茨城県には多くの河川がある。千葉県との境を流れる利根川、水戸の守りを担った那珂川、豊かな自然に囲まれた久慈川をはじめ、これらの支流が県内の隅々を流れている。
天の川はそんな茨城県にある河川のひとつである。新治郡新治村東城寺に源を発し、土浦市、かすみがうら市を経て、石岡市内で恋瀬川と合流する。総延長はおよそ15kmと短いが、利根川水系に属する一級河川だ。
15km。この程度なら貧弱な私でも合流点から源流までたどれるのではないか。やり遂げたら一級河川を完全制覇したといえる。当研究所の名を上げるにはもってこいだ。
そんなわけで、しばらく乗っていなかった自転車を引っ張り出し、天の川をたどってみることにしたのだ。
2005年5月15日、午前9時過ぎ、茨城県道221号 飯岡石岡線を三村から北東へと進む。恋瀬川にかかる平和橋から土手に入り、天の川の上流方向へ。電車の音が聞こえたので振り向いてみると、スーパーひたち14号が恋瀬川の鉄橋を渡っていくところだった。遮蔽物がなにもないせいか、距離のわりにははっきりと音が聞こえる。
下の写真が恋瀬川との合流地点だ。左が天の川、右が恋瀬川である。恋瀬川の先に見えるのは龍神山だ。ここから先は土手の轍が深くなり、左右から雑草が迫る。

恋瀬川との合流地点
最初の橋だ。車1台がようやく渡れるくらいの幅しかない。大雨が降ったら水没してしまうのではと心配になるが、通行を制限するような標識はない。写真を撮っている間にもワンボックスカーが渡っていった。

最初の橋
しばらく走ると、かすみがうら市道6-0006号線(通称 国体道路)にぶつかる。ここの橋は新治橋といい、14tの重量制限がかかっている。14t以上の車が通行不可能なのか、橋にかかる全重量が14tまでなのかは不明。橋の前後の道路に比べてここだけわずかに道が狭い。そんなに橋が脆いようにも見えないのだが、そろそろ寿命なのかもしれない。
国体道路を渡ると両側から台地が迫ってくる。天の川はその中央付近を流れている。昨日の雨で水量が増しているため川らしく見えるが、水が減れば用水路にしか見えないだろう。途中から土手を進むのが困難になったため、並行する舗装道路へ降りる。遠くに見えていた千代田大橋がだんだん迫ってくる。川といっしょに千代田大橋の下をくぐると国道6号だ。

天の川橋
道なき土手を無理矢理突き進み、旧水戸街道を渡る。そこから先も土手を走るのは困難なので、すぐ下の舗装道路へ。少し走って兵隊橋を渡る。ここまでは川の南岸を進んできたが、ここからは北岸にしてみた。特に理由があるわけではなく、単に気分を変えただけだ。それにしてもこの兵隊橋、名前の由来が謎である。戦前に旧軍の工兵隊が架けたとでもいうのならわかるが、橋自体はそこそこ新しい。かといって自衛隊が架けたようにも見えない。

兵隊橋
兵隊橋からさらに上流へ。ポンプ場らしき建物があり、道路はこれを大きく迂回して遙か彼方に離れてしまう。そこで強引にポンプ場の横の藪を突破。こんどは土手自体が大きく右に曲がり出した。これでは新治村には向かわないのではと思い持参した地図を出してみたら、いつの間にか雪入川に沿って走っていた。
近くの橋で雪入川を越え、下流へ戻る。天の川と雪入川の合流点に出た。ベンチらしきものが設置してある。ここで休憩。おやつ代わりに持ってきたチョコレートを食べ、スポーツ飲料を口にする。それにしても今日は肌寒い。ここまで1時間弱走ったのだが、ぜんぜん汗をかかない。空には低い雲がどんよりと立ちこめ、いまにも雨になりそうな雰囲気だ。

雪入川との合流点
茨城県道64号 土浦笠間線に出る。ここの橋は三枚橋だ。いったいなにが3枚なのかわからないが、たぶん理由があるのだろう。たとえば昔は畳3枚でできていたとか。さらに進むと常磐自動車道が見えてくる。手前の平成境橋で南岸へ渡り、フェンスの隙間から常磐道の下へ潜り込む。暗くて怖い上にお決まりの不法投棄。常磐道の向こうはなんとか進める程度の土手が続く。でも、きちんと注意していないと川か田んぼに落ちそうだ。

かすみがうら市上稲吉
ハンドルを握りしめ先を急ぐ。天の川の源の山々がはっきりと見えてきた。
常磐自動車道を越えると土浦市へ入る。市境の標識もなにもない。川の周囲には田んぼが広がり、少し離れた高台に家々が建ち並ぶ。数百メートルおきに橋が架けられており、両岸の行き来は容易である。途中から再び川の北岸の土手に渡る。路面は軽トラックがなんとか通れる程度で、お世辞にも走りやすいとはいえない。
土浦市を流れる部分はあまり長くない。すぐに新治村へ。視界がぐっと開ける。このあたりで雲行きがますます怪しくなり、ぽつぽつ雨が降り出した。ここで中断すべきか否か悩んだが、そのまま続行することにした。雨降りでも平気、虹になるよ…たぶん。カラフルでもハッピーでもマテリアルでもないが、この先もGO!!である。濡れて困るのはPHSとデジタルカメラくらいだし、胸ポケットに詰めて空を見上げ…でなくて、おやつを入れていたコンビニ袋に入れておけば大丈夫だろう。幸いなことに雨はほんの少しぱらついただけだった。

新治村南永井
茨城県道53号 つくば千代田線に行き当たる。道路を横断してさらに土手の続きを進もうとするが、まったく道をなしておらず進めない。対岸の土手も同じである。ここから先は少し離れた道路を進むことにした。久々の舗装道路だけあってペダルが軽い。大志戸の南を経て茨城県道199号 小野土浦線へ。下大志戸橋でいったん天の川を渡り、橋のたもとから川沿いに復帰。少し無理があるが強引に突き進む。周囲に広がる田んぼに人影はまったくない。

新治村沢辺
ここまで少し太めの用水路にしか見えなかった天の川だが、東城寺集落に入ったとたんに豹変する。この突然の変わり具合には、いくら日本の川が急流ばかりとはいえ唖然とさせられる。まず東城寺橋にて。

東城寺橋
護岸工事のためここまでのような自然たっぷりといった趣が失われているのは残念だが、明らかに流れが速くなっているのがわかる。さらに、ここからほんの500mほど上流に向かうと渓流に早変わり。

新治村東城寺
さらに上流はどうなっているのだろう。確かめようと先を急ぐ。天の川の谷はさらに深くなる。あまりに勾配がきついので、自転車を降りて手で押すことにした。もしかすると源流を確かめられるかもしれないという期待を胸に坂を上る。しかし、そんな期待は一瞬にして打ち砕かれた。

立入禁止
残念ながら、これより先は私有地につき立入禁止とのこと。 ここまでの苦労はいったいなんだったのか。川そのものは私有地ではないだろうから、川に降りてその中をざぶざぶ歩いていけばよいのかもしれないが、あまりにも大人げないし、それ以前に危険すぎる。
残念ながら遡行はここにて終了。なんか納得いかない。