CASSIOPEIA l'agenda BE-500 初代車載GPS

はじめに

2003年2月1日、いまさらだがCASSIOPEIA l'agenda BE-500を購入した。その目的はふたつ。ひとつは故障してしまったPalmTop PC 110の後継機となるインターネット端末、もうひとつは車載GPSである。

インターネット端末としてのl'agendaの活用に関してはWebに様々な情報があるので、ここに記すまでもないだろう。本稿では、車載GPSを中心としたl'agendaの活用について紹介したい。

すき家 つくば学園西大通り店(茨城県つくば市)にて
すき家 つくば学園西大通り店(茨城県つくば市)にて

注記(2019年8月4日)
l'agendaはシリーズ名、BE-500が機種名なので、本記事の対象となるPDAは「BE-500」と表記すべきである。しかし、呼称としては 「l'agenda」が広く使われているため、本稿でも「l'agenda」と表記している。
改稿(2019年8月4日)
再掲にあたり全面的に改稿、改題しました。

CASSIOPEIA l'agenda BE-500

CASSIOPEIA l'agenda BE-500は、カシオ計算機が販売するPDAである。発売開始は2001年10月20日。画面サイズは3.2インチ、画面解像度は240×320、メモリはRAM、ROMともに16MBだ。OSはWindows CE 3.0で、ユーザインターフェースや付属のソフトウェアはカシオ計算機独自のものを搭載している。安価で操作が容易な初心者向けという位置づけのPDAだ。

本機はPocket PCではないため、基本的にはl'agenda専用のソフトウェアが必要とされているが、実際にはPocket PCの前身であるPalm-size PC用のアプリケーションの多くが動作する。しかし、l'agendaはのOSやメモリの構造が独特なため、それらを使いこなすにはそれなりの知識が要求される。カスタマイズを前提とするならば、むしろ上級者向けのPDAである。

ハードウェアの準備

l'agendaを車載GPSとして運用するには、l'agenda本体のほかに、GPS衛星からの信号を受信するGPSレシーバ、アクセサリーソケットからl'agendaに給電するDC-DCコンバータ、l'agendaを車内に固定するためのホルダが必要だ。

GPSレシーバはアイ・オー・データ機器 CFGPS2である。l'agendaは対応機種に含まれているが、付属の地図アプリケーション(Pocket Mapple Digital)は動作対象外だ。白色なので、グラファイトコスモのl'agendaに似合わないような気がしないでもない。

DC-DCコンバータはソニー DCC-E84だ。数年前、ポータブルMDプレイヤーを車内で使うため購入したものである。1.5V/3.0V/4.5V/6.0Vから電圧を選べる。l'agendaでは6.0Vで使うことになるが、いうまでもなく動作保証外だ。

ホルダは市販品がないため自作した。当初、市販のドリンクホルダを加工しようと思っていたのだが、適当なものが見つからなかったので、エアコン吹き出し口への取り付け部となる爪だけを市販品から借用し、本体はアルミ板とアルミチャンネルで製作した。フードは視認性向上を目的としている。車での使用を考慮し、つや消し黒で塗装した。

車載ホルダ
車載ホルダ

フード
フード

ソフトウェアの準備

l'agendaを車載GPSとして運用するにはソフトウェアも必要である。今回は、Fukuro氏作のフリーソフト Garmap CEとNMEA monitor CE、アルプス社 プロアトラス2002 全国DVDの組み合わせで環境を構築した。

Garmap CEは、GPSレシーバからの信号を受けて、現在の進行方向、速度等を表示するソフトウェアである。別途地図を準備すれば、地図上での位置表示も可能だ。今回は主にこの機能を使う。

NMEA monitor CEは、NEMA0183のセンテンスを受信して表示するソフトウェアである。GPS衛星の補足状況を把握するのに役立つ。また、Garmap CEのGPSのドライバとして利用できる。ここでもそのようにして使っている。

プロアトラス2002 全国DVDは、日本全国を網羅する電子地図である。発売日は2001年6月29日で、最新版のプロアトラスWが出ていたためか、標準価格13,800円のところを2,400円で購入できた。Windows PCにインストールし、そこからGarmap CE用に切り出した地図を利用する。

車載GPSとしての動作時には必要ないが、CFGPS2の動作確認や測地系変更には、CFGPS2に付属するCFGPS2 ユーティリティを用いている。

地図の準備

Garmap CEでは、緯度、経度範囲がわかっている画像ファイルを地図として使うことができる。今回は、前述のようにプロアトラス2002の地図データから、Garmap CE用に切り出した画像ファイルを利用した。切り出しには同じくFukuro氏作のフリーソフト Garmap PAを用いた。

切り出す範囲は、当研究所を中心に、北西が栃木県塩谷郡栗山村、北東が福島県いわき市、南西が埼玉県川越市、南東が茨城県鹿嶋市で囲まれる東西約100km、南北約140kmの領域にした。この範囲を480×640ピクセルで切り出すと、81枚のBMPファイルが生成された。

このままではファイルサイズが大きすぎてl'agenda本体のメモリに収まらない。そこで、IrfanView32で360×480ピクセルへ縮小し、16色に減色したPNGファイルに変換すると、合計で3MBまで圧縮できた。これならl'agenda本体のメモリでもなんとか運用できる。

画像ファイルのフォーマットとサイズを変更したので、これにあわせてmapinfo.datを書き換える。3行目のビットマップの形式をbmpからpngに、10行目の横幅を480から360に、11行目の高さを640から480にすればよい。これで地図データの準備は完了だ。

車載GPSとしての設定と動作確認

まず、必要なものをl'agendaにインストールする。Garmap CEとNMEA monitor CEのインストールは、添付のreadme.txtを参照すればよい。CFGPS2 ユーティリティはl'agenda用があるので、これもインストールは容易だ。切り出した地図ファイルはl'agenda内部の適当なフォルダにコピーする。ついでに、車内ですぐ起動できるようにGarmap CEをユーザーキーに設定しておくとよい。

インストールが終わったら、CFGPS2 ユーティリティでCFGPS2の測地系をWGS84に切り替える。CFGPS2 ユーティリティの出番はこれだけだが、Garmap CEとは独立してCFGPS2の動作状況が確認でき、トラブルシューティングに役立つので、そのまま残しておいた。

CFGPS2 ユーティリティを終了させ、Garmap CEを起動する。[Option]→[Preference]で「Map Datum」に「WGS84」を選択し、[Option]→[Register NMEA Monitor]でNMEA monitorのある場所を指定する。これでNMEA monitorがGPSドライバとして動作するようになる。

Garmap CEの[Option]→[Run NMEA Monitor]でNMEA monitorを起動する。[Option]→[Preference]で「Transfer Map Datum」にチェックを入れて「WGS84」を選び、COMポートに「2」を選択する。設定の反映にはNMEA Monitorの再起動が必要なので、いったんNMEA monitorを終了する。

これで準備は整った。動作確認のため屋外へと移動し、再びGarmap CEからNMEA monitorを起動する。画面右下の二重丸の中に衛星を表す数字が表示され、画面左側の数字の横をバーが伸び縮みし始める。しばらく待つと、数字のいくつかは四角囲みに、白抜きだったバーは黒くなる。緯度と経度が表示され、自位置が確定していることがわかる。NMEA monitorはきちんと動作しているようだ。

[View]→[Garmap CE]でGarmap CEに戻り、[File]→[Load Map]で地図を読み込む。[GPS]→[Current Position]を選択すると、当研究所周辺の地図に切り替わった。中央の赤いカーソルがちょうど当研究所のあたりにある。地図の表示も問題なさそうだ。

使用感

本来の目的である車載GPSとしての実力を試すべく、茨城県内のドライブへと出かけた。国道、狭隘県道、砂利道、未舗装路と、まともな道路からB級県道まで適当にピックアップして走り、GPSの受信能力と同時にホルダのでき具合も試してみた。

国道6号 石岡市→高萩市

まずは小手調べで国道6号を石岡市から高萩市まで北上。この区間には受信を妨げるような障害物はほとんどない。ここでトラブルが発生するようなら実用にはならない。少しどきどきしながらl'agendaの画面を見てみる。おお、自車の移動にあわせてカーソルが移動している。流れが速いこともあって、次々に地図が切り替わる。とりあえずきちんと動作しているようだ。しかし、東に300m、南に100mほどずれている。この現象はその後もずっと続いているが、差し障りなさそうなので放置してある。おそらく、地図を切り出すときの精度の問題なのだろう。

追記(2003年6月13日)
上記のずれは、CFGPS2とGarmap CEの測地系がWGS84で、NMEA Monitorの測地系がTokyoだったことが原因だった。測地系をあわせた結果、縮尺20万分の1の地図なら見た目でのずれはほぼなくなった。

茨城県道111号 高萩塙線 高萩市関口→高萩市下君田

高萩市内で国道6号を離れ、茨城県道111号 高萩塙線へ。ここからが本番である。この道路は2車線への拡幅工事を行っている最中で、工事が完了した2車線区間と、まだ未着工の隘路区間が入り混じっており、GPSの実力を試すにはもってこいだ。ここでは[View/Edit]→[View Data Field]を選び、速度と進行方向を表示させてみた。速度は車の速度計から1秒ほど遅れた値が表示される。また、カーブでは低めの値となるようだ。進行方向は角度表示なので、慣れないとあまり役にたたない。この機能は面白いが、ただでさえ狭い画面がより狭くなるだけなので、遊び以外で使うことはまずないだろう。下君田で引き返し、県北東部広域農道の若栗トンネルに突入する。トンネル内で衛星を見失ったらしく、カーソルが停止してしまったが、トンネルを出て1分程度で再び動き出した。ジャイロもないのに優秀である。

茨城県道289号 富谷稲田線 岩瀬町亀岡→笠間市稲田

国道50号の迂回路としてよく利用する道である。鏡が池から稲田にかけての区間は、石材業者の石切場や加工場が軒を並べており、そこから飛んできたと思われる砂利が路面を覆っている。これを利用して、砂利道でどうなるかを試してみようというわけだ。鏡が池で休憩した後、稲田方面へ向けて出発。途中、向こうからダンプがやってきて難儀したものの、問題もなく走破した。思ったよりもホルダは頑丈で、l'agendaがぐらついたり、測位が途切れたりすることはなかった。もっとも、CDが音飛びしないのだから当たり前かもしれない。

茨城県道236号 筑波公園永井線 朝日峠→土浦市永井

急勾配と未舗装区間を試すべく、笠間市街から広域農道フルーツラインで朝日峠へ向かい、茨城県道236号 筑波公園永井線へ。県立中央青年の家以西には土が剥き出しの未舗装区間があり、深い轍がつくられている。また、朝日峠に通じる道は暴走行為抑止のために段差が設けられ、かなりスピードを落とさないと車の中のものが大暴れしてしまう。風返峠ほどではないが勾配もきつい。が、ここも問題なく走破。山陰に入る区間があるので測位不可になるかもしれないと思っていたのだが、そんなことはないようだ。茨城県道236号の未舗装区間はl'agendaよりも車そのもののが心配になる場所であるが、こちらも問題はなかった。

このドライブを通して、少なくとも車が通れる道なら問題なく使用できるという感触を得た。このぶんだと、茨城県内で測位不可能になる場所は常磐自動車道 日立南太田IC - 日立北IC間のトンネル連続区間くらいであろう。この区間もいずれ機会をみて試してみるつもりである。

おわりに

思っていたよりも実用的というのが正直な感想である。メモリの都合上、20万分の1の地図しか入らないので、都市間移動時の道案内にしかならないのだが、そういうものだと割り切って使うのなら問題ない。紙の地図でいえば、マックスマップルみたいなものかもしれない。細かい市街地の情報までは網羅しきれないが、遠出するときのルート選定には役立つという感じである。それだけに、地図が茨城県しか入らないというのが残念だ。

とりあえず、当面の間は別途CFメモリカードにエリア別の地図を用意しておき、エリアが切り替わるごとにCFカードからl'agenda本体に地図をコピーするという方法で運用するしかなさそうだ。もう少し暖かくなったら、実際に長距離ドライブで運用してみて、どんな感じか確かめてみよう。

結果次第では、あっさりと中古のGENIOとか買っちゃうかも。

追記 常磐自動車道で試してみた

2003年4月19日、諸般の事情でしばらく茨城県日立市に滞在することになった。そこで日立市までの移動のついでに、前述の常磐自動車道 日立南太田IC - 日立北IC間のトンネル連続区間でl'agenda GPSを試してみた。

日立南太田ICを過ぎ、日立トンネルに入るとGarmap CEのカーソルが停止した。このまま日立北ICまで測位不可能なのかと思いきや、意外なことに諏訪トンネルを出たところでカーソルがぴょこんと移動した。測位を開始したらしい。ところが、すぐに成沢トンネルに入ってしまい、カーソルはまたもや停止してしまった。とはいえ、茨城県道61号 日立笠間線を越えるわずかな時間に測位に成功したことは間違いない。

その後、日立中央IC付近と小木津トンネルの手前でも測位に成功した。これ以外の区間ではトンネルから出ている距離はわずかであり、時間にして数秒しかないので測位は無理であろうが、成功した区間でもトンネル間の距離は1kmもない。時間にしたらせいぜい30秒である。このわずかな時間で衛星を捕捉できるCFGPS2は、かなり優秀なGPSだといえるだろう。

とにかく、いい意味で期待を裏切られる結果となった。こうなるとますますメモリが少ないという欠点だけが目立ってくる。うーん。

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