この時期、こんな軽装で山登りをするのはどうかと思うのだが、かといって湯治客にも見えないのだろう。ここは正直に答えておく。
「いや、ちょっと苗場まで歩こうかと思いまして」
もしかしたら苗場山に登るのだと誤解されたかもしれないが、運転手はなにもいわなかった。
ほかにも適当に雑談をしながら過ごす。赤沢スキー場がオープンすれば、このバスにも乗客が増えるとのこと。道がまた狭くなったと思ったら終点の法師に到着。車が通行可能なのはここまで。温泉には30台くらいの車が止まっていた。結構繁盛しているようだ。
バス停にはふたりの乗客が待っていた。どうやら、このバスはすぐに折り返し運転となるらしい。温泉宿以外になにもないところなので、当然といえば当然なのだが。
上信越自然歩道
9:10発
10:00頃着
¥0
法師温泉から浅貝上までは徒歩区間であり、バスのみで移動するというこの旅の趣旨からは外れてしまうので、本来は詳細を語るべきではない。だが、私の無知が原因で危険な目にあったので、警告の意味も含めて記述しておくことにした。同じことをする場合には自己責任で行うこと。どんな目にあっても私は責任を持てませんのでご承知置きください。
リュックサックのベルトをきっちりと締め、ここから先の徒歩区間に備える。地図を見る限り、迷うような場所ではないはずだ。天気は晴天だが、冷たい雨が飛んできている。どうやら山は雪らしい。どうするか少し迷ったが、三国トンネルの入り口までは行けるだろう思い、上信越自然歩道へと足を踏み入れた。

上信越自然歩道 入口
路面はごつごつしていて歩きにくい。この区間のことを考えて運動靴を履いてきたのだが、本格的なトレッキングシューズでないと厳しそうだ。だが、いまさらどうしようもない。とにかく歩く。法師温泉からは初めきつい坂が続くが、やがて下り坂に転じ、法師沢の河原へと出た。おや、道が分かれている。右の橋を渡ると三国峠との看板があるが、地図では直進だったような気がする。とりあえず真っ直ぐ行ってみよう。
あれ、行き止まりだ。さっきの橋でよかったんだな。では引き返すかと振り向くと、ガサガサとやぶが揺れる音がした。こんな寒いのにまだ蛇が出るのかと思った瞬間のことである。
クマ────(°∀°)────!!
目があったわけではないが、黒い生き物が一目散に逃げて行くところだった。私が急に振り返ったのでびっくりして逃げ出したらしい。ぼうぜんとするが、ここで弱気なところを見せたらいけない、イニシアチブはこちらが握っているんだ、と思い、なに食わぬ顔で歩き出す。実は冷や汗だらだらなのはいうまでもない。
状況を冷静に判断してみると、さっきのクマは冬ごもりの準備中で、私を獲物として狙っていたが、たまたまこちらが先に反応したので逃げ出した というところであろうか。単なる偶然で命拾いをしたに過ぎない。
とりあえず先ほどの河原まで戻ってきた。さて、どうするか。法師温泉まで戻ってタクシーを呼ぶか、改めてこの先を進むか。一応、川を渡ればクマを迂回して進むことになるが、この先さらに別のクマがいないとも限らない。それに、あのクマだって移動しているのだ。またもや鉢合わせではしゃれにならない。
いろいろ天秤にかけつつも、結局先に進むことにした。法師沢を渡り、沢の斜面を登る。あ、さっきのクマがいる。奴は対岸の斜面を登り、山の中へと去っていった。クマの動きは想像以上に敏捷である。あの勢いで襲われたらたまったものではない。
とにかくこれでクマはパスした。もっとも、逆にいえばこれで退路は絶たれたのである。前進あるのみ。だが、進むにつれて、クマよりも道の心配をしたほうがよさそうになってきた。たぶん合っているとは思うのだが、確信できるほどはっきりした道ではない。さすがに積雪はほとんどないが、落ち葉で足が滑る。沢に転落したらそれまでだ。
そう、いつの間にか、下を流れる川よりもだいぶ高いところを歩いている。するとこんどは強風にさらされるようになった。いったいあとどれだけ歩けば国道17号に到達できるのか不安になってくる。途中、立ったまま何度か休憩を入れるが、バランスを崩すと転落しそうで落ち着いて休めない。
耳を済ますと車の音が聞こえ出した。やった、もう少しだ。だが、肝心の道路はなかなか見えない。もしかしたら幻聴なのでは、とまで思えてくる。さらに歩くと目の前に不法投棄されたと思われるごみの山が見えた。やはり国道17号は近いのだ。だが、もしいま不法投棄が行われ、ごみが私を直撃すれば、崖下まで転落間違いなしである。頼む、誰もごみを捨ててくれるなと祈りつつ歩く。
ようやく国道17号が見えた。それはいいのだが、遥か見上げる位置にあるのは気のせいではあるまい。この最後の崖が難関だ。風は強いわ、荷物は重いわで、ちょっと気を許すと落っこちそうである。怖いのでなるべく下を見ないようにしながら最後の階段を這うように登り、国道17号へと辿りついた。汗でぐっしょりである。

国道17号から見下ろしたところ
事前に調べたときには、いかにもお手軽ハイキングコースのような印象を受けたので、そこらへんを散歩するのと同じ感覚で準備をしていたが、とんでもない大間違いであった。また、途中で人の気配はまったくなく、万一怪我をしたら誰にも発見されず力尽きる可能性もある。
クマに関しては、出発前日にとあるホームページで、「三国路自然歩道でクマのふんが落ちていた」というのを読み、職場の後輩に「最大の敵は雪でなくてクマらしいぞ」と冗談半分で語っていたのだが、まさか本当に出るとは思わなかった。逆に、それ以外でクマに関する情報は皆無だったのである。
後で聞いた話では、こういうところではクマスプレーを用意しておくべきとのこと。山歩きの経験者に直接意見を聞くべきであったと反省している。もっとも、このことを日本百名山の制覇を目指している人に話してみたところ、彼でさえクマに会ったことはないという。私はよっぽど特殊だったのだろうか。
国道17号
10:00頃発
記録なし着
¥0
クマとの遭遇から無事に生還したものの、私はだいぶ弱気になっていた。自然歩道の看板に嘘偽りなしとはいえるが、ワイルド過ぎる。ムツゴロウ氏ならいざ知らず、私には荷が重い。さらに、この先の三国峠には、素人目にも雪雲だとわかる灰色の雲が覆い被さっている。こんな軽装で突入したら、遭難、凍死は免れない。かといって三国トンネルを徒歩で抜けるのも危険そうだ。ここはヒッチハイクでもするか、との考えも浮かぶ。
とりあえず三国トンネルの入口前へと向かう。ちょうどトンネルは工事中で、片側交互通行となっていた。入口で交通整理をしている男性の顔色を窺ったところ、徒歩で通ってもいいけど、狭くて危ないから工事をしている側の車線を歩くようにとのこと。これでお墨付きを貰ったことだし、覚悟を決めて突入しようとした矢先に、現場の主任らしき人が飛んできた。いまから用事があって苗場方面に行くので、苗場プリンスホテルくらいまでなら送ってくれるという話である。ここは、この申し出をありがたく受ける。
「2週間前からここにいるけど、歩いてきたのはあんたが初めてだよ」
やっぱりそうですか。とりあえず誉め言葉として受け取っておく。車中の話では、彼らは猿ケ京温泉に泊まっているとのこと。彼らの会社の担当は交通整理だけで、実際に工事をしているのは別の会社らしく、全体で何名くらいがここにいるのかはよく知らないそうだ。さっきクマに出会った話をすると、
「それは野良ですか?」
野良に決まっているだろー!と心の中で突っ込んだりしているうちにトンネルを抜け、苗場プリンスホテルの前で降ろしてもらった。私を降ろすと彼の車は引き返していった。実際は用事などなく、トンネル内で事故が発生すると困るので送ってくれただけなのかもしれない。それでも嬉しかったのには変わりなく、とても感謝しています。この場であらためて御礼申し上げます。
本当は浅貝上のバス停で降ろしてもらえばよかったのだが、不審者扱いに拍車をかけることもなかろうとおとなしく苗場プリンスホテルまで送ってもらったので、歩いて浅貝上まで戻る。道路は除雪されているものの、道端には雪が積もっている。また、群馬県側は快晴だったのに、苗場は曇り空、いまにも雪が降り出しそうだ。そんな中、汗だくの私は袖捲りで歩く。周囲から見ればかなり怪しいんだろうな、やっぱり。でも気にしない。
浅貝上のバス停は待合室がある。ほかに人影もないので、待合室で着替えることにする。新しいシャツに着替えるとだいぶ落ち着いてきた。一息ついたところで、ここまでの経緯を忘れないうちに書き留める。それにしても波乱に満ちた3日目である。昨日の今頃は、よもやこんな目に合うとはまったく想像もしていなかった。
10:50頃バスがやってきたが、これは苗場プリンスホテル行きである。このバスの折返しにおそらく乗車することになるのであろう。

浅貝上バス停から見た三国山方面
この付近はPHSの圏内なので、H"のコンテンツのひとつ、共同通信ニュースを読んで時間を潰す。
南越後観光バス
苗場プリンスホテル発 湯沢駅前行き
11:13(11:10)発
11:46(??:??)着
¥640

浅貝上/湯沢駅前
バス停の表記は越後交通のままであるが、運行会社は南越後観光バスである。浅貝上からの乗客は私だけ。このまま終点まで行くのかと思いきや、二居、貝掛温泉、七谷切でひとりずつ乗車してきた。みな地元のおばさんで、冬服を着ている。ひとりだけ秋物の服を着ている私は浮きまくりである。外は雪が降っているわけではないが、冷たい雨が降ったりやんだりを繰り返している。二居の気温は4℃。雪になってもおかしくない温度である。
乗客は全員、終点の湯沢駅前で下車。運賃はなんと¥640。え、20kmくらい乗っていたような気がするのに、そんなに安くていいの?なんだか得をしたような気分である。スキー用具には別途手荷物料金がかかるようだが、それにしても安い。そういえば運賃表は電光掲示板ではなく、運賃が書かれた板が機械的に次々めくれるという仕組みになっている。こういう装置を見たのは初めてだ。
駅前では冷たい雨が降っていた。まだスキーシーズンになっていないせいか、人影は少ないが、それでも何人かバスを待っている人がいる。意外にバスの発着本数も多く、どのバスも乗客がゼロということはない。駅の構内の人影はまばらであるが、それでも新幹線待ちと思われる人がちらほらいた。
次のバスまで時間があるので、駅前の食堂で昼食をとる。3日目最大の山場は越えた。あとは順次バスを乗り継いでゆけばよい。ふとバス停から見ると、西の空はなんとなく明るい。この先、雨が止むことを祈る。
南越後観光バス
湯沢駅前発 六日町車庫行き
12:48(12:46)発
13:18(13:17)着
¥390

湯沢駅前/六日町駅角
私を含む4人の乗客を乗せ、バスはほぼ定刻に発車した。バスが進む国道17号の交通量は少なく、併走する関越自動車道も空いている。苗場から湯沢までは道沿いに雪があったが、湯沢から先は雪はないようだ。途中、さらに4人が乗車。思ったよりも乗客が多い。サンティック短大前と六日町中央通りでひとりずつ下車。そして六日町駅角で私を含む3人が下車。
この路線に限ったことではなく、越後交通グループのエリアでは○○駅角というバス停が多い。関東地方ではバス会社に関わらず○○駅入口という名称が一般的なので、この表現の違いは方言の一種と見ることができるのかもしれない。こういう小さな発見も、今回の旅の面白いところである。
南越後観光バス
六日町駅前発 羽根川行き(新国道経由)
13:41(13:41)発
14:19(14:20)着
¥450

六日町駅角/小出営業所
相変わらず雨が降っている。バス停のベンチが濡れていて、座ることができない。立ったままバスを待つが、とても寒い。待ち時間が20分程度と中途半端なので、おとなしく待つ。
到着したバスの先客はふたり。その後、六日町営業所でひとり乗車するが、浦佐駅西口までの間に3人が下車。浦佐駅西口でひとり乗車。十日町入口を過ぎる頃、ようやく日が差してきた。浦佐駅近辺以外では国道17号をひたすら走ってきたが、小出営業所の手前で国道352号へ入り、小出市街へと向かう。
バスを降りたときは雨は止んでいたが、やがてまた雨が降り出し、しかもだんだんと雨足が強くなってきた。次のバスを待つ間、周辺をうろうろして時間を潰す。たまたま近くの公園でC11を見つけ、しばらく眺めて過ごす。案内によるとかつて国鉄只見線を走っていたらしい。タンク車とはいえ、やっぱでかいなあと感心する。
越後交通
小出車庫前発 小千谷上ノ山行き
14:56(14:55)発
15:40(15:42)着
¥440

小出営業所/本町中央
小出営業所からの乗客は、私と年配の男性のふたり。先客はなし。小出の街の中で何人か乗車し、乗客は10人近くになる。羽根川までは前のバスと区間が重複するので、もっと街の中に近いところで乗り換えれば寒い思いをしなくてすんだかもしれない。
消防署角を過ぎると国道17号へ。只見線を越える。周囲がだんたんと暗くなってきた。堀之内橋を渡ると、おそらく旧道と思われる道へと入る。堀之内駅角から再び国道17号へ。川口付近ではほとんど乗降客はなかったが、小千谷が近づくとまた乗客が増える。
小千谷の街が見えてくるとバスは国道351号へ。小千谷営業所、小千谷駅角を経て信濃川を渡り、市街中心部へと向かう。それにしても小出といい、小千谷といい、街の中心部と駅が川を挟んで反対側に位置するため、バス路線がどうなっているのか今ひとつ把握しにくい。地元の利用者にとってはそんなことはないのだろうが。
街の中心部と思われる本町中央で下車。バス停には10人くらいの客がいた。小千谷からは小出方面だけでなく、長岡、十日町、小国といった周辺の街へのバス路線が充実しており、利用客が多いのだろう。
越後交通
小千谷インター発 長岡駅前行き(新道経由)
15:46(15:45)発
16:27(16:27)着
¥390

本町中央/長岡駅前
目の前の道路を渡り、反対側のバス停へ。こちらのバス停も10人ほど並んでいる。バスはすぐにやってきた。先客も多く、座席がすべて埋まるくらいの乗車率である。ここまできてようやく運賃表が電光掲示板のものとなった。バスはまず小千谷駅へと向かう。しまった、小千谷駅角で乗り換えればよかった。運賃も安くて済んだようだ。昨日の熊谷駅に引き続き、失敗である。小千谷駅角でほとんどの乗客が降りる。ここから電車を利用するのだろう。
小千谷、そしてこの後の長岡で気がついたのは、冬季の運行に関する記述が多いことである。フリーバスの中止や運行困難時の運転中止、あるいは行先変更等、時刻表の隅々に注釈が入っている。ここが雪国であることを実感させられる。
国道17号に出る頃には乗客は4人まで減っていた。すれ違う車はライトを点灯し始めている。気温6℃との表示が見える。もう暗くなってきたのでそんなものだろうか。長岡市内で数人の高校生が乗車。会話から察するに、普段は長岡駅まで歩いているものの、雨のためバスを使うことにしたらしい。確かに、歩道を歩いている高校生もいる。
運行予定時刻どおりに長岡駅に到着。次のバスで最後であるが、乗り換えまで2時間以上ある。ちょっと早いが、駅ビルで夕飯を食べながらここまでの経緯をまとめる。そうだ、明日の帰りの予定も立てねば。時刻表をチェックするためみどりの窓口へと向かう。
越後交通
長岡駅前発 出雲崎車庫行き
18:40(18:40)発
記録なし(19:31)着
¥640

長岡駅前/出雲崎車庫
いよいよ最終区間。はやる気持ちを抑えてバスに乗り込む。乗客は高校生とおばさんが半々、あわせて20人くらい。もうあたりは真っ暗なうえ、濡れた路面が光ってどちらに向かって走っているのかわからなくなる。新保入口、新保神社前とかいうバス停を通過するが、さっぱり見当もつかない。
途中、乗ってくる客はほとんどなく、降りる一方なので徐々に乗客は減ってゆく。脇野町で半分くらいになる。出雲崎駅で私以外の乗客は全員降り、新たに3人が乗車。良寛堂前でひとり下車。バスは坂道を降り始めた。いよいよ日本海である。終点の出雲崎車庫で、私を含めて3人が下車。到着した嬉しさのあまり車内に傘を忘れてしまい、後から降りた女性に渡してもらう。ちょっと恥ずかしい。乗ってきたバスは、すぐに折り返しの長岡駅前行きとなって戻っていった。
車庫を出て、国道402号を渡ると、そこは日本海である。いろいろあったものの、ついに路線バスだけでの本州横断をやり遂げたのである。防波堤の上に立ち、海を眺める。もっとも、真っ暗でなにも見えやしないが。

出雲崎
夜の海岸で怪しげな機器を並べ、水平線に向かってあれこれしている姿は、某国の工作員と誤解されたかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。やり遂げたという充実感に包まれ、非常に満足しているのだから。
ところで、さっき行ってしまったバスは出雲崎車庫発の最終バスである。この後どうしたもんだか。
最終バスが去ってしまったので、出雲崎駅まで徒歩で戻らねばならない。今夜の宿泊先は新潟市内のホテルである。越後線に残された列車はあと2本。20:32発と22:11発。20:32を逃したら駅で2時間近く待たねばならない。これは避けたい。残された時間は約40分。ひたすら歩く。
まずは良寛堂へと抜ける歩道を登る。きつい坂道である。良寛堂からはバスで来た道をとにかく戻る。他に歩いている人など誰もいない。時々車とすれ違うが、かなり怪しいと思われているに違いない。工作員はともかく、密入国者くらいには見えてもおかしくないだろう。
時計を気にしつつ歩く。さすがに走る元気はない。道が下り坂になった。駅はもうすぐである。お、線路が見えてきた。なんだかんだで約30分で駅に到着。もう少しゆっくり歩いてもよかったかもしれないが、距離がまったく読めなかったので仕方があるまい。
出雲崎から吉田行きの列車に乗り、吉田で新潟行きへと乗り換える。宿についたのは23:00頃、部屋に入るなり大爆睡。
途中、いろいろな出来事があったけれど、無事に目的地までたどり着けたのは、乗車したバスの運転手の方々、そしてその運行を支えているバス会社の皆さんのおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。そして、三国トンネルで送ってくれた工事現場の方々にも感謝いたします。こんなアホな行為の片棒を担いでいたとは思ってもみなかったでしょうが、世の中には変わった奴がいると酒の席の話題にでもしていただければ幸いです。
願わくば、この旅が5年後、10年後にも再現できますように。あ、クマは再現しなくていいです。
この旅に備え、あらかじめ小銭を14,000円も用意したのだが、これがとんでもないことに。
その昔、ハイドライド3なるゲームで、「小銭を貯めすぎると重さで身動きが取れなくなる」(正確には持ち物ひとつひとつに重量が設定されていて、持つことのできる重量を超えると動作が遅くなったり動けなくなる)というフィーチャーがありましたが、今回を身を持って体験しました。移動ができなくなるのはともかく、小銭抱えてクマとのバトルは不可能だと思います。はい。